2010-10-31

佐野洋「燃えた指」徳間文庫(330・used)を読んだ。9篇収められた文庫オリジナル版。この文庫オリジナル版といふのは佐野洋には結構多い気がする。何冊か読んだ記憶がある。いづれにしても、これは気楽に読める軽いミステリ。高校生で作つた年寄りの話を聞く会で、毎回なにか謎が出て、それを解き明かす。いはゆるミステリ風の殺人などは出て来ない。言葉遣ひについても触れてゐる。

2010-10-25

荻原浩「神様からひと言」光文社文庫(329・used)を読む。サラリーマン小説なんだけど、会社の持つ矛盾に負けないで頑張らう、といふメッセージを持つコミックに近い展開。スラスラ読めるのに、止まつてしまひ、読み終へるのに日数が掛かつた。まあ、止まつてるあひだに他にも手を出してたから。お客様相談室での奮闘は笑へる。

2010-10-23

山田真哉「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」光文社新書(328・used)。5年くらゐまへにベストセラーになつた。当時は買ふ気にも読む気にもならなかつたが、105円で見た目もよければ読んでみるかと思ふ。ケチだね。さう、ケチなのは大事だといふ話。ではなく、会計についての本なのだが、プロローグP4で「会計は」「やさしく教えることが出来るような学問ではない」と書かれてゐて、ちよつと引つ掛かつた。会計つてのは実務、技術ではないのか。学問といふのはさあ、進化する、といふか進歩すると言ふか、真実を追究するといふか。会計学といふのか知らないが、実務だよなあ、どうみても。──それにしても数字に強い弱いはあるね。P185からは特に面白かつた。統計の誤摩化し、と言つちやあ悪いが、本質が見えなくなるのは確かだよ。特殊な統計の仕方とか。タバコがいい例だらうけど。いづれにしてもこれがベストセラー。これはまあまあ面白く読んだけど、バカの壁とか、国家の品格だか、遅ればせながら読んだけれども殆ど陸でもない話。ただの時間つぶし。ミステリーのはうがマシだな。驚きも意外性もない。

2010-10-22

林博史「頭のリズム・体のリズム」ごま書房GOMABOOKS(327・used)。サーカディアン・リズムを中心に人間の持つ複数のリズムについての話。1日単位であつたり、月単位だつたり、年単位だつたり。1日のうちでも昼と夜であつたり、そのリズムの内容によつて周期は様々だ。自律神経の働き、交感神経と副交感神経の役割や入れ替りの時間帯、睡眠についても面白かつた。特に染色体のテロミアについて。ここが寿命を司つてゐるといふ話。ほかにも、年を取ると時間が早く過ぎると感じるのはなぜか。サーカディアン・リズムは24時間よりも少し長い25時間周期だが、その周期が加齢によつて短くなつて行くせゐなんださうだ。なるほど。ここにあるのは実証科学的な報告であつて、現象から推理された法則を実験その他で証明できたもの、と言へる。つまり、今後の研究で、更に解明されたり、ひつくり返されたりするものもないとは言へない、といふこと。まだ始まつたばかり。でも興味深いね。

2010-10-10

吾妻ひでお「うつうつひでお日記DX」角川文庫(326・used)。文字が小さくて文庫では読みにくい。失踪日記が面白かつたので、買つた。内容は失踪日記で書かれた生活以降の日記。吾妻ひでおの絵は好きだねえ。ロリコン少女の絵のはうはどうでもよくて、いかにも漫画の丸つこいタッチなのに、意外に細かく書き込んであつたり、ちよつとしたものにもきちんと影がついてたりするところが好き。業田良家の自虐の詩褒めてる。でせう、つて気分。山本英夫のホムンクルス褒めてる。読んでみるかな。
一緒に買つた山本英夫「のぞき屋」小学館YSコミック(325・used)も続けて読んでしまつたので書いておかう。前篇、後篇に分かれてゐて、前篇はトラウマ克服篇。後篇ではのぞき屋商売を開始し、のぞき男を捕まへる話。絵はやつぱり斜め横顔の特徴はそのまま。このあと新のぞき屋でシリーズになつてる。読んでみるかなあ。
山本英夫「1(イチ)」小学館YSコミックス(324・used)を読んだ。山本英夫は「モムンクルス」といふのを書いてゐるんだよね。それがBookOffで眺めてると、たまに目に入る。ホムンクルスといふ言葉、名前は鋼の錬金術師に出て来る。なので気になつてた漫画家。1巻ものが2冊あつたので買つてみた。高校生の話で、ケンカもの。弱虫みたいに見えるヤツが実は強くて、最後には宿敵を倒すといふカンフー映画的に展開する。絵が不思議で、正面で見る顔と僅かに下から見上げるやうにして見る七三くらいの横顔(真横ぢやない)の目鼻口の配置が向いてる側に寄つてゐる感じになる。つまり向いてないはうに余白といふか、頰と顎が広くなる傾向がある。なので、正面顔の次のコマにそれが出て来ると一瞬誰の顔がわからないことが何度かあつた。面白かつたし、絵も上手いんだけど、さういふ癖といふか、意図的なのか、ある人。→なんと、この続篇なのか「殺し屋1」(殺し屋イチ)といふのがあつて、それはもう容赦なしのグロさ、だ。2010.10.20

2010-10-05

橋爪大三郎「はじめての構造主義」講談社現代新書(323・used)を読む。構造主義に関する本は2冊目。内容はよく判らないが、まあ、構造主義がなんであらうと、考へ方の問題なんだな、といふのが結論。遠近法の説明で、時間は兎も角、空間的に見えてゐるやうに書くための手法が遠近法。時間を持ち込んだらどうなるのか、それが未来派──セヴェリーニ、マルセル・デュシャンの「階段を降りる裸婦」もさうかな、それを空間的に再構築するとキュビズムでせうか。やつぱ表現としては絵画、美術運動が一番進んでる気がする。小説が最も遅れを取つてゐるね。