2014-12-29

591.バカ丁寧化する日本語

野口恵子・光文社新書(used)。まへに「かなり気がかりな日本語」(集英社新書)を読んでゐる。よく耳にするをかしな日本語を扱つたものだつた。「千円からお預かりします」、「こちら(注文した食べ物)になります」など。更に、あちこちで「いらっしゃいませ、こんにちは」と叫ぶ、やまびこ挨拶などについて書いてあつた。これは主に敬語を扱つたものだが、全体のトーンは同じで、説教臭くなく、読み易く面白くて、しかもためになる。敬語はむづかしい、とくに謙譲語。P204「尊敬語や謙譲語を適切に用いる自身がなかつたら、丁寧語だけにしておけばよい」、確かに。それで礼を失することにはならない筈だ、表情や態度で補へばいいのだから。をかしな敬語で書かれた看板や表示をみると、一体何が言ひたいのか、誰に敬意を払つてゐるのだらう、と首を傾げることがあるけれど、P216「敬語が難しいと思えば、普通の言い方に直してみるといい。敬語という化粧をとると真の姿が見えてきて、おかしな日本語や失礼な表現に気づくことも多い。そうしたら直せばいい。そして、必要なら、改めて敬語に挑戦すればよい」、正に仰る通りです。今年はこれが最後でせう、まだたつぷり2日あるけど、この年末年始はヘンリ・ミラーの「マルーシの巨像」をゆつくり読みたいので。

2014-12-12

590.ジーヴズの事件簿 才知縦横の巻

P・G・ウッドハウス/岩永正勝・小山太一編訳・文春文庫(used)。これは談四楼師匠の本と一緒に買つた。偶然目に付いて、ウッドハウスとか、ジーヴズつて名前をどこかで見た気がしたので解説を読むとやはり「謎解きはディナーの後で」シリーズの元になつた、或はパクつたと言はれてゐる短篇集だつた。事件簿となつてゐるが、こつちはミステリといふよりもユーモア小説だらう。厄介な事に巻き込まれる主人公バーティを助ける優秀な執事ジーヴズのお話。読んでゐて思ひ出したのは「ボートの三人男」やサキの短篇集だつた。

2014-12-05

589.もっと声に出して笑える日本語

立川談四楼・光文社知恵の森文庫(used)。続篇で、文庫書き下ろしだと前口上にある。まへの本を読んでゐるので買つてみた。始めのはうは爆笑、言葉の蒐集が主になるにつれてクスクス程度に。P263、煙草を吸ふと七秒寿命を縮めるさうで、一日に20本吸ふ人が一年寿命を縮めるには617年掛かるといふ話は面白い。

2014-11-27

ドキュメント狭山事件

佐木隆三・文春文庫(×2)。最近、狭山事件に関する展示を見る機会があつた。それで読み返した。購入が1982.10.08、直ぐに読んだと思ふので、実に32年振り。犯人ではないといふ根拠は見つからないけれども、犯人だとする理由も見つからない。ネット上で幾つか興味深いデータも公表されてゐる。脅迫状の筆跡と石川被告の筆跡を比較して似てゐると いふものもある。確かに似てゐる字もある。が、いづれにしても自白によつて発見されたといふ三大物証①カバン②万年筆③腕時計が実に胡散臭い。逮捕後間もなく証言してゐる三人の共犯説、脅迫状は石川被告が書いて実行犯は他の二人だといふ話がなんとなく信憑性があるやうにも思へるのだが。P44、死体発見当時の警察発表にある「犯人は四十〜五十歳くらいで土地の者、被害者と顔見知りの可能性が強い」といふのは、一体どんな根拠があつたのだらう。

2014-11-23

日本語「ぢ」と「じ」の謎

土屋秀宇・光文社知恵の森文庫(×2)。去年の四月に購入し読んで、期待外れだと書いておきながら再読。「ぢ」と「じ」は謎ではないでせう、さういふ風に仮名遣ひで定めたといふことでせう。言葉は変るものだ、と言ふ人がゐる。だから歴史的仮名遣ひに固執するのはをかしい、といふ意味らしいが、それは違ふ。この本にも書いてあるやうに、変つたのではなくて変へたのだ。

