2006-11-27

57.ある閉ざされた雪の山荘で

東野圭吾・講談社文庫(used)
なんとも気が塞いでゐたり、何か読みたいけど気持ちが続かない、といふ時にミステリーは大いに助かる。ちよつと前まで中町信氏の恩恵に預かつてゐたが、最近は東野圭吾氏だ。先づ文章が読み易いから、どんどん作品の中に入つて行ける。これも一日で読み終へてしまつた。限定された場所に集まつた人たちが次々に殺されて行くといふ、オーソドックスな、古典的な設定。引き合ひに出されるクリスティの「そして誰もいなくなつた」は読んでないし、映画にもなつたやうたが生憎見てゐない。犯人は半分くらゐ読んで指摘出来たけれども、動機や殺人の手口については解らず、最後に二転三転。込み入つた作りになつてゐる。大枠で叙述のトリックがある。それで「独白」があるわけだ。

2006-11-13

56.STILL A PUNK

ジョン・ライドン/竹林正子訳・ロッキング・オン
ずうつと首を長くして待つてゐた。(←いきなりこんなこと言つても解らないよね。実は2箇月くらゐ前に頼んだら再版中とかで期間が掛かつてしまつたのだが、Amazonには「在庫あり」だつたから、そつちに頼んだはうが早かつたかなあ、と後悔したけど、それが)漸く9日に届いて、以来暇があれば読み続けた。先づイギリスの労働者階級の家庭がどんなものか、正直知らなかつた。オレが子どもの頃より貧しいよ、たぶん。これでは階級制度への反発があるのは当然。その根の深さと言ふか、激しさは、日本のパンク、いやアメリカのバンドでも敵はない。マルコムとの確執とかアメリカ・ツアーの内情とか、そもそもセックス・ピストルズが出来上がつて行く過程とか、当時の音楽情報紙、レコードのライナー・ノーツ、或は新聞報道(そんなもんあつたか?)から得た噂や情報とは随分違ふなあ。ジョニー・ロットンのロットンなんて辞書で調べもしなかつたけど、「腐つた、腐敗した」つていふ意味なんだね、知らなかつた。それと奥さんつて15才も年上だつたんだ。なんか、さすがにジョン・ライドンだな。

2006-11-04

55.インディヴィジュアル・プロジェクション

阿部和重・新潮社(used)
カバーが気に入つてたので単行本でほしかつた、中身は二の次で。阿部和重氏は「アメリカの夜」を読んだことがあり、なかなか面白かつたし、これもハードバイルド風な書き方で読み易い。individual projection ねえ、どういふ意味だい?個々の、個人の投影?日本語になんねえな。意味はどうでも、途中からミステリーのつもりになつてしまつたから、日記体の使用は巧みだと思つたし、それで主人公は一体誰だ?的状況から大ドンデン返しが待つてるかと思ひきや、……ラストは、……最後は文学するんだね。中身より断然カバーがいいね。

2006-11-01

54.不連続殺人事件

坂口安吾・双葉文庫(used)
日本推理作家協会賞受賞作全集の中の1冊で、前に角川文庫だかで出てゐたのを持つてたけど、読まないうちに処分したか売つたかしたのだ。たぶん映画になつたと思ふ。カバーが映画のシーンだつたやうな、……記憶違ひかな。坂口安吾氏は「外套と青空」つていふのを読んだ覚えがあるが中身は覚えてない。どつちかと言ふと苦手だ。ただ推理小説は好きなんで偶然見付けて状態がよく安かつたので買つたのだが、これが存外にお荷物になつた。7月に買つたけど、いざ読み始めると鬱陶しくて頓挫してた。登場人物が多いのと、それがぜんぶ曲者だらけで、オマケに文章が読み難い。ああ、戦後つぽいなあ、と言つても具体的にどこがどうとは言へない。推理小説の面白さは感じなかつた。先づ疲れちまふんだよね、文章が頭に入らなくて。雑誌に連載して懸賞出したと出てるけど、トリックもアリバイ云々もどうでもいい感じ。ちよつとした試練でした。オレにはわからん、面白さが。