2015-12-28

636.前立腺ガン 最善医療のすすめ

藤野邦夫・実業之日本社。全325頁中、該当する箇所、我が身に照らして参考になる部分はおしまひのほんの40頁足らず、これで税別1,500円は高いか安いか。少なくともこの先で待つてゐることを知ることはできたのだから、良しとしよう。根治治療が可能なケースを読み続けるのは半ば苦痛でもあつたから、Amazonから届いて読み始めたのは今月の7日で読みをへるのに20日も要したのは仕事が立て込んでゐただけではない。更にもう一冊、具体的な治療法を医師の立場から書いた本も購入したが、こちらも全190頁中、該当する箇所は20頁に充たない。拾ひ読みして心臓が痛くなるやうな記述を見て気が重くなり読み始める気になれない。ちよつと気晴らしをして、ちやんと向き合へるまで待たう。
因みに筆者は医師ではない。

2015-12-23

635.もひとつ・ま・く・ら

柳家小三治・講談社文庫。いやあ、また笑つてしまつた。アハハ〜クスクスまで。仕事でイヤなことがあつても、寝るときに枕元で読んでクスクスやつてるうちにそんなことは忘れて眠れるくらゐ面白い本でした。Amazonのレビューにもあつたけど、「笑子の墓」これはいい話ですね。挙げたら、これもこれもとなつてしまふけど、おしまひのはうの「バソコンはバカだ!!」にかういふところがありました。
パソコンはどうバカなのか。
「パソコンはね、言われたことしかわからない。」「われわれ人間はね、一を知って十を知る。」「パソコンは一を知ったら一しか知らない。言われたことしかわからない。」「あたしよりすぐれているとこはたった一つ。一度覚えたら忘れないってこと。」「つまりパソコンは知恵はないの。」「いくら物覚えがよくても知恵のない人はバカってんですよ。」
その通りですね。ここまで打ち込むあひだにどれだけ変換に梃子摺つたか。どうしてさういふ変換するかなあ、つて。候補の最初にこれが出るかい?の連続。でもまあ、これで打たないと記事が書けないんだから仕方がない。
因みに解説は小沢昭一でした。
※ 蛇足ながら、小三治師匠の喋りのおしまひのところに、よく対談なんかにある(笑)と書いてあるけど、(爆笑・拍手)といふのもあるので、どうもこれは客席の笑ひのやうです、紛らはしいんですが。

2015-11-29

634.ま・く・ら

柳家小三治・講談社文庫。腹が痛くなる程笑つた。小三治師匠が見たい、聞きたい。たまたまAmazonのレビューを見たら、殆ど★五つか四つなんだけど、1人だけ★二つといふ評価の人がゐて、文字にすると面白くない、といふんだけど、いやあ、ちやんと伝はりますよ。それは実際に見たはうが更に面白いだらうとは思ふけどね。続篇のはうがもつと面白い、つていふ人もゐて、それなら是非とも続篇を読みたいものだと思つたくらゐです。