2014-11-21

588.ニューサイエンティスト群像

勁草書房・矢沢サイエンス・オフィス編(used)。これはニューサイエンスに関心を持ち始めた頃に館林の図書館の2階で見つけて借りて読んだもので去年(2013)の4月にamazonで古本を購入した。状態はいいのだが図書館の本みたいに透明なカバーが で包まれてゐるのが、ちよつと不思議だ。もともとかういふ装幀の本なのだらうか。いづれにしても読み始めたのは購入後間もなくで、といふことは1年以上かかつたことになる。どうも年ととともに集中力がなくなつてゐるやうで、それが加齢が原因かどうかはわからないけれども全体に体力が落ちてゐるのだらう、根気がない。一気に読めるのはミステリくらゐだ。
この本で形態形成場理論(グリセリンの結晶)や100匹目の猿の話、ガイア仮説、ダブルバインド、散逸構造。1/fのゆらぎ、ホログラフィック・パラダイムなんていふ魅力的な、ワクワクするやうな話を知つたし、なによりバックミンスター・フラーとアンドルー・ワイルを知つたのだ。

2014-11-18

587.るきさん

高野文子・筑摩書房(used)。これは文庫なら新刊があるのだが、どうしても刊行時のサイズで読みたいと思つて敢て中古を買つたのだつた。これはいい、かういふの好きだなあ。作者自身はこの作品が嫌ひなんださうだが。益々、上田としこを連想させるのだが、関連はないんだらうか。 細部が丁寧なので嬉しくなる。お、こんなところまで、といふ発見が楽しい。一通り読んでから、またパラパラと拾い読みをしてゐるうちに、結局最初から最後まで読んでしまつたのだつた。

2014-11-15

586.絶対安全剃刀

高野文子・白泉社。去年の2月末に購入し、漸く読みをへた。買つて直ぐに読み始めたワケではないが、少なくとも半年くらゐは読みかけたまま、ほかの読みかけと一緒に積んでゐたと思ふ。まへに読んだ「棒がいっぽん」と比べると、文芸的といふか、詩的といふか、「ガロ」風の、例へば永島慎二、真崎守とかを連想させるところが、ちよつと引いてしまつた。絵は巧いよねえ。表題作よりも「玄関」がいい。余計な ことで、「いこいの宿」のP147、オジがドアを開ける、引いて開けるのだが、下の次のコマでは押して開けてゐるやうに見える。些細な事で自分でも厭になるが、気になる。

2014-11-09

585.虚ろな十字架

東野圭吾・光文社。知人から借りたもの。代りに中町信の「模倣の殺意」、黒川博行「カウント・プラン」を貸した。ミステリが好きだが、中町信は知らないさうで、東野圭吾のファンだといふので「カウント・プラン」の解説は東野圭吾だつたから。
で、これは殺人者に対する死刑といふ刑罰に就いて書かれた、或は作られた物語である。最初の幼児殺人とその後の謎として扱はれる事件は無関係ではないことが読み進むうちに判るし、プロローグがその辺りを示してゐることも納得できるが、作者に言ひたいことが先づあつて、それがプロローグに続く物語であり、前段に語られる幼児殺人の悲劇は そのために作られた事件に思へてしまふ。これが辛い。といふのは、たかがミステリで、作られた事件だつたとしても、読むはうは感情移入してしまふのだ。作者の意図に気づくと弄ばれた気分になる。

2014-10-30

584.偽りの群像

中町信・光文社文庫。ずつと読んでみたいと思つてゐた中町信の「急行しろやま」と「偽りの群像」を読むことができた。どつちも鮎川哲也のアンソロジーには収録されてゐるさうだが、氏名義の作品集の形では出版されてゐなかつたものだ。「急行しろやま」は第4回双葉推理賞を受賞した作品。これは期待通り、面白かつた。「偽りの群像」は処女作である。これも良かつた。ただ題名がピンと来ない。この本にはもう一つ「愛と死の映像」といふ双葉推理賞受賞後第一作も収録されてゐる。これは懸け離れた場所と事件が実は一つの犯罪である、といふ意外な展開なのだが、ちよつと強引な感じがした。
蛇足ながら、「愛と死の映像」のP218に「坂口刑事は半分ほど食い散らした天丼の汁を、音をたててすすっていた」といふ記述がある。天丼の汁だよなあ、音をたててすするほど汁があるんだらうか、と思つた。天丼だよなあ。麺類ぢやない、ご飯もの、カツ丼や親子丼と同じ類ひの丼物だよなあ。割烹料理屋の丼はさうなのか、金沢の丼はさうなのか。と、P215には「刑事たちは一番安いどんぶり物を注文した」つて書いてある。天丼つて、丼物で一番安い部類ぢやないと思ふんだけど。玉子丼とか、親子丼とか、カツ丼のはうが天丼よりも安い店のはうが多くないか?ま、たいしたことぢやないんだけど、かういふ詰まらないことが気になるんだなあ、どうでもいいやうなことが。

