2008-02-24

109.三幕の殺意

中町信・東京創元社
7年振りの新作などとしたり顔で言つても、実は05年の09月に「模倣の殺意」を文庫で初めて読み「こんなの書く人がゐるんだ」(日本にも、と解説を書いてる人たちは口を揃へるが、オレはまだクリスティの「アクロイド殺し」も読んでなかつたので)と驚きの余り蒐集を始めてまだ2年半だから、ずうつとまへから「錯誤のブレーキ」まで順番に読んで来た人みたいに、7年も待たされてはゐないのだ。それでも、もしまだ現役なら新作が読みたいと思つてたから、嬉しかつたね、実物を手にしたときは。さて、その中身は?まさに初期の中町作品だね。連続殺人でないところが、もともとは短いものだつたのかな、と思はせる。雪に閉ざされた山荘の、なんていふのは密室トリックの見本みたいなものらしいが(東野圭吾にそのまんまのタイトル小説がある)、けさ4時近くに目が覚めちまつて、風がやけにうるさいぜ、と外を見たら吹雪いてる。ホントかよ?戸沢とよさんと岡本花江さんの喋りは、この方言は上州弁かい?だらうな。「解説」にある「模倣の殺意」では「捨てトリックの小道具として使われた"ある機能"が」犯人のアリバイを鉄壁にするつて、どういふこと?

2008-02-18

108.アルバイト探偵 調毒師を捜せ

大沢在昌・講談社文庫(used)
続篇。これも一気に読んぢまつた。この親子探偵の設定はホントに面白い。このあとで3つ長篇が書かれてゐるが、このテンポの良さは短篇のはうが楽しいのでは?ドラマにしても面白いかも知れない。第1策のはうが好きだね。今度は「痛快コメディアクション」となつてる。

107.アルバイト探偵

大沢在昌・講談社文庫(used)
一気に全4話読んでしまつた。「新宿鮫」が面白かつたので、他のを読んでみた。私立探偵親子の設定で、それもちよつと怪しいフリがあり、特に親父の涼介は一体何者だいと引つ張る。兎に角テンポが早くていい。「痛快アクションミステリー」と頭についてるけど、正にその通り、充分楽しんだ。「新宿鮫」よりも2年くらゐ前の作品。大沢在昌つて、生まれた年が同じなんだよねえ。

2008-02-16

106.笑犬樓よりの眺望

筒井康隆・新潮文庫(used)
ずゐぶん久し振りだね、筒井康隆を読んだのは。結構何冊も読んでるはずだけど、……近いところで「虚航船団」は読んでなくて、「串刺し教授」は読んだ。「エロチック街道」と「虚人たち」は読んだけど「夢の木坂分岐点」と「歌と饒舌の戦記」は読んでないよなあ。この本の中に出て来る「朝のガスパール」と「パプリカ」は間違ひなく読んでない。暫く空いてしまつたのは、なにも断筆したからではない。これは断筆宣言までの10年間(1984〜1993年まで)に「噂の真相」(読んだことない)といふ雑誌に連載されてゐたもの。マスコミに自浄作用がない、など同じやうなことを考へる人がゐるのを知ると心強いね。ビニール蛙が誰なのか解らなかつたが、ネットでそのまま検索したら解つた。

2008-02-11

105.名探偵コナン コナンからの挑戦状

青山剛昌・小学館(used)
生憎テレビのアニメは見たことがない。番組の前後でチラッと見たり、予告を見たことがある程度。勿論、原作の漫画も読んだことがなかつた。それがこないだ、たまたま車のオイル交換で立ち寄つたオートアールズの待合所にコナンが何冊も並んでゐて、読んだら意外に面白かつたのだ。そのときに読んだのがFile4。この本は事件篇と解決篇の2冊に分かれてゐる。全部で7つの事件があり、どれもなかなかよく出来てゐるが、気になるところもある。ネタバレになつちやふけど、File1椅子のうへから後ろ向きに飛ぶなんて体操選手ですか?逆に蹴る恰好になつて椅子は倒れてしまふでせう。File5将棋の話が予め出てないのはどうでせう。File6包帯を間違へて巻きますかね、それとトイレの順番は違ふんぢやないの?それに流石に人間を投げ下ろしたらドサッとか音がするでせう。便器にでも当たれば大変な音がすると思ふよ。(その後なぜ工藤新一がコナンになつちまつたのか知りたくて、コミックの第一巻をBookOffで買つてしまつた。ははは。)

2008-02-04

104.猿島館の殺人

折原一・光文社文庫(used)
「七つの棺」に登場した黒星警部もの。ポーの「モルグ街の殺人」(読んだことがあるが、よく覚えてゐない)ほか幾つかの作品を下敷きにしてゐるやうだ。パロディなんだとさ。なかなか面白かつたね。同じコンビ(黒星・葉山虹子)で「鬼面村の殺人」(旧題「鬼が来たりてホラを吹く」)が先に書かれてゐるので、そつちも見つけたら買つて置かうか。新本格推理の書き手たちとほぼ同時期に書き始めたと思ふが、あつちはいま一つ乗れない。折原一のほうが好みだな。まへに内田康夫のところで言つたが、これも年代がはつきりしないのだが、現在から遡つて例へば一つの事件がある、なんて場合にはやつぱり漠然とでも現在時を知る記述がほしい、といふ意味で言つたので、これはそんなことは気にならない。