633.医学常識はウソだらけ

三石巌(祥伝社黄金文庫)。分子生物学が明かす「生命の法則」といふサブ・タイトルがあります。岡本裕といふ医師の本に続けて、また現代の医療に批判的な立場の人が書いたものを読んだのだが、この本はなにが言ひたいのかよくわからなかつた。立場がよくわからない。まあ、一般向けに、オレみたいな人間にも理解し易くするために砕いて書いたものなんでせうが、そのせゐかなあ。もともと物理学者で「還暦を機に医学に造詣を深め、分子生物学に基づいた分子栄養学を創設」(カバー裏袖の人物紹介による)した人で、95歳で亡くなつてゐる。
こつちが似たやうな見方、考へ方をネットや別の本で頭に入れてゐたせゐもあるだらう、高血圧は塩分の摂り過ぎが原因ぢやない、とか、卵はコレステロールの元なんてウソだ、とか。タイトル通り、あれもウソこれもウソ、あれもダメこれもダメの連発で、痛快と言へば痛快なんだけど、細かいところをほじくると、人間の意志とか、向上心といふか、努力なんてものは無駄で余計なことだと、ジョギングやゴルフやダンベル体操なんて活性酸素を大量に発生させるだけだし、ジョギングなんてそれで死んだ人が何人もゐる、と言ひたい放題。でも自分でやつてるスキーはいいんだとさ。なんだそれ、でせう。
それで、肝心な、かうすればいい、といふ点が曖昧。「薬と違つて副作用の心配がない」「活性酸素を除去する物質を」「スカベンジャーと呼」ぶさうなのだが、これがビタミン類を始めとして数千種類あると言ふクセに具体的にこの数千のスカベンジャーの一覧なり、説明は書いてないんだよね。P67に「スカベンジャーとなる食品」といふ表はある。ほかにも「主なビタミンのはたらきと性質」といふ表もある。でもこんな表はどうでもいいので、三石理論(さういふ画期的な理論があるらしい)の根幹となるビタミンとタンパク質とスカベンジャーといふ三種の神器の「スカベンジャー」がまつたくわからない、謎のまま終る。その辺、読み落としてるかもしれないから、もう一度読みますけどね。P280、一番最後で「本書で紹介されている栄養補完食品についてのお問い合わせは、左記に」とあつて、会社名とホームページのアドレスが書いてある。早速、スカベンジャーとはなにかを知るべくHPを覗いてみると、三石理論に基づいた「ヒト・フード」と称する健康食品の販売会社でした。アンドルー・ワイルもさうだし、寺山心一翁もさうだし、セルフケアの野本篤志もさう、岡本裕(e-クリニックといふサイトがあつて、そこでも氏の本で触れてゐる安心できる、信頼できるベース・サプリメントを販売してゐるのだ)もさう、みんな商売なんですね、新興宗教みたいなんですね、だからどれを読んでもどこかで自分に都合のいい結論に持つていく、さういふ印象がある。ちよつと長くなつたけど、もうこんなもんかなあ、かういふ手の本は満腹、ゲップが出さう。(さう言ひつつもアンドルー・ワイルだけは違ふ、と思ひたいんだけど、……。)

2015-11-28

613.〜632.JIN-仁- 1〜20

村上もとか・集英社(used)。たまたま再放送の第一回を見て、面白さうだと思つた。テレビドラマを全部見るのは鬱陶しいので漫画を読むことにしたのだが、全巻揃へるのに手間取つたから二三箇月掛かつたかなあ。やつぱり連載の長い漫画はサイドストーリーが余計だなと感じるものがある。20世紀少年にも、モンスターにもあつたし、古いところではドラゴンボールか。別に目くじら立てるほどのことでもないが。スリの女の子が岡つ引きの親分に陵辱されるところは要らないと思ふ。そもそもかういふシーンが嫌ひで、裸の絵は好きだし、気取つてると思はれると心外なんだけど、人間として許せない行為は見たくないといふだけのことだ。明治維新にかかはるところも、もう少しダイエットしてほしいかな。坂本龍馬に肩入れし過ぎでないかい。白けるね。最後で解せないのは同じ人間が二人存在することになるといふことですね。これを認めたらなんでもありでせう。フィクションだから、漫画だから許されるんですかねえ。こないだhiko8さんにそのことを言つたら多元宇宙といふことでせう、とのこと。章のタイトルにちやんと「その4 二人の仁」つて書いてあるよ、と。確かに。さういふところ読まないんだよね、オレは。漫画の小見出しみたいなものは殆ど読まないので、失礼しました。もう一度読みたいと思ふ作品でした。(「め組の大吾」と「鋼の錬金術師」と古谷実の本を読み返したいんだけど、時間が取れない。)

2015-11-01

612.9割の病気は自分で治せる

岡本裕・中経の文庫(used)。自然治癒力、自己治癒力といふものへの興味から、どうしてもかういふ本を読んでしまふ。自分の病気の先にあるもの、仮に抗がん治療へ移つたとしても、その先には何もない。それ以降の、更に効果的な治療はない。とすれば、自分で治す、完治しないまでも生き抜くためには、治癒力を高めるしかない。なによりも先づストレスを減らして、とすれば定年はよい時期だとも言へる。P178に書いてある、嫌なことはしない(NO)、したいことだけする(WANT)、いい加減に(SOSO)、を大切にしませう、なんてことは勤め人には無理な相談だから。同様の本の中では示唆が多い。アンドルー・ワイルみたいなタレント性は乏しいけど。因みに著者は医師。

2015-10-17

611.追憶の殺意

中町信・創元推理文庫(used)。「自動車教習所殺人事件」の復刊といふべきなのか。中身の検証はしてないが、同じものだと思ふ。「○○の殺意」といふ創元推理文庫での中町作品は凡て、これに統一されてゐる。真犯人を勘違ひしてゐた。そんなに以前に読んだワケでもないのに。「とか」が多いねえ、ホントに。中町信を読み始めて直ぐに気になつて、ブログかホームページで書いた記憶がある。今度、調べてブログのはうで書かう。