2014-10-22

583.おたのしみ弁当

吉田健一・講談社文芸文庫。買つたのが今年の3月で、イオン太田の喜久屋書店でだつた。恐らく直ぐに読み始めてゐるはずだから、半年以上掛かつてしまつたワケだ。まあ、その間、他の本も読んでゐるから掛かりきりではなかつたけれども。著作集などに未収録のエッセイを集めたものだが、ほかにもう一冊、やはり講談社文芸文庫に「ロンドンの味」といふのがあり、解説を読むと他にも見つかつて「英国の青年」といふ題で出るらしい。余計なことだが、吉田健一は全集のやうな書簡や未完成の下書きのやうなものまで集める形式を好まなかつたのではなかつたか。だから氏の意を汲んで著作集や集成といふ、本として出版したものだけを選んでゐるのだらう。集英社の著作集には補巻として死後に出版されたものや単行本に未収録のものを幾つか収めてはゐるけれども、かういふ未収録のものを集めて出すといふのはどうなんだらう、読むはうは興味があるから読みたいけど。序でに言ふと、まへにも書いたけど講談社文芸文庫つて、なんでこんなに高いんだらう。これ1,400円(税別)だよ。単行本並みだよなあ。

2014-10-07

582.暗闇の殺意

中町信・光文社文庫。全部で7篇収められてゐる。そのうち3篇は「Sの悲劇」といふ新書版の短篇集にもあつて読んだことがあるのだが、一通り最初から最後まで読んだ。久し振りの中町信で楽しめた。最後の「動く密室」や「自動車教習所殺人事件」(いまは創元推理文庫で「追憶の殺意」として復刊)みたいに自動車教習所を舞台にしたミステリつて他にあるんだらうか。今度調べてみたい。

2014-09-10

581.20世紀のじみへん

中崎たつや・小学館文庫(used)。たぶん、じみへんは大判サイズの本で読んだ気がする。それと重複してるかどうかは判らない。たた文庫なので絵が小さくて、このまへに読んだ百人物語はコマが大きかつたので、大丈夫だつたが。兎に角、笑へる。いまも寝るまへに拾ひ読みしてゐる。

2014-09-01

579.580.百人物語 上下

業田良家・竹書房文庫(used)。朝倉のBook Offが再開してゐたので覗いたら見つけた。状態も良くて勿論108円ではなかつた。ロボット小雪や独裁君に近い。寓話的と言ふのか、哲学的といふのか。

2014-08-21

578.淀川長治映画ベスト10+α

淀川長治・河出文庫。ほぼ2箇月掛かつた、凡そ250頁の本なのに。結論から言へば、映画は見るもの、見て楽しむもので、評論なんか読んでもしやうがねえや、だらうか。独特の言ひまはしに躓いて、何度も本を閉ぢてしまつた。映画を知つてゐる監督だ、とか、完璧な映画だ、とか、その根拠が、そのワケが示されてゐないので、ご高説を賜る式に読むしかなかつたことも時間が掛かつた理由だらう。巻末に蓮實重彦との対談があつて、これも楽屋話のやうで、知らない人間には面白くないところもあつたが、淀川さんはホントに映画が好きな人だつたんだなあ。

2014-08-07

577.事件の年輪

佐野洋・文春文庫。10篇の短篇が収められてゐる。やはり佐野洋は外れがないので安心して読める。凝つたアリバイ・トリックもないし、連続殺人もないけれども、ミステリの面白さは充分に味はふことができる。去年の4月に亡くなつてしまつた。残念。

2014-07-19

576.密室の鍵貸します

東川篤哉・光文社文庫。この人の本は最近、中途半端な密室といふ短篇集を読んでゐる。そのまへに、謎解きはディナーの後で、も2冊読んでゐる。ユーモア本格ミステリと呼ばれるさうだ。動機はいま一つだけど、よく作られてゐると思ふ。まへのはうを読み返しながらトリックをお浚ひしたけれども、旨く騙された。

