2016-02-23

642.続・一日一生

酒井放哉・朝日新書。けふ買つて一気に読んだ。アピタの本屋に行つたら置いてなくて、WonderGooで見つけた。ほんとに普通のことしか言つてないんだけど、滲みる。大阿闍梨の言葉だから、といふのも勿論あるけど。まへの「一日一生」は2009年の1月から、2010年、2011年、2012年、2015年の1月に合計5回読んでゐる。これも繰り返し読むことになるだらう。

2016-02-15

641.夜の床屋

沢村浩輔・創元推理文庫(used)。これは面白い。偶然見つけたのだが、あの、東川篤哉を思ひ出した。短篇集なのに全体が一つの謎を作つてゐるといふ面白い仕掛け。仕掛けの出来上がりは兎も角、楽しめた。

2016-02-06

640.隠蔽捜査

今野敏・新潮文庫(used)。警察小説が好きで、この本の名前と作者名は知つてゐた。いつか機会があれば読みたいと思つてゐたところ、朝倉のブックオフで見つけた。確かテレビドラマになつてゐて、番組そのものは見たことがないけれども新聞のテレビ欄で見た覚えがある。警察庁のキャリアの話。主人公の竜崎はなんとも変はつた男だ。周りにゐたら、ちよつと傍迷惑だらう。読み易いのだが、なんだかスカスカな印象がある。警察官による連続殺人事件の発表をまへにして伊丹のマンションでの竜崎とのやりとりも、緊迫した場面なのは伝はるが、なにか物足りない。続篇が幾つか書かれてゐるのて、また見つけたら買ふかもしれないなあ。

2016-02-02

639.一夢庵風流記

隆慶一郎・新潮文庫(used)。こんなに読み始めるのに時間が掛かるとは思はなかつた。去年の4月に購入し、最初の50頁くらゐで頓挫。名前が読めない、覚えられない。誰が誰か判らない、人物の関はりが判然としない、年齢が判らない、など、先へ進まない。なので暫く目に付かない処に仕舞つてゐた。幾つか読みかけの本(フランドルの冬だのマルーシの巨像だの、後藤明生の雨月物語だの、グレアム・グリーンの見えない日本の紳士たちといふ短篇集だの、いしかわじゅん漫画ノート、ムーンライダーズ・ブックだの)を引つ張り出したが読み続ける気力といふか、かう気持ちが入つて行かない、気が散つてる感じで無理。そこでただ活字を追ふ、意味なんか判らなくてもいいから、といふつもりで、なるべく厚い本がいいので、これを読み始めた。そしたら、今度はどんどん、ずんずん読めた。理解しよう、とか、判らう、といふやうな助平根性があると本は読めないんだなあ、と改めて勉強しました。
漫画でも花の慶次といふ名前で知られてゐるやうで、生憎そつちは読んだことがないけれども、ずゐぶん若く書いてあるのはネット上でその絵を見たことがあるからだが、調べた限りでは前田慶次郎利益は1532年又は1533年から1541年の生まれとなつてゐて、これは没年がはつきりしないのでなんとも言へないが、慶長17(1612)年に73歳で没したといふ説を一応基準にすると、昔のことだから数へ年なのだらうから72歳だつたとして、1540年の生まれになる。それでこの小説の主な舞台となる年代はと言ふと、P18の天正15(1587)年8月の養父前田利久の死を始まりと考へれば、このとき前田慶次郎は37歳。漫画とはだいぶイメージが変る。読んでると前田利家はもつとずつと年上みたいに感じるが1538年の生まれらしいから2歳年上でしかない。前田まつは1547生まれで慶次郎より7歳下になる。
いづれにしても、下の我孫子武丸の処で書いたけど、かういふ些細なこと、何時に警察に通報したか、とか、季節はいつなのか、とか、主人公は何歳なのか、といふ単純で簡単なことを曖昧にしてゐる小説は好ましくないんだよなあ、意図的に知らせず話を進める意味がないでせう、読んでるうちにだんだんいろんなことが判つて来るといふ面白さもあるけどさあ。
それと時代小説つて、どうしてかう講談みたいに見て来たやうなことを平気で書けるのかねえ。史実として残つてゐるものもあるだらうけど、それにしたつて誰が誰とがいつどんな会話をしたかまで具体的なことは残つてないでせうに。それが時代小説の醍醐味なんでせうが。