2015-10-05

610.真夏の方程式

東野圭吾・文春文庫(used)。「容疑者Xの献身」もさうだつたが、ちよつと無理があるんぢやないか。面白いのは間違ひない。一気に読んでしまふ、やめられない。ただ読み終はつて、痼りのやうに残るのだ。読み手の期待、例へば意外な犯人、予想外の展開に応へようとしてゐないか。もちろんミステリは娯楽なので、読み手を楽しませるのが基本だといふのはわかるけど。なぜ川端成美は玻璃ヶ浦の海を守らうとするのか。おしまひのはうで説明されるが、なるほどね、とは思へなかつた。先づ、荻窪での殺人事件が胡散臭く思へてしまふ。杜撰な捜査ではないですか、結果を考へると。そして塚原の行動。公民館で初対面の成美に会釈してどうするのさ。軽率過ぎる。その晩、緑岩荘で顔をあはせたときなら、わかる。節子と成美はなぜ荻窪で暮らしてゐたのか。それも判然としない。社宅にゐたら、そのはうが自然だと思ふが、事件は起こらない可能性のはうが高い。その説明が書いてあつたかもしれないと思ひ、パラパラとめくつて探したが、みつからない。そしてネタバレになつてしまふかもしれないが、荻窪の事件は正直に警察に出頭しても、裁判では情状酌量の余地があつたんではないか、未成年だし。親にしてみたら、出生の秘密が表に出るとか、隠したいことはあるにしても。更に言ふと、塚原は殺さなければならなかつたのか。助かつたら、どうするつもりだつたのだらう。まあ、些細なことだけど。我慢できなくなつてDVDを借りて来てしまつた。映画の「はう」はどういふ「かたち」になつてゐるんだらう。

2015-09-15

偽りの群像

中町信。「偽りの殺意」光文社文庫所収。中町信のデビュー作だ。惜しくも賞は逃したものの雑誌に掲載された。群馬県の猿ケ京温泉が舞台になつてゐる。のちの「模倣の殺意」(「新人文学賞殺人事件」)でのトリックとは違ふオーソドックスなアリバイ崩し。続けて「急行しろやま」も読んだ。これは鉄道トリックで、いかにも鮎川哲也が好きだつた中町信らしい。こつちは第四回双葉推理賞を受賞した。この本にはもう一篇「愛と死の映像といふ長めの作品も収録されてゐるが、今回は見送り。

2015-08-23

609.鳴るは風鈴

木山捷平・講談社文芸文庫。木山さんは気に入つてゐて、邑楽町の図書館で借りて来たこともある。これにも入つてる「下駄の腰掛」が好きで、それでこれを買つたのだが、いまは講談社の文芸文庫でないと手に入らないかもね。高いんだよね、これ。単行本並みだ。まあ、絶版などを復刻してくれるのは有り難いけど、高い。木山捷平は井伏鱒二の弟子みたいな関係なんでせうかね。似てると思ふ。小説つぽい「コレラ船」、「柚子、「御水取」もいいんだけど、表題にもなつてる「鳴るは風鈴」や「下駄の腰掛」みたいなはうが好きだなあ。井伏さんも「夜ふけと梅の花」とか「岬の風景」「シグレ島叙景」とか「丹下氏邸」がいいなあ。小沼丹もいいんだけど(小沼さんも井伏さんと近いみたいで創元推理文庫の「黒いハンカチ」も面白かつた)、この人の復刻も講談社の文芸文庫なんだよねえ。

2015-08-19

608.ゆで卵の丸かじり

東海林さだお・文春文庫。些細なことに固執してるところは面白いんだけど、最後まで読むのは根気が要る。なんで買つたかと言へば、冒頭の「ラーメンに海苔は必要か」といふ問題に対して、海苔は好きだがラーメンには不要だとの立場から是非読んで置かう、と。苺を潰して食べた話、懐かしいなあ。牛乳と砂糖を入れて、潰して食べたもんだよ、いまの子どもにや判らないだらうなあ。コンビニのおでんの大根はセブンイレブンもサンクスもローソンも直径6cm、厚さ3cmなのださうだ。そして縁の面取りもない、なぜ?これはまだ誰も言つてない気がするが、コンビニのおでんの茹で卵、黄身が異常に大きくないかい?オレはまへから言つてるんだけど、あんまり興味ないんだらうね、茹で卵。茹で卵についての回もあつて、オレの場合は反対に最後に白身のとこだけ食べるやうに心掛けてます。もちろん一口食ひは理想だ。

