2007-11-26

90.西瓜糖の日々

リチャード・ブローティガン/藤本和子・河出文庫
「アメリカの鱒釣り」が滞つてしまつたので、こつちから読むことにした。読みをはつたのは一昨日。西瓜糖とはなにか。なんの象徴か、意図はなにか、言葉の再定義を迫つてゐるのか、と考へて込んでしまふと「鱒釣り」の二の舞だ。そこで不明なものはそのままに、解らないことはそのままにして先へ行かう、みたいな気分で読み進めることにした。さうしたら、ますむらひろしのアニメ(原作は宮澤賢治だけど)「銀河鉄道の夜」みたいに、或はムーミンみたいにこの世界を見ればいいんぢやねえの?と気づいたらスラスラと読めてしまつた。自分を含めた身のまはりにゐる人間として登場人物を捉へなくたつていいワケだ、と、まあ、ひらきなほつたやうなもんだ。動物だつて、いい。さうすりや、目のまへで自分の親を食べてゐる虎とも話が出来るだらう。──さう、結構面白く読むことができた。ただまあ、西瓜糖の世界で暮らす、といふことの意味は呑み込めないけどね。ヒッピーとかフラワーチルドレンとか、ジェーファーソン・エアプレインとか、サイケデリックとか、流行は繰り返すから。

2007-11-16

89.野獣死すべし

ニコラス・ブレイク/永井淳訳・ハヤカワ文庫
同じ題名の大藪春彦のはうは読んだことがある。内容はあまり覚えてないが、伊達邦彦とかといふ主人公だつたかな。面白かつたから、続けて何冊か大藪春彦を読んだのだ。1938年に書かれたものだから、当然こつちのはうが先。この題名は江戸川乱歩が付けたものだ、と解説で植草甚一が言つてるけど、大藪春彦も江戸川乱歩とかかはりがあるんぢやなかつたかな。それは兎も角、ニコラス・ブレイクはペンネームでセシル・デイ=ルイスといふのが本名で、詩人でもある。俳優のダニエル・デイ=ルイスは息子だとwikipediaには出てたけど、顔が思ひうかばない。この「デイ」のところを「デル」、「デル=ルイス」と、どうも読んでしまふんだな。理由は解らない。ブレイクについては植草甚一の「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」の中で、ちやうどシムノンについて書いてあるところの少しまへで触れてゐる。この「雨降り」には実は珍しく(線を引くことも滅多にしないし、書き込みも殆どしないで読むタチなのだが)幾つも付箋が貼つてある。こんど、この本についてhiko7 newsで書いてみよう。話が逸れてしまつた。……大筋で言ふと、息子を交通事故で失つた父親フィリクス・レインが復讐するといふ話なのだが、第一部が「フィリクス・レインの日記」になつてゐて、これが入り難かつた。何度か読み始めたけど、乗れなかつた。今回は20頁くらゐ、スイスイと読めて、それからは一気だつた。ミステリーだから、とかトリック云々なんて考へないで素直に読んでも充分面白く読める。具体的には挙げられないが、凝つた表現や、人物の言ひまはしなども面白かつた。

2007-11-01

88.秘書室の殺人

中町信・徳間文庫(used)
こないだ渋川のBookOffで買つてしまつたのだ。迷つたんだけどね。酔ひどれ文さんシリーズの三作目。一つ一つを見てるとさうでもないが、探偵役は同じ会社に勤めてゐるので、そこで何度も殺人事件があるわけですからね。連続殺人が三回もある会社なんて、……。このシリーズはこれで全部読んだことになる。