2014-07-17

575.桃太郎

芥川龍之介・Kindle。芥川は岩波の全集を持つてゐた。殆ど読まないまま、金に困つて売つてしまつた。だから、こんな短篇があつたなんてことは知らない。桂三枝、現六代目桂文枝がテレビで桃太郎を演つてゐるのを聞いたことがある。父親が息子に話して聞かせる昔話桃太郎。昔とはいつのことだ、から始まり細かいところをいちいち息子が問ひ質して困らせ、遂には立場が逆転して、桃太郎といふのは実はかういふ話なんだと説いて聞かせると、いつのまにか父親は眠つてゐて、父親なんて罪がないといふオチ。これは桃太郎が実は温厚で平和に暮らす鬼が島へ殴り込み、殺戮、陵辱の果てに宝物を持ち帰るといふ話。小松左京の蜘蛛の糸みたいなものかな。

574.イワンの馬鹿

トルストイ/菊池寛訳・Kindle。坊つちやんを購入したとき、他に2つ(単位は冊ではをかしいだらうし、1つ2つも変だが)購入した。これと芥川龍之介の桃太郎。どつちも一冊分はない。これを累計に入れるのはちと抵抗があるけれども、まあ上下巻もので1冊分で計算してるし、コミックなんかは20冊あつても一作品といて数へてゐるから、Kindleについてはかういふ計算で「よし」としよう。本の場合は今後も一冊の本に含まれる数篇のうちの一篇読んでも読んだことにはしない。
これはiPadを購入して直ぐ、「よみづくえ」といふAppをダウンロードした中に入つてゐたので確か途中までは読んだと思ふ。余計な話だがこの「よみづくえ」は300円だつた。でも殆ど使はなかつたなあ、画面や操作に慣れなくて。
どつちにしても、題名だけ知つてゐて中身を知らない童話、といふより寓話ですかねえ、その一つ。なるほどかういふ話だつたのか。三匹の子豚みたいなものか。以外に長い。

573.坊つちやん

夏目漱石・kindle。ずうつとまへ、高校の頃に読んでゐるので再読扱ひにしようかと思つたが、折角kindleで読んだのだから数に入れる。因みにこれは新潮文庫で持つてゐる。いつ買つたものか書いてないし、いつ読んだのかも書き込んでないが、昭和四十六年九月十日の六十一刷だから、まあ高校時代で間違ひないだらう。しかし、これは同じものだらうか。なんだか短い気がするんだよなあ。話の内容は同じなんぢやないか、と思ふんだけど。一字一句比較するのは面倒だ。文庫の最初と最後の頁とkindleを比べてみたら同じ。文庫のはうは43字×18行で127頁、だから400字詰原稿用紙にすれば≒250枚。kondleは全部でNo.が2503といふ風に表示される。そのうちNo.3からNo.2477までが本文だから中身は差引2474、iPadの横表示だと28字×21行が基本なので、×2474は400字詰で3636.78枚、……をかしい、No.はページ数ではないんだ。なんだこれ?最初から調べるか。例の「親譲りの無鉄砲で」で始まる冒頭の頁を縦で表示し、画面を一度タッチすると下に、No.10/2503・1%と出る。先づこの意味は?行数?でもこの頁は最初の「一」を除いて13行ある。次の頁に移り同じくタッチするとNo.26/2503・2%。この頁は16行。足すと29行だから26つて何?更に次頁No.48/2503・2%。愈々わからん。No.数字が増えてゐるのに%が同じ。
面倒臭いからもうやめるが、これはもともと青空文庫で、無料で購入できる。