2015-08-13

夜の来訪者

プリーストリー/安藤貞雄訳・岩波文庫(×2)。寝るまへになんとなく手に取つて、どんな話だつたかなあ、と読み始めたら、結局最後まで読んでしまつた。短い戯曲だし、人物も場面も限られてゐる。誰にもありさうな、どこかで誰かを傷つけてゐる、まあ、さういふ風に読んだ、階級とか、差別とか、さらには戦争とか、いろいろ込めてあるやうだけど。間違つてはゐないでせう。警部は本物か、寓意的な象徴か。

2015-07-31

潜在光景

松本清張の「影の車」といふ連作短篇集の第一話。第二話「典雅な姉弟」、第四話「鉢植を買う女」の3篇を続けて読んだ。「潜在光景」は小説よりも映画のはうを先に見てゐるかもしれない。映画の題名は「影の車」になつてゐるが、内容はこの「潜在光景」だけを扱つてゐる。加藤剛と岩下志麻が出てゐて、この映画の岩下志麻は特に好い。それで原作を探してこの短篇集に辿り着いたのだと思ふ。映画をもう一度見たいけど、TSUTAYAにあるかなあ。

2015-07-26

607.働かないアリに意義がある

長谷川英祐・メディアファクトリー新書(used)。あまり聞かない出版社。副題として「社会性昆虫の最新知見に学ぶ、集団と個の快適な関係」とある。表紙の右下には更に「身につまされる最新生物学」とも。ま、さういふ蟻や蜂の生態について描かれた本で、タイトルが面白さうだつたから買つたが、生物学の記述はやつぱり頭に入らないね。特に繁殖に関するところ。働かない蟻がゐること、反応の早さに個体差があること、まるで人間とおんなじだね。身近すぎて笑へないよ。

2015-07-20

606.怪笑小説

東野圭吾・集英社文庫(used)。9篇の短篇集。ハヅレはなく、どれも面白く読みました。電車の中でのやり取りはサキのトモバリーを思ひ出した。一徹おやじの結末はちよつと予想がつきました。動物家族は一番力が入つてる感じでしたね。めづらしく最後に「あとがき」があつて、その中で科学に就いてのご意見、ちよつと素直に聞き流せないところがありました。それは別のところ(hiko7 News)で書きます。

2015-07-13

605. 女には向かない職業 2 なんとかなるわよ

いしいひさいち・東京創元社(used)。藤原先生の続き。先生の高校時代に始まり、小学校の先生時代、ミステリ作家になつてから、まで。

2015-07-11

604.女には向かない職業

いしいひさいち・東京創元社(used)。P・D・ジェイムズに同じ題名のミステリがあるが、女には「わたし」とルビがあつた。新書サイズ。小学校の先生からミステリ作家になつてしまふ藤原瞳さんの四コマ漫画。続きもある。

2015-07-10

603.趣味は読書。

斎藤美奈子・平凡社(used)。斎藤さんの本はどのくらゐ読んでるだらう、この本も買ふまへに持つてるんぢやないか、(例へば図書館で借りて)読んだことがあるんぢやないかと思つた。それならそれでかまはない、覚えてないんだから。2003年刊行の書評集。当時のベストセラーを取り上げてゐる。作者名すら知らない本、恐らく買つて読むことはないだらうと思はれるものが半分くらゐ。具体的には、茨木のり子「倚りかからず」、高森顕徹「光に向かって100の花束」、中島義道「働くことがイヤな人のための本」。書名を見たことがある、著者の名前は聞いたことがある、ほかの作品を読んだことがある作者もゐた。五木寛之「大河の一滴」や浅田次郎「鉄道員」(両方とも読んだことはありません)を始め、石原慎太郎、天童荒太「永遠の仔」、」村上春樹「海辺のカフカ」、宮部みゆき「模倣犯」、ハリー・ポッター・シリーズ、「五体不満足」「だから、あなたも生きぬいて」、「世界がもし100人の村だつたら」などなど。あとタレント本。面白くスラスラ読める。著者の言ふ、売れる本の条件を満たしてゐると思ふのだが。

