2014-11-27

ドキュメント狭山事件

佐木隆三・文春文庫(×2)。最近、狭山事件に関する展示を見る機会があつた。それで読み返した。購入が1982.10.08、直ぐに読んだと思ふので、実に32年振り。犯人ではないといふ根拠は見つからないけれども、犯人だとする理由も見つからない。ネット上で幾つか興味深いデータも公表されてゐる。脅迫状の筆跡と石川被告の筆跡を比較して似てゐると いふものもある。確かに似てゐる字もある。が、いづれにしても自白によつて発見されたといふ三大物証①カバン②万年筆③腕時計が実に胡散臭い。逮捕後間もなく証言してゐる三人の共犯説、脅迫状は石川被告が書いて実行犯は他の二人だといふ話がなんとなく信憑性があるやうにも思へるのだが。P44、死体発見当時の警察発表にある「犯人は四十〜五十歳くらいで土地の者、被害者と顔見知りの可能性が強い」といふのは、一体どんな根拠があつたのだらう。

2014-11-23

日本語「ぢ」と「じ」の謎

土屋秀宇・光文社知恵の森文庫(×2)。去年の四月に購入し読んで、期待外れだと書いておきながら再読。「ぢ」と「じ」は謎ではないでせう、さういふ風に仮名遣ひで定めたといふことでせう。言葉は変るものだ、と言ふ人がゐる。だから歴史的仮名遣ひに固執するのはをかしい、といふ意味らしいが、それは違ふ。この本にも書いてあるやうに、変つたのではなくて変へたのだ。

2014-11-21

588.ニューサイエンティスト群像

勁草書房・矢沢サイエンス・オフィス編(used)。これはニューサイエンスに関心を持ち始めた頃に館林の図書館の2階で見つけて借りて読んだもので去年(2013)の4月にamazonで古本を購入した。状態はいいのだが図書館の本みたいに透明なカバーが で包まれてゐるのが、ちよつと不思議だ。もともとかういふ装幀の本なのだらうか。いづれにしても読み始めたのは購入後間もなくで、といふことは1年以上かかつたことになる。どうも年ととともに集中力がなくなつてゐるやうで、それが加齢が原因かどうかはわからないけれども全体に体力が落ちてゐるのだらう、根気がない。一気に読めるのはミステリくらゐだ。
この本で形態形成場理論(グリセリンの結晶)や100匹目の猿の話、ガイア仮説、ダブルバインド、散逸構造。1/fのゆらぎ、ホログラフィック・パラダイムなんていふ魅力的な、ワクワクするやうな話を知つたし、なによりバックミンスター・フラーとアンドルー・ワイルを知つたのだ。

2014-11-18

587.るきさん

高野文子・筑摩書房(used)。これは文庫なら新刊があるのだが、どうしても刊行時のサイズで読みたいと思つて敢て中古を買つたのだつた。これはいい、かういふの好きだなあ。作者自身はこの作品が嫌ひなんださうだが。益々、上田としこを連想させるのだが、関連はないんだらうか。 細部が丁寧なので嬉しくなる。お、こんなところまで、といふ発見が楽しい。一通り読んでから、またパラパラと拾い読みをしてゐるうちに、結局最初から最後まで読んでしまつたのだつた。

2014-11-15

586.絶対安全剃刀

高野文子・白泉社。去年の2月末に購入し、漸く読みをへた。買つて直ぐに読み始めたワケではないが、少なくとも半年くらゐは読みかけたまま、ほかの読みかけと一緒に積んでゐたと思ふ。まへに読んだ「棒がいっぽん」と比べると、文芸的といふか、詩的といふか、「ガロ」風の、例へば永島慎二、真崎守とかを連想させるところが、ちよつと引いてしまつた。絵は巧いよねえ。表題作よりも「玄関」がいい。余計な ことで、「いこいの宿」のP147、オジがドアを開ける、引いて開けるのだが、下の次のコマでは押して開けてゐるやうに見える。些細な事で自分でも厭になるが、気になる。

2014-11-09

585.虚ろな十字架

東野圭吾・光文社。知人から借りたもの。代りに中町信の「模倣の殺意」、黒川博行「カウント・プラン」を貸した。ミステリが好きだが、中町信は知らないさうで、東野圭吾のファンだといふので「カウント・プラン」の解説は東野圭吾だつたから。
で、これは殺人者に対する死刑といふ刑罰に就いて書かれた、或は作られた物語である。最初の幼児殺人とその後の謎として扱はれる事件は無関係ではないことが読み進むうちに判るし、プロローグがその辺りを示してゐることも納得できるが、作者に言ひたいことが先づあつて、それがプロローグに続く物語であり、前段に語られる幼児殺人の悲劇は そのために作られた事件に思へてしまふ。これが辛い。といふのは、たかがミステリで、作られた事件だつたとしても、読むはうは感情移入してしまふのだ。作者の意図に気づくと弄ばれた気分になる。