2014-07-07

572.硝子のハンマー

貴志祐介・角川文庫。一箇月半振りに漸く一冊読み終へた。あれから、山中恒のあとで吉田健一の単行本未収録のエッセイ集と淀川さんの映画の本がそれぞれ半分くらゐ読んで滞つてしまつた。この硝子のハンマーは淀川さんの本と一緒にWonderGooで買つたものだ。ミステリは犯罪小説でもルポルタージュでもないから、有り得ないやうなトリックで殺人が行はれることがある。このトリックは密室。確かによく考へられたトリックだと思ふ。もともと読みながらトリックを破つてみせるぞ、なんて読み方はしないので、ただ普通の小説と同じやうに読んで行くワケだが、ちよつと違和感があつた。特に後半。後半は犯人サイドからの倒叙形式になるんだけど、この犯人が前半の探偵役の男と間違ふほどよく似た書き方になつてゐること、それと動機を作り過ぎてる感じがした。これでもか、と痛めつける。P509で高校の後輩の女の子が警察か弁護士に相談すればよい、と言ふけれども、正にその通りではないか。逃げるしかない、と思はせる書き方をしてゐるが、先づ警察ではなかつたか。父親の借金を子どもが払ふ義務があるのかどうか、法的なことは知らない。少なくとも生活費以外の借金、つまり遊興費であれば妻であつても支払ふ義務はない、と聞いたことがある。株取引による借金が遊興費と言へるかどうか解らないが、生活費ではないだらう。尤も、警察に相談したら展開はまつたく変つてしまふだらう。それと何度も下調べのためにビルに侵入してるけれども、目的のものが見つかつた時点で盗んでしまへばいいのに。だつて、誰にも不審に思はれずに出入りできたんだから。さうすれば殺人なんかしなくて済むでせう。この密室トリックは殺人のためのトリックなんで、なんか釈然としないものが残る。面白かつたんだよ、一気に読んだくらゐだから。でもねえ、ちよつとそこが引つ掛かる。

2014-05-23

ぼくがぼくであること

山中恒・角川文庫(×2)。誰かに貸してそのままか紛失したかで再購入してからの再読。いつも心臓がどきどきしてるし、頬つぺた真つ赤で恥ずかしい、といふ主題歌もよかつたし、ドラマそのものも良くて、だからどうしてNHKで再放送しないのか、できないのか、できないのはフィルムが無いのか。テレビドラマデータベースといふサイトで調べたら、これは1973年の9月17日から26日まで、ゆふがたの6時5分から6時30分まで放映されてゐたのだ。またしても70年代だよ。ドラマのはうを実は先に見てゐる。主題歌は佐藤博といふ人の曲で「南風」。はつぴいえんどの曲みたいで、いいんだ、これが。「なんぷう」と読むのか「みなみかぜ」と読むのか、はたはた「はえ」か。どつちにしても、このドラマが好きで、本は後から読んだのだ。原作では「まるじんの正直=マサナオ」だが、どうも「しんでんのマサジ」といふ風にインプットされてゐるらしい。その辺を確かめたいので再放送かレンタルであればいいのに、と思ふ。山中恒はほかに「おれがあいつであいつがおれで」も面白かつた。大林監督の「転校生」、この尾美君はいいよ、鬼平の尾美君もいいけど、と小林聡美もいい。

2014-05-15

てとろどときしん

黒川博行・講談社文庫(×2)。読み始めたら止められない。黒川氏の正義感といふか、それが近しい気がして心地よい。全6話中4話に登場する黒マメコンビを是非もう一度書いてほしい。

2014-05-05

570.571.冬のフロスト 上下

R・D・ウィングフィールド/芹澤恵訳・創元推理文庫。相変はらずの仕事中毒ぶりで事件を解決してしまふ、このフロスト警部のシリーズも残念ながら後は未訳のA Killing Frostだけになつてしまつた。凡そ500頁で上下2冊だといふのに、長さを感じない。特に下巻のおとり捜査の顚末なんか途中で止められないよ。一番最後のところでフロストが漸く名誉回復し、メデタシメデタシ。フロストは中毒になるね。

2014-04-16

569.中途半端な密室

東川篤哉・光文社文庫(used)。まへの「Y列車の悲劇」から、ほぼ2箇月間、新たに1冊の本を読み上げることが出来なかつただけでなく、1冊の本を読み返すことすら出来なかつた。短篇を一つ二つ読み返しはした。また吉田健一の単行本未収録集の文庫「おたのしみ弁当」講談社文芸文庫を半分くらゐ読んではゐるが、読み終へた本は、ない。
ところで、講談社文芸文庫は矢鱈に価格が高いのだが、なぜだらう。たとへば「おたのしみ弁当」は270頁の本で税別1,400円もする。因みに創元推理文庫のR・D・ウィングフィールド「冬のフロスト」上巻は500頁あつて税別1,300円。新潮文庫のヘミングウェイ「移動祝祭日」は300頁で税別590円。直接、この東川篤哉の本とは関係ないのだが、まへから気になつてゐたので書いてみた。以前にも書いたかも知れないが。
で、この短篇集は去年だか一昨年だつたかずゐぶん評判になつた「謎解きはディナーのあとで」の作者のデビュー作を含めた作品集で、最初のものであるらしい。といふのも、長篇デビュー作が「密室の鍵貸します」で、どつちもデビュー作といふ言ひかたをしてゐるので判り難い。
いづれにしても、収録された5篇凡てが安楽椅子探偵もので、気楽に読めて、意外性もあつて、面白く読めた。