2015-07-09

602.あずまんが大王 一年生

あずまきよひこ・小学館(used)。立ち読みで笑つてしまひ購入。夕飯食べてから読み始め、やめられなくて一気読み。高校生の話で、担任の先生と主に女子生徒の4コマ漫画。いちいち説明すんのが面倒、兎に角、笑ひツ放しだつた。絵がケロロ軍曹の吉崎観音に似てると思ふ。

2015-07-04

601.がんが自然に消えていくセルフケア

野本篤志・現代書林。これまでは作品数でナンバーを付けてゐたのだが、なんだかずゐぶん読んだ本が少ないやうな気がして遡つてみると、コミックなどは例へば「20世紀少年」とか「鋼の錬金術師」などは20冊以上あつても1作品として数へてゐたワケだ。何冊読んだかな、と振り返るとき、ちよつと寂しいので休みの序でに1冊は1冊として数へ直してナンバーを付け直した(上下巻に分かれたものは2冊、その代り10冊読んでも全巻読んでなければ0冊、再読はこれまで通り数に入れない)。ほぼ半日の作業でした。もつと早く終ると思つてゐたのに、Bloggerの不具合が3〜4回起こつてしまひ、作業が中断したせゐもある。因みにこの本はこれまで通りの計算では431冊目になる。
あまり期待はしてなかつたが、心の持ち方といふ意味では為になつたと思ふ。癌になつたことを契機に、これまでやりたくても我慢してきたことに取り組んでみよう、といふ気持ちになつた。なにがどこまでできるかどうかは判らないけれども。残された時間を充てたいと思ふ。
アンドルー・ワイルの本に出てゐることと重複する部分があるのだが、本文ではワイルの名前は一度も出なかつた。付録の特別対談P215で漸く対談相手の帯津良一氏が触れる程度。またワイルと親しい寺山心一翁(ワイルの「癒す心、治る力」のP168「誰もが神なんだ」によれば、腎臓癌が自然退縮した例としてあげられてゐる人)についても、本書の終り近いP195(「おわりに」を含め全222頁)で触れてゐる。まあ、そんなことはたいしたことではないが、本全体の印象だが、ちよつと信仰めいたものを感じ、引いてしまつた。
それは寺山心一翁氏のホームページでも感じたことなのだが、仏壇やお墓で拝むといふ標準的な先祖供養の気持ちしか持ち合はせないオレのやうな人間には、宗教集団のやうに感じられるのはなぜだらう。オレがひねくれてるのだらうか。まあ、素直じやない、天邪鬼かも知れないが。

2015-06-30

迷宮の美術史 名画贋作

岡部昌幸(監修)・青春新書(×2)。空いた時間に、とパラパラ捲つてゐたら、結局最後まで読んでしまつた。本物だから価値がある、といふ理屈は判る。世界に一つしかないものだから?そつくりに作られた偽物だつて世界に一つかもしれない。版画、浮世絵、ウォーホルのマリリン・モンローはどうなる?

2015-06-24

600.鬼平犯科帳(七)

池波正太郎・文春文庫(used)。こつちはちと時間がかかつてしまつた。(六)のはうは買つて直ぐに読み始め、一気に読んでしまつたのだが。鬼平が実に好い。使ひのものへの心遣ひ、密偵五郎蔵と鶴吉への配慮など。解説を中島梓が書いてゐて、三島由紀夫の「文章読本」で読んだ鷗外の「水が来た」に触れてゐるのには、にんまりしてしまつた。さうなんだよねえ、これが頭の隅つこに残つてるんだよねえ。

2015-06-02

599.鬼平犯科帳(六)

池波正太郎・文春文庫(used)。漸く、小説が読めた。短篇は読み返したりしてゐたけれども、一冊をまへにすると、どうにも頁が進まない。けれども、鬼平のまへには、それも解決。やめられないのだよ。(七)と一緒に買つたのがよかつた。もう、次が読みたくてたまらない。(二)以降は新装版といふヤツで、活字が大きいのだ。確か、この中にある「狐火」はDVDで見たんぢやないかな。おまさがいい、なんてことをいひ始めると粂八も彦十もいい、伊三次も、与力同士も言ひ始めたらキリがない。そもそも平蔵がいいからね。この中のどの話のどこがいい、なんてことは鬼平を読む人には関係ないんだよなあ。判つてるんだ、だから鬼平を読むんだよ、きつと。平蔵の心遣ひとか、それに応へる密偵とのやりとりは堪らないね、ちよつと涙ぐんだりもしてしまふのだよ。これはやつぱり全部、本で手元にほしいね。

