2012-12-26

古谷実「ヒメアノ〜ル」1〜6講談社ヤンマガKC(509〜514・used)。これも最終巻がなかなか手に入らなくて半年以上お預けだつた。後半ハラハラドキドキしながら、どうか岡田君とユカちやんが森田から無事でゐてほしいと祈りつつ読んだ。いま一番推しの漫画家だな。ヒミズ以降しか読んでないけど。ヒメアノールの意味はヒメトカゲといふ体長10センチくらいの小型爬虫類のことださうです。

2012-12-21

小泉喜美子「弁護側の証人」集英社文庫(508・used)題名に釣られて買つてしまつた。クリスティのは「検察側の証人」で、当然、この作者はそれを念頭に題名を決めたのだらう。見事なドンデン返し。勝手にこつちがさう思ひ込んでゐただけなのに、最後の章を読み始めて、やられた、と思つた。改めて序章をひつくり返すまでもなかつた。さう、そんな風に、こつちが勝手に思ひ込んだだけなのだ。これがオール読物ミステリ新人賞で入選しなかつたといふんだからねえ。P.D.ジェイムズの「女には向かない職業」の訳者でもある。

2012-12-17

業田良家「新・自虐の詩 ロボット小雪」竹書房(507・used)東砂原後のBookOffで偶然見つけた。usedで550円。定価は1,000円。状態もいいので、迷ふことなく購入。ロボット小雪が心を持ち、人を助ける話。そんな単純なものではないが、源さんのシリーズみたいに童話的なところがある。
ヒラリー・ウォー/法村里絵訳「冷えきった週末」創元推理文庫(506・used)ウォーにはフェローズ署長シリーズといふのがあつて、これもその一つ。閏年の2月29日に開かれたパーティの翌朝、女の死体が見つかる。またパーティに出てゐた金持ちの男が失踪してゐることが解る。なぜ女は殺され、男は失踪したのか。フェローズ署長とその部下ウィルクスが一つ一つ謎を解いて行く。原題はend of a party。そつちのはうが相応しい気がする。フェローズ署長はややホームズ風で、好みが分かれるだらう。

2012-12-12

黒川博行「海の稜線」創元推理文庫(505)だいぶまへにbookoffで105円で見掛けたことがあつた。その頃はまだ黒川博行の初心者だつたから、海難事故云々やブンと総長といふコンビ名も厳ついし敬遠した記憶がある。続けて警察小説を読んで来て、このブンと総長のシリーズをどうしても読んで置きたいと思ひamazonで購入。高速道路での自動車爆発事故から始まる。身元不明の被害者を探すうちに一つの海難事故との関連が浮かび上がる。それが偽装の海難事故ではないかといふ疑惑から事件が解明されて行く。相変はらず黒川博行は誰も余り取り上げない分野(今回は海運業界)を舞台にして手際よく本格ミステリに仕上げてくれる。どれを読んでも外れがない。オレは大阪府警シリーズが好きだけど。この後でブンは総長の娘と結婚するのだが、そつち(「ドアの向こうに」)を先に読んでしまつた。

2012-12-07

樋口有介「ピース」中公文庫(504・used)前橋出身の人といふことで名前は知つてゐた。始めて読んだ。実に巧みな文章で、説明する文章は少なく、会話の中で登場人物が浮かんで来る。連続殺人がなぜ起きたのか、そこのところが今ひとつ納得できない。読み応へは充分なのだが。→読み終へて改めて表紙を見るとピースといふ言葉から受ける印象も複雑だ。子どもたちが無邪気にピースサインを出してゐる。しかし、それで本当に連続殺人が起こつたとしたら、事故の遺族の方々は耐へられないだらう。どんなに不謹慎だつたとしても、所詮子どもがやつたことでせう。なんども言ふけど、アルフレッド・ジャリの事故とカメラマンといふ一文に尽きる。マスコミのかかはりかたにこそ問題がある。(2012.12.14追記)これからは後から記入したときは、こんな風に(自分でも)解るやうにしよう。遡るのが面倒だけど、暇を見つけては直して行かうと思ふ。

2012-12-05

横山秀夫「陰の季節」文春文庫(503・used)これも警察小説の一つ。但し、警察内部の、直接捜査をしない部署を扱つてゐる点で新しい。殺人だけがミステリぢやない。そんなことは当り前なんだけど。謎があつて、謎を解く、その過程の面白さは充分ある。天下りの部署にしがみ付く元幹部はなぜ居座らうとするのか。これが「陰の季節」といふ短篇で、これで松本清張賞を受賞してゐる。兎に角、文章が気になる。馴染めない言ひまはしがあちこちにあるのだ。そこのところを書きたいが、なら自分で書いてみろ、と言はれさうなのでいまは触れない。→やつぱり気になつて仕方がないので書いてしまはう。取り敢へず「陰の季節」の冒頭3行。そのまま引用する(著作権に引つ掛かるかな)。
春も間近の風音も、この部屋までは聞こえてこない。窓は閉め切られ、隙間なく引かれたカーテンにも厚みがある。空調は働いているようだが、耳障りな音の割りに効いていないことは、ここで半時もパソコンを叩いていればわかる。」
先づ書き出しの「春も間近の風音」の意味が解らなかつた。春を知らせる風の音といふことかな、と気づいたのは全部読み終はつてから。続く「隙間なく引かれたカーテンにも厚みがある。」なら、カーテンの素材や色を書けばいいのではないか。或は、厚手の黒い(例へば)天鵞絨のカーテンが隙間なく引かれてゐる、ではダメなのか。最後の「耳障りな音」で空調が働いてゐることは半時以上そこにゐる人物には充分解つてゐるのになぜ断定しないで「空調は働いているようだが」と曖昧にするのか。
その数行後で、D県警本部の警務課別室を警務課員以外の警察署員は「人事部屋」と揶揄する、と書かれてゐるんだけど、それが揶揄してる呼び方とは受け取れない。警察内ではさうなのか。もつと他にもあるんだけど、長くなるので止めるが、「馬鹿殿よろしく大抜擢を乱発する本部長が」の馬鹿殿つて、志村けんの馬鹿殿のことかと思つてしまつたが、この例へが必要だらうか。(2012.12.31)

2012-12-04

山本英夫「ホムンクルス」1〜15小学館ビッグコミックス(502・used)これも全巻揃ふまでに時間がかかつた。2年くらゐかかつてゐると思ふ。途中まで、8巻までは直ぐに手に入つたので読んでゐた。頭蓋骨に穴を開けると普通の