2014-02-12

568.Y列車の悲劇

阿井渉介・講談社文庫(used)。これまで聞いたことがない作者。走行中の列車から乗客がゐなくなるといふ事件。しかもその乗客たちがゐた寝台車で殺人事件が起こるといふのだから、期待するでせう。期待は裏切られない。この人には不可能犯罪といふシリーズがあるらしく、これもその一つ。余計なことかもしれないが、人物の容姿に関する記述が殆どないので、どんな人物なのか見えにくい。P67で鶴見刑事が平田といふ人物を調べてゐて、その平田が仙台にゐるといふ報告を上司である牛深(ウシブカと読むんだらうね、ルビないけど)にする。その後で「帰京の予定はいつだ」と牛深。「明日です」「一度こっちに戻ったほうがよくないか」「そうします」と続く会話になる。誰が戻るのか一瞬わからなかつた。P164「娘分の道子とも」といきなり登場する道子つて誰?ま、そんなことは些細なことだ。なかなか面白く読んだ。他の作品にも手を延ばすかどうかは微妙だね。

2014-02-09

567.バスが来ない

清水義範・徳間文庫(used)。読んだことがあるやうな気がしてたけど、覚えてないから読んでないのだらう。カバーの後ろには抱腹絶倒と書いてあるけど、クスクス笑ひだつた。表題の「バスが来ない」「マイルド・ライト・スペシャル」「戦慄の寒冷地獄」が面白かつた。筒井康隆に似てるかもしれない。

2014-02-01

566.裁きの街

キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫(used)。ウェルズ・シリーズ、愈々最後の作品。原題はRough Justice。もつと続きが読みたいなあ、解説にあるやうにランシングを主人公にしたらど面白さうだ。ウェルズは今度は殺人者として警察に追はれる身に。しかも宿敵といふか、もつとも嫌ふワッツに追ひ詰められる。守らうとする新しい女編集長と我らがランシング。最後に姿をみせるゴットリーブもなかなかいい味を出してゐる。遂にランシングとウェルズは、……読んでない人のために書かないでおかう。本格ミステリのネタばらしなんかよりも、してはいけない大事なことだ。

2014-01-26

565.夏の稲妻

キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫(used)。ウェルズ・シリーズの3作目。このシリーズはいまのところ全部で4作しか書かれてないが、すべての題名が原題とは違ふのだ。これはThe Rainといふ。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞と表紙に書いてある。上院選立候補者の醜聞にかかはる殺人に巻き込まれる。ランシングに結婚話が持ち上がつて、一体どうなるのか本筋とは別のところで気を揉んだ。前作で隙間ができてしまつたチャンドラーとは本当に終つてしまつたのか。ブラック・ダリアみたいなところがあるね。女優に憧れ、犯罪に巻き込まれる若い娘。対するウェルズの姿勢がいい。P189「ど真ん中」、どうしたんですか、芹澤さん。

2014-01-19

564.切り裂き魔の森

マーガレット・トレーシー/中野圭二訳・角川文庫(used)。ヤケはあるが状態はかなり良い。原題はMrs. Whiteで、全然違ふ。中身はさうだけど、これぢやあ、なんだかサスペンス映画のタイトルみたいだろ。犯人は最初に解る。要するに、さうとは知らない犯人の家族の物語で、原題通り奥さんのミセス・ホワイトが語る。家主のジョナサンがいいね。キース・ピータースンの別名義で、これ一作のもの。

2014-01-12

563.幻の終わり

キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫(used)。ジョン・ウェルズのシリーズ第2作。原題There Fell a Shadow。年末から読み始めたのだが、1/3くらゐ読んだところで何となく進めなくなり年を越してしまつた。前作に比べて、ウェルズの娘のことやチャンドラー・バークについて説明が足りないかもしれない、と余計な心配をした。今回はだいぶ痛い目にあふのだが、やはりハードボイルドはタフだね。アクションが派手なので、映画にしたら面白いだらうと思つた。