2015-06-01

598.犬は「びよ」と鳴いていた

山口仲美・光文社新書(used)。題名が面白さうだつたので購入。副題として「日本語は擬音語・擬態語が面白い」。わんわん、がたがたなどの擬音語、さらさら、べたべたなどの擬態語が日本語にはとても多くて筆者はそれに魅せられてしまつたといふ。草野心平や宮沢賢治は好きで使つてゐるけれども、逆に嫌ふ人もゐて、森鷗外や三島由紀夫は使はないやうにしてゐたのださうだ。その分類と日本語の歴史の中で、これがどう変化してきたか、そして動物の鳴き声の変化について書いてある。面白いけど、案外時間がかかつてしまつた。P105〜106にかけて「あっさり」と「さっぱり」の違ひを説明してゐるが、「あっさり」は「物や人の性質(属性)にのみ使う」のに対して、「さっぱり」は「それから受ける私たちの気持ちをも表す」と区別してゐて、なるほどと思つた。肝心の犬の鳴き声で、P120の「わんわん」の例は1642年の「古本能狂言集」所収の「犬山伏」の引用で、P124の「びよびよ」の例は1660年の「狂言集」からの引用なのだが、古いはうが「わんわん」なのはどういふことか。「びよ」が「わん」に変化した例になるのかなあ。それからこれはほんたうに些細なことだが、十返舎一九(ジッペンシャイックと読む、けしてジュッペンシャイックとは読まないやうにお願ひします、「十手」は「ジッテ」、「十戒」は「ジッカイ」です「ジュッテ」や「ジュッカイ」とは読まないこと)の「東海道中膝栗毛」の引用でP158のネズミの鳴き声のところでは「弥次さん喜多さん」と地の文では書いてゐるが、引用文では「北八」になつてゐる。それがP194の馬の鳴き声でも同じ「東海道中膝栗毛」から引用があり、そこでは地の文でも「おなじみの弥次さん北さん」と書いてある。なんでだらう。

2015-04-24

597.医者の私ががんを消した食事法

中野重徳・中経出版。筆者は前立腺癌と診断された医師で、現在81歳。10年ほどまへにその診断を受けたといふ。前立腺内にとどまる癌であり、PSAも10以下、全摘出や放射線治療を受けずにホルモン治療を受けたのだが、副作用に悩まされ、食事療法に切り替へ現在に至つてゐるといふ。少しは参考になつたけど、違ひのはうが多かつた。PSAが10なんて、オレはまだ届かない、27だよ。しかもリンバ節に転移してるから摘出は無理。でも同じホルモン治療で、薬も同じなのにオレには筆者の言ふホットフラッシュ(まへぶれもなく体が熱くなる、動機が激しくなつて、顔がほてり汗が噴き出す)副作用はないんだよね。気づかないだけかね。いづれにしても筆者の年齢を考へると、加齢による小康状態にあるだけではないか、食事療法によるものとは思へない。食事の内容も、見事だな、と思へるやうな厳密さもないしね。因みに朝食のメニューは80歳の人が食べるものとは思へないほどの量です。蛇足ながら、P202「ジャガイモやトウモロコも野菜ですが」と。トウモロコシぢやないかなあ。こんな単純な誤植は出版社で気づかない?いいや。これはトウモロコシぢやなくてトウモロコなんだ、と言はれたら、なにも言へない。

2015-04-17

596.前立腺がん──治療法の選択のために──

順天堂大学医学部編・学生社。自分の病気についてインターネットや病院でくれる冊子の知識だけでなく、病院や医師が纏めたり書いたりしたものを読んで置かうと思つて購入。「はじめに」のところで順天堂大学の基本的な姿勢が書いてあつて、「自分の母親に対して、この治療が出来るのか」「自分の子供に対して、このメスを入れられるか」さういふ問ひを自らに発しつつ医療を行ふやうに教育してゐる、とある。これを仁の心と呼んでゐる。もう考へても仕方のないことだけど、……。改めて、向き合ふ心構へを。

