2014-07-19

576.密室の鍵貸します

東川篤哉・光文社文庫。この人の本は最近、中途半端な密室といふ短篇集を読んでゐる。そのまへに、謎解きはディナーの後で、も2冊読んでゐる。ユーモア本格ミステリと呼ばれるさうだ。動機はいま一つだけど、よく作られてゐると思ふ。まへのはうを読み返しながらトリックをお浚ひしたけれども、旨く騙された。

2014-07-17

575.桃太郎

芥川龍之介・Kindle。芥川は岩波の全集を持つてゐた。殆ど読まないまま、金に困つて売つてしまつた。だから、こんな短篇があつたなんてことは知らない。桂三枝、現六代目桂文枝がテレビで桃太郎を演つてゐるのを聞いたことがある。父親が息子に話して聞かせる昔話桃太郎。昔とはいつのことだ、から始まり細かいところをいちいち息子が問ひ質して困らせ、遂には立場が逆転して、桃太郎といふのは実はかういふ話なんだと説いて聞かせると、いつのまにか父親は眠つてゐて、父親なんて罪がないといふオチ。これは桃太郎が実は温厚で平和に暮らす鬼が島へ殴り込み、殺戮、陵辱の果てに宝物を持ち帰るといふ話。小松左京の蜘蛛の糸みたいなものかな。

574.イワンの馬鹿

トルストイ/菊池寛訳・Kindle。坊つちやんを購入したとき、他に2つ(単位は冊ではをかしいだらうし、1つ2つも変だが)購入した。これと芥川龍之介の桃太郎。どつちも一冊分はない。これを累計に入れるのはちと抵抗があるけれども、まあ上下巻もので1冊分で計算してるし、コミックなんかは20冊あつても一作品といて数へてゐるから、Kindleについてはかういふ計算で「よし」としよう。本の場合は今後も一冊の本に含まれる数篇のうちの一篇読んでも読んだことにはしない。
これはiPadを購入して直ぐ、「よみづくえ」といふAppをダウンロードした中に入つてゐたので確か途中までは読んだと思ふ。余計な話だがこの「よみづくえ」は300円だつた。でも殆ど使はなかつたなあ、画面や操作に慣れなくて。
どつちにしても、題名だけ知つてゐて中身を知らない童話、といふより寓話ですかねえ、その一つ。なるほどかういふ話だつたのか。三匹の子豚みたいなものか。以外に長い。

573.坊つちやん

夏目漱石・kindle。ずうつとまへ、高校の頃に読んでゐるので再読扱ひにしようかと思つたが、折角kindleで読んだのだから数に入れる。因みにこれは新潮文庫で持つてゐる。いつ買つたものか書いてないし、いつ読んだのかも書き込んでないが、昭和四十六年九月十日の六十一刷だから、まあ高校時代で間違ひないだらう。しかし、これは同じものだらうか。なんだか短い気がするんだよなあ。話の内容は同じなんぢやないか、と思ふんだけど。一字一句比較するのは面倒だ。文庫の最初と最後の頁とkindleを比べてみたら同じ。文庫のはうは43字×18行で127頁、だから400字詰原稿用紙にすれば≒250枚。kondleは全部でNo.が2503といふ風に表示される。そのうちNo.3からNo.2477までが本文だから中身は差引2474、iPadの横表示だと28字×21行が基本なので、×2474は400字詰で3636.78枚、……をかしい、No.はページ数ではないんだ。なんだこれ?最初から調べるか。例の「親譲りの無鉄砲で」で始まる冒頭の頁を縦で表示し、画面を一度タッチすると下に、No.10/2503・1%と出る。先づこの意味は?行数?でもこの頁は最初の「一」を除いて13行ある。次の頁に移り同じくタッチするとNo.26/2503・2%。この頁は16行。足すと29行だから26つて何?更に次頁No.48/2503・2%。愈々わからん。No.数字が増えてゐるのに%が同じ。
面倒臭いからもうやめるが、これはもともと青空文庫で、無料で購入できる。

2014-07-07

572.硝子のハンマー

貴志祐介・角川文庫。一箇月半振りに漸く一冊読み終へた。あれから、山中恒のあとで吉田健一の単行本未収録のエッセイ集と淀川さんの映画の本がそれぞれ半分くらゐ読んで滞つてしまつた。この硝子のハンマーは淀川さんの本と一緒にWonderGooで買つたものだ。ミステリは犯罪小説でもルポルタージュでもないから、有り得ないやうなトリックで殺人が行はれることがある。このトリックは密室。確かによく考へられたトリックだと思ふ。もともと読みながらトリックを破つてみせるぞ、なんて読み方はしないので、ただ普通の小説と同じやうに読んで行くワケだが、ちよつと違和感があつた。特に後半。後半は犯人サイドからの倒叙形式になるんだけど、この犯人が前半の探偵役の男と間違ふほどよく似た書き方になつてゐること、それと動機を作り過ぎてる感じがした。これでもか、と痛めつける。P509で高校の後輩の女の子が警察か弁護士に相談すればよい、と言ふけれども、正にその通りではないか。逃げるしかない、と思はせる書き方をしてゐるが、先づ警察ではなかつたか。父親の借金を子どもが払ふ義務があるのかどうか、法的なことは知らない。少なくとも生活費以外の借金、つまり遊興費であれば妻であつても支払ふ義務はない、と聞いたことがある。株取引による借金が遊興費と言へるかどうか解らないが、生活費ではないだらう。尤も、警察に相談したら展開はまつたく変つてしまふだらう。それと何度も下調べのためにビルに侵入してるけれども、目的のものが見つかつた時点で盗んでしまへばいいのに。だつて、誰にも不審に思はれずに出入りできたんだから。さうすれば殺人なんかしなくて済むでせう。この密室トリックは殺人のためのトリックなんで、なんか釈然としないものが残る。面白かつたんだよ、一気に読んだくらゐだから。でもねえ、ちよつとそこが引つ掛かる。