2012-04-20

マーク・エリオット/古賀林 幸訳「闇の王子ディズニー」上下・草思社(449.450・used)読了。2週間近くかかつた。どうも好きになれない人物ウォルト・ディズニーの伝記。どう理由をつけても、それは妬み、嫉みの類ひなのだらう。ただ一つ、強く印象に残つてゐるのは、どこかの小学校で卒業生が記念にプールの底にミッキーマウスの絵を書いて、それもまた呆れた話ではあるけれども、それを知つたディズニーの会社が著作権侵害だと訴へたとか、申し入れたとかといふ新聞記事で、この本を読むと、さうしたイザコザはディズニーには相応しいかも知れないと納得する。大勢のアニメーターのまへで、身振り手振りを交へ、一人で凡ての登場人物をこなして白雪姫の話を最初から最後まで演じてみせるといふ熱意といふか演技力には驚くし、ミッキーマウスを作つたのは友人だつたアブ・アイワークスだつたとしても、殆どアニメの作画には直接かかはらなかつたにしても、やはりディズニーは優れた才能の持ち主だつたのだ、と知る。FBIの連絡員で、赤狩りで仲間を売つたり、反共主義者でユダヤ人嫌ひで、労働組合潰しで、安い賃金でスタッフをこき使ひ、男女差別者で、手柄は全部独り占めで、アルコール依存症で、ヘビースモーカーだつたディズニーの姿は、読んでゐるあひだ反発も感じたけれども、それだけ生きた人間として描かれてゐる。