2015-04-14

595.お客に言えない食べ物のウラ事情

㊙︎情報取材班・青春文庫(used)。「お客に言えない食べ物のカラクリ」と一緒に買つた。やはり食べ物についての雑学で、知らなくても生きて行くうへでは特に困らないだらう、といふ話。こつちは章立てが「人気食品のホントの裏側」、「身近な食べ物の意外な㊙︎事情」、「お客に言えない食品売り場の秘密」となつてゐて、立ち読みしたきには全然別の内容だらう、と検討を付けて一緒に買つたのだが、読んでみると三分の一くらゐは重複してゐるやうに思ふ。一つ一つ検証したワケぢやないから断定はできないが。こつちはイラスト付で、ページ数も多いのに値段が安い(本体543円+税で、あつちは本体619円P+税、どつちも108円税込で購入)のはなんでだらう、思つて奥付を見たら、こつちのはうが古くて2004年10月20日第一刷で、あつちは2014年2月20日第一刷。なのに、こつちはカバーの裏側の袖に「シリーズ第二弾」と書いてあつて、どつちが先?。
蛇足。あつちのP78にスーパーの「野菜だけは、消費期限も賞味期限も明示されていない」と書いてあるけど、もやしには期限が書いてなかつたかなあ?

2015-04-10

594.お客に言えない食べ物のカラクリ

㊙︎情報取材班編・青春文庫(used)。漸く始めから最後まで一冊の本を読むことができた。目出度いことだ。しかし、まだ油断はできない。なぜなら小説が読めないからだ。小説は書いてあることが頭に入らない。最初の一頁分くらゐで挫折してしまふ。それは兎も角読みをへた。食に関する雑学を纏めたものだ。例へば「ウナギ不足といいながら、かば焼きがまずまず出回っているのは?」に始まり、三元豚とはなにか、アイスクリームに賞味期限がないのはなぜか、コーヒー豆に新豆はあるか、ハチミツが腐らないのは本当か、メンマはどうやつて作るのか、といふ、まあ、どうでもいいやうな話がたくさん書いてある。暇つぶしにはちやうどいい。

2015-04-03

変な友達──吉田健一のこと──

白洲正子・新潮社「吉田健一集成別巻」所収。江國滋の「日本語八つ当たり」以降、もう一箇月近く新たに本を始めから読む、読み始めることができないでゐるのだが、そんな中で何度か繰り返して読んでゐるものの一つが、この白洲正子が集成別巻に書いてゐる吉田健一の話だ。例へば河上徹太郎や丸谷才一、篠田一士、清水徹といふ人たちが描く吉田健一の肖像とはすこし違ふ吉田健一がここにはゐる。或は当人が思つてゐたのとも違ふ吉田健一かもしれない。誰かがどこかで書いてゐて、それが誰でどこに書いてゐたのか、ちつとも思ひ出せないので書かうかどうしようか迷ふのだが、ちやつかり書いてしまふと、吉田健一は頻りに小林秀雄を褒めるけれども考へ方は相容れないのではないか、水と油ぢやないか、といふその辺をやはり白洲正子は書いてゐる。第一、小林秀雄のどこがそんなにが偉いのか、ちんぷんかんぷんで、それが文学といふものなら、オレは文学なんか判らなくても一向に構はない。ただ、ここにゐる吉田健一のはうが人間として魅力的だし、現実味がある(現実味なんていふ言葉はない、と吉田健一は言ふかなあ)。P340(あの、敗戦後に「いつそ国語をフランス語にしたらどうか」なんていふ正気の沙汰とは思へない発言をした「小説の神様」!である)志賀直哉が卵が割れないことで笑つたといふ話に「育ちがいいので卵が割れないと思うのは間違っている。育ちと卵とはぜんぜん違う話なのだ」と切つて捨てる。ほかにもあるが、書きたくなつたら書かう。34人が「吉田健一・人と文学」といふ括りで書いてゐるが、この白洲正子と吉田暁子の「まっすぐな線──父のこと」は何度読み返しても好い。ほかの人は伝説回路に嵌つてゐる。

