2008-09-27

156.イッセー尾形の人生カタログ

イッセー尾形・朝日文庫(used)
これは面白かつた。一人芝居よりももつと短くて、ちよつとした場面のやうで、状況説明が足りないのに、なんとなく頷ける。全部で51篇。一年52週だから、暮れから正月はお休みだつたのかなあ。まつたく本を読む気にならない、ここ一箇月のあひだ、日に二つ、三つと読み継いで来た。星新一や都筑道夫のショートショートとは違ふ面白さ。それは例へば、落語の小咄的なオチがないものが殆どだ。この先一体どうなる、といふところで読み手は放り出されてしまふ。筋なんか二の次。状況設定と人物重視。一人芝居に似てる。

2008-09-24

155.パラサイト・イヴ

瀬名秀明・角川書店(used)
1995年の第2回日本ホラー小説大賞に選ばれ、ベストセラーになつたと記憶してゐる。第4回の大賞が貴志祐介の「黒い家」で、これは読んだし、映画にもなつたのでDVDで見てもゐるが、こつちはなかなか読む気にならなかつた。BookOffで、105円の単行本で目立つ汚れもなく状態がよかつたから、つい買てしまつたが、買つてからも、なかなか読む気にならなかつた。カバーの絵が気味が悪かつたこと、プロローグを読んでも、ちつとも興味が湧かない。一箇月放置してゐた。それがちやうどなにも読めない状態と重なる。カバーを外して読んだ。発想はびつくりする。ミトコンドリアなんて中学の理科で習つて、辛うじて名前を知つてるだけ。第三部に入り、300頁を過ぎた頃から章の括りが短くなり、テンポが早くなる。14で文章実験みたいなところが出て来る。23にもある。が、果たして効果的かどうかは疑問。ずるり、どろり、ぎくり、にこり、ごきり、ゆるり、にやり、ぐにやり、ぶくり、びしり、かういふ「○○り」がお気に入りなのか、終盤のクライマックスでたくさん出て来て閉口した。本の最後に選評があり、絶賛されてゐるけれど、ホラー映画には確かにグロテスクなシーンはあるし、汚いと感じる場面もあるが、それを踏まへても、汚いと感じる場面があつた。また、怖さといふ点では期待してゐたものとだいぶ質が違ふ。

2008-09-15

153.154.自虐の詩(上・下)

業田良家・竹書房文庫(used)
ほぼ一箇月、まともに一冊読み通すことができなかつた。PHP文庫から出てゐる相対性理論や量子論のダイジェスト解説本を読み直したり、幾つかの小説を拾ひ読みしたりしてゐた。これは二箇月まへに渋川のBookOffで奇麗な状態であつたのを見つけてほしくなつた。買つて直ぐに上巻を1/3くらゐ読んだところで、ひよつとするとこれは集中的に読まないとホントの面白さが解らないぞ、と直感した。休みのまへの晩から読み出し、一気に読んだ。下巻になつて熊本さんが登場するところから、更に面白くなる。森田幸江の過去が、葉山イサオとの馴れ初めと絡んで語られる。ストーリーマンガだよ。なのに、4コマ。なのにストーリーが展開して、感動的な結末。人生を感じる。絵もときどきシュールで、よい。画面の白さが、よい。もつと語りたいけれども、知ればそれだけ感動が薄くなるやうな気がする。ミステリーの結末みたいなものだ。