2006-02-28

6.浅草殺人案内

中町信・徳間文庫(used)
続いてるなあ、中町信。ちよつと中毒かなあ。絶版だらけで重版予定なしだから、あちこち探すし、見付けると買つて直ぐに読む、この繰り返し。無意識にコレクションしてるのかも知れない。つまり最近めつきりレンタル・ビデオを見なくなつたし、新人のCD探しも下火になつてる個人的な状況を考へると、いまは中町信に凝つてゐる、といふことか。沼田出身の人なんだ、つて書いたことあるかなあ。それもあるかもなあ。……で、これは「模倣の殺意」の解説にある作品一覧で見た時に、読んでみたいと思つたものの一つなんだけど、浅草の寿司屋が探偵役で、本の終ひのはうに、モデルとされる人は氏の友人の寿司屋です、といふ意味のお礼の書き込みがある、……のだが、この主人公・山内鬼一さん、寿司屋なのに一度もネタの仕入れに行かないのはなぜ?浅草の寿司屋はさうなの?どこからネタを仕入れるのだらう。注文すると配達してくれるのでせうか。ネタも見ないで?それと、途中「花や」で山内が飲む時、P111「今夜は水割りにしようか。……」と言つてるのに、P114「新しいビールを山内のグラスに注いだ」なんてことが書いてあるのは、……まあ、単純なミスとして無視するか。
これは徳間文庫の書き下ろしださうです。

2006-02-24

5.下北の殺人者

中町信・講談社文庫(used)
これは氏がサラリーマンを辞め、二足の草蛙を脱いだ年に書かれたものだと解説にある。この解説は鮎川哲也の「西南西に進路を取れ」の解説も書いてゐる山前譲といふ人で他でも何度か見たことがある気がするけれども、ミステリーの評論をやつてるだけなのか自分でも書くのか、その辺はよく解らないが、なんとこれで氏の作品を10冊も読んでしまつた。更にこないだ仕入れて来て、都合15冊になるだらう。氏の作品の魅力は読み易いこと。それと仕掛けの面白さ。全体に仕掛けがあるのは「模倣の殺意」とか「天啓の殺意」で、これは読み終へて唸つてしまつたが、登場人物の会話や推理に引き回されてゐるうちに容疑者が殺されて行くといふ仕掛けのパターンが、実は癖になる。この「下北の殺人者」はそれだけでなく、叙述の仕方にも仕掛けがあるが、それはもう予想が付いた。ただ犯人が外れてしまつた。なぜその人物が犯人か、といふ裏付けはきつちり解つてなくても、大抵のミステリーは予測出来ることが多い。が、この登場人物の会話や推理に振り回されて解らなくなつてしまふのだ、氏の作品は。例へば、或る人物が犯人ではないか、と主人公が推理する。すると、いや別の誰かではないか、といふ人物が現れて尤もらしい予測が語られ、そつちが容疑者らしいまま進展して行く、といふのがある。読んでるこつちには、別の誰かだといふ根拠が弱いと感じてゐることが多い。だから、人物の視線で話が進むから、ドンデン返しの連続みたいだけど、そもそもの推理が甘いだけで、余計な死者が出る、といふ印象にもなる。
でも、なぜか氏の作品を探してしまふんだよなあ。絶版が多いからかなあ。

2006-02-16

4.錯誤のブレーキ

中町信・講談社NOVELS(used)
BookOffで立ち読みしてたら目に入つた。ホントに探してたわけではありません。勿論、直ぐ後に西村京太郎氏のコーナーが、だあーッと続いてるから、氏の名前を知らない人は気付かないだらう。しかし、確実に読んでゐる人がゐるのだ。しかも著作は殆ど絶版の筈だから、ミステリィ、それも本格もののファンがオレの生活圏の中にゐる、つてことなんだなあ。会つて話がしてみたいくらゐだ。
ところで、これは氏の最も新しい作品(2000年)である。大筋で展開が読めた。狙ひどころとか。なかなか面白かつたが、解決の部分になつて、意外な犯人にこだはり過ぎではないか、といふ気がして来た。幾つかの作品で矢鱈に容疑者が殺される印象があるが、それは読み手の裏をかく、どんでん返しを見せないといけないんだ、といふ使命感のやうなものがあるからぢやないか。連続殺人でなくてもいいんだし、ミステリーだから殺人だ、でなくてもいいし、謎があつて、それが解明されるまでのサスペンス、どうなるんだ、どうしてかうなつたんだ、があれば充分なのだ。それが最後に「なるほど、それはあり得るなあ」と思はせてくれれば満足なのだ。
「フランドルへの道」はどうなるんだ!第二部の頭がもうチンプンカンプンだぜ!

2006-02-08

3.本陣殺人事件

横溝正史・角川文庫(used)
横溝氏の本も幾つか読んでる。「八つ墓村」「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」「悪魔が来りて笛を吹く」、それと「恐ろしき四月馬鹿」つていふデビュー作の入つた短篇集とか。角川映画で取り上げられてた頃かなあ。ただ、あんまり好きぢやなかつたのは、道具立てといふか、おどろおどろしい作りが鬱陶しかつた。別に論理的なのがいいとか、都会的な、現代風なのが好き、とかいふ意味ではなくて道具立てに凝り過ぎた感じがするのがイヤなのだ。凝るのはいいけど、それが見えてしまつたら野暮だ。この「本陣殺人事件」は都筑道夫の「黄色い部屋はいかに改装されたか?」つていふ本で取り上げられてたから、いつか読んでみよう、と頭の隅にあつたのだ。これまで読んだ氏の作品の印象と違つてたのは、他の作品の内容を殆ど忘れてゐるせゐか。でも、いつのまにかゐなくなつた金田一さんが、読んでるこつちには一切知らされないところで何か調べて来て「実は」つてやる、それはなかつた。勿論、奇怪な雰囲気はあるんだけど、ずうつと論理的な印象。これには他に二篇入つてゐて、それもなかなか面白く読んだけれども、「本陣」が一番面白かつた。いまだにメインのトリック、どうやつて殺したかはよく飲み込めないけど。次はいづれ「獄門島」を読まうと思つてる。

2006-02-02

2.剣客商売

池波正太郎・新潮文庫(used)
これで氏の三つのシリーズ凡て第1冊目を読んだことになる。「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」「鬼平犯科帳」。好みは「鬼平」かなあ。死ぬまでには全シリーズ読破出来るでせう。