2006-08-30

45.小豆島殺人事件

中町信・TOKUMA NOVELS(used)
プロローグで「私」を読み違へた。それが中盤まで尾を引いた。犯人の意外性はそれほどもない。気絶してる女性を暴行する。しかも3人掛かりだ。途中で意識が戻りませんか?よりも先づ、なぜ気絶したのか。数人の酔つ払ひに襲はれ、……といふ事情だと説明があるが、相手の顔が解らないといふことがあるでせうか?後ろからいきなり襲はれ、例へば何かで殴られて気を失ひ、だから顔が見えなくつて、……なんでオレが解説しなきやならないの?テニス部の5日間の合宿が小豆島から有馬温泉へと移動して行ふといふのも不思議でしたが。

2006-08-26

44.佐渡ヶ島殺人旅情

中町信・青樹社ビッグブックス(used)
元は「佐渡金山殺人事件」。でも、これはをかしいよね。佐渡金山つて言ふけど、佐渡金山付近で死体が見つかるのは1人だし、別に佐渡金山にまつはる連続殺人といふワケでもないので、こつちの題名のはうがいいでせう。えーと、P39で浜岡ゆり子が北本さんとは面識がないのに「すれ違つた」と証言するのはなぜですか?それと写真の話からホテルの入り口にオームの彫像が、と既成事実みたいに展開するのも撹乱の一種でせうか。これは氏家シリーズの第一作なのだが、どうやらここから始まつてるらしいのは氏家早苗の思ひ込みで、どれほどそれが捜査の妨げ、読み手の推理の妨げになつてゐるか、計り知れない。疑問に思ふことがあつても、横からガチャガチャ的外れみたいな意見を言はれて、と言ふか読まされてるうちに、疑問のポイントを見失つてイライラするのだ。上手い設定だね。写真の女だ、といふメッセージも、さう。そこにゐたすべての人ではないことは、慣れると解るので特にダイナミックな展開ではありませんね、中町さん。

2006-08-22

43.吉祥寺探偵局

いしかわじゅん・角川文庫(used)
「ロンドンで会おう」が面白かつたから、つい買つてしまたのだ。やはり、これも漫画だつた。漫画の持つアクロバットがある。羨ましい。棚に2冊あつて、初版のはうを選んだ。別に後で売ることを考へたからではない。初版でなくても高くなる本はあるし、貴重な筈が意外に出回つてることもある。この道に入つて覚えたことだ。

2006-08-20

42.推理作家殺人事件

中町信・立風ノベルズ(used)
男鹿温泉で推理作家が死ぬ。事故死か自殺か殺人か。続けて起こる女性編集者の死。更に推理作家が殺されて、……果たして犯人は誰か。主人公の女性編集者が真犯人に辿り着いたと思つた途端、どんでん返しが待つてゐる。──なんていふ解説はこれまでは省略したけど、たまには書いて見よう。後半に入り、珍しく男女の絡みの場面が出てくる。これまでに読んだ作品にはなかつたと思ふ。いや、なかつた、と断言しよう。なかなかに助平なシーンなのだ。読み終はつて、パラパラめくつてトリックの部分を再確認してたら、第4章が9月12日になつてるんだけど、これは9月13日ぢやないのかなあ。第5章が14日なんだから。

2006-08-13

41.女性編集者殺人事件

中町信・ケイブンシャノベルズ(used)
「殺戮の証明」を全篇にわたり大幅に加筆、削除、訂正したもの、と目次の前に添書きがある。かういふのを何と呼ぶのだらう。改訂版?中町氏の初期の作品にはこれが多い。題名はこつちのはうがいいかも知れないが、殺されるのは女性編集者だけではないし、……かと言つて「殺戮の証明」は相応しくない気がする。いづれにしても、初期作品の中では地味なトリックである。労働争議と絡ませてゐる点が重い雰囲気を作つてゐる。比較的オーソドックスなミステリーではないだらうか。面白かつた。

2006-08-07

40.無茶な人びと

中野翠・文春文庫(used)
中野翠氏の本は図書館で借りて何冊か読んでゐる。メディアに対するコラム、メディアを通した事件についてのコラム以外はお気に入りの芸人(古今亭志ん朝、中村勘九郎、高田文夫、浅草キッドなど)についての話。これまではそれほどでもなかつたが今回は特に、事件をめぐるコラムを読んで、ちよつとした違和感があつた。理解しよう、解釈しよう、位置付けしよう、といふ意思がある。それは事件によつては「なぜか」を強く感じるものもあるが、事件に限らず、発言の影には「解釈しよう」といふスタンスが感じられ、それが或る時は鼻に付いた。具体的に一箇所。P298の終りのはうからP299にかけて、「ことTVとマンガにかんしては私の世代はちゃっかりしてると思う。TVとマンガが一番ういういしく、イキオイがあり、激動していた頃に育った。黄金時代にいたと思う」といふ件。これは小林信彦氏の本で読んで呆れた「ヌーヴェル・バーグ以降の映画しか知らない世代は気の毒だ」(正確に覚えてないが、かういふ意味の発言だつた)と同じだね。特権階級なんだね。志ん生、文楽、円生を知らない世代は可哀相、さう言つてるのと同じだし。誰でも幾らでも言へることで、たぶん世代の差だらう、と片付けてしまはう。氏は団塊の世代らしい。だからかなあ、……。

2006-08-05

39.ロンドンで会おう

いしかわじゅん・角川文庫(used)
これは漫画だ。漫画を軽視してるのではなく、漫画が文章になつてる凄さ。モデル視されてる作家のものは一つも読んだことがない。これは偶然。「東京で会おう」も是非読みたい。

38.昔話にはウラがある

ひろさちや・新潮文庫(used)
ひろさちや。太田のほんだらけの棚で見付け、聞いたことある名前だな、と思つた時は、まどみちおと勘違ひしてたかも知れない。兎に角、表紙がよかつた。山本タカトといふ人の絵で、浦島太郎だと思ふが(海中でカメの背に乗つてるんだから他に考へやうがないだらう!)、実に怪しく美しい。これだけで買つたやうなもの。だから中身は期待してなかつたが、期待しないでよかつた。昔話の自己流の解釈で、興味深い解釈もあるが、概ね妄想と呼んだはうがいい。「アリとキリギリス」は確かに岩波文庫の「イソップ寓話集」にはないけど、仰るやうに「蝉と蟻たち」だけでなく「蟻と甲虫」といふのも参考にして作られたと思ふのです、私は。蛇足ながら。──序でに、どうせ読むなら佐野洋子の「嘘ばつか」(講談社文庫)のはうが桁違ひに面白い。06.08.13