2013-09-30

552.553.ヴェロシティ 上下

ディーン・クーンツ/田中一江訳・講談社文庫(used)。なんとも強引な物語に思へる。読み始めはすんなり。が、読み進めるうちに何度も途中で止めようと思つた。最後まで読んだのは、「ストレンジャーズ」と「ライトニング」が面白かつたから、どう展開するのか期待があつた。この2作は感動的だつた。しかし、「ミスター・マーダー」は今ひとつ好きになれなかつたし、……。グロテスクなだけだ。最後のはうでバーバラに僅かに変化があり、希望の兆しは見えるけれども、なぜビリーなのか、動機や殺害方法の具体的な説明などがはつきりしない。意味がわからん。異常者の犯罪に巻き込まれた、といふことか。もう1作上下巻の、これより長いのを買つてしまつたのだが、読まずに棄てちやふかな、と思ふ。

2013-09-20

549〜552.サルチネス 1〜4

古谷実・講談社。遂に新刊で古谷実作品を購入。ずつとusedだつたので、申し訳ないな、と思つてゐたのだ。これまでとはちよつと違ふ。冴えない(と本人が自覚してゐるか、見るからに、と分かれるが)男子がかはいい女子にモテるといふ筋と絡む(殺人を含めた犯罪などの)残酷な世界ではないからだが、古谷作品は好きだな。始まりが実に滑稽でよかつた。

2013-09-19

548.新ナショナルキッド

丸尾末広・青林工藝社(used)。短いものが19篇収録されてゐる。一番長いのが「電気蟻」。絵は巧い。つげ義春と梅図かずおを足したやうなエロ・グロ漫画。頭が潰れたり、内蔵が飛び出したり。克明に細い線で書き込んでゐる。好みが極端に分かれるだらう。あまり好きになれない。コマが追ひにくいので、紙芝居にしたらいいんぢやないか。

2013-09-16

547.三人噺

美濃部美津子・文春文庫。サブ・タイトルが「志ん生・馬生・志ん朝」。志ん生の長女で、馬生、志ん朝の姉。1924年の生まれで存命。Amazonで見て、どうしても読んでみたくなつた。語りを活字にしたもの。両親の話から弟二人の話。この三人の落語をじつくり聞きたい気持ちにさせた。噺家としての精進のため44年間好物の鰻を断つた志ん朝の件りでは、知つてたことだけど、ちよつと貰ひ泣き。

2013-09-08

546.ハツカネズミと人間

スタインベック/大浦暁生訳・新潮文庫。新潮文庫は久しぶりな気がする。昔は岩波、新潮、角川くらゐしかなかつたから。とても時間がかかつた、僅か140頁の本なのに。途中で何となく予想がつく悲しい結末。真夜中のカーボーイもさうだし、アメリカ映画にはこの本に近いものがあるね。誰一人、救はれない物語だつた。カーリーの奥さんだつて夢があつたし、キャンディ爺さんにも、黒人のクルックスにも、勿論レニーとジョージにも。

2013-09-04

545.しのぶセンセにサヨナラ

東野圭吾・講談社文庫。これも娘の本。買うたままで読んどらん本かて仰山あるし、読みさしかてあるねんで、なんで娘の本読まなあかんねん、と(怪しい大阪弁擬きで)ぼやきつつ、続きがあるなら読まずにはゐられない。6篇収録。ミステリとしても面白いけれども、会話が更に磨きがかかり吹き出してしまふほどだ。もつともつと続きが読みたいけれども、あとがきに「作者自身が、この世界に留まっていられなくなった」のだから我慢するしかない。解説にもあるが、しのぶセンセと新藤刑事、本間義彦の関係はどうなるのかとても気になるところだ。