2015-03-15

おかしなことを聞くね

ローレンス・ブロック/田口俊樹・他訳ハヤカワ文庫「ローレンス・ブロック傑作集1おかしなことを聞くね」所収。2008年の3月に記事を書いてるので、そつちと重複しないやうにしよう。古着のジーンズは一体どうやつて仕入れるんだらう、ちやうど穿きなれた頃の馴染んだジーンズを売るのなんて不思議だといつも思つてゐたロバートが遭遇する、思ひもよらない出来事。前回、お気に入りで挙げた「我々は強盗である」、「動物収容所にて」、「無意味なことでも」、バーニィーもの「夜の泥棒のように」、マット・スカダ―もの「窓から外へ」と、ついつい読んでしまつた「食いついた魚」、「成功報酬」、「アッカーマン狩り」を読み返した。実に面白い短篇が多い。全部で18篇収録してあるうち、タイトル作を含め9篇読んだわけだが、どれも少しづづ面白さが違ふ。飽きさせない。バーニィーとスカダ―の長篇シリーズは読んでみたいと思つたけれども、まだ読んでない本がたくさんあるので、いまは控へるしかないね。機会があれば、集めてじつくり読みたいものだ。

2015-03-02

日本語八つ当たり

江國滋・新潮文庫(used)×2。たぶん単行本で購入し読んでゐる。といふのは小沢昭一の解説を読んだ記憶がないから。単行本のはうは見当たらないので、売つてしまつたのだらうか。ほぼ江國滋の側に立つてゐると思ふ。まあ、お嬢さんが書いた「冷静と情熱のあいだ」といふ題名を見たら、どう感じるのだらうか、とは思ふけど。

2015-02-15

593.螻蛄

黒川博行・新潮文庫。やつぱり疫病神シリーズは面白い。二宮、桑原コンビは、最初の疫病神ですつかり気に入つてしまつた。今回は宗教団体のお宝を巡る駆け引き。オレは桑原が好きだなあ。二宮は黒豆コンビを思ひ出させる。

2015-02-09

592.迅雷

黒川博行・文春文庫。ヤクザの幹部を誘拐し身代金を要求する三人組の話。usedではなく疫病神シリーズの「螻蛄」と一緒に渋川のTSUTAYAで購入。1回目は上手く行く。それでもつと上の、大きな組織の幹部を誘拐することになつてこれが本筋で梃子摺る。1人が人質になつてしまふし、誘拐した幹部と交換するつもりだつたが、土壇場で思はぬミスから敵陣に乗り込んで仲間を救出する羽目になる。読み終へるまでやめられない。普通に見れば冴えない、落ちこぼれた男たちが、最後まで諦めないで行動する姿がいい。ラストはやつぱりハードボイルドだなあ、と思ふ。男つてバカだよなあ。この選択が嬉しい。

2015-01-30

夜のオルフェウス

都筑道夫・角川文庫「黒い招き猫」所収。もちろん冊数にはかぞへないが、かういふ風に短篇集の中にあつて、読み返すものも幾つかあるので、それらについてもこのブログに書いてしまふことにした。もともと「(ときどき)読書日記」といふタイトルでもあり、新たに読んだ本を中心にすることもないだらう。それに、例へばきのふHIKO7 NEWSのはうで取り上げた丸元淑生の「悪い食事と良い食事」の一部についても読み返したものについても書いてしまはうと思ふ。一冊まるごと読んだもの、ばかりでなくてもいいぢやないか、そのはうがプログのタイトルらしくていいんぢやないの、と考へたわけだ。
といふわけで(確か淀川さんがこんな風に映画の解説を始めたやうに記憶する)、まづは都筑道夫の「夜オルフェウス」。これ、どのくらゐ読み返したらう。始めて読んだときには、それほどでもなかつたのだよ、hiko8さんから推奨されるまでは。読み返すうちに良い小説だなあ、と思ふやうになつた。
けふは、ここまでにする。近いうちに続きを(つづきみちお、だから続きを、といふ駄洒落ではない)書くか、また別な違ふものについて書くか、そのときそのときで、ときどきの読書(読書といふ言葉もあんまり好きぢやなくて、趣味は読書です、とか、映画鑑賞です、とか平気で言へない、本を読むのが好きです、映画を見るのが好きです、といふ言ひかたは駄目なんかねえ)日記だから。
さうさう、まつたく関係ない話で、実は文庫の小説に限らず、解説を読むのが好きなんだよ。さういふ人もゐると思ふので、と書き始めで触れてゐる文庫の解説(ミステリだつたかな)に出くはしたことがあるが、ほかにもゐるんだなあ、と思つて安心した。
因みにこの「黒い招き猫」は石上三登志といふ人。どういふ人か、なにをなりはひにしてゐる人かは知らない。

2015-01-05

一日一生

酒井雄哉・朝日新書(×5)。年が明けて、何も読む気にならなくて、この本を読み返した。気持ちが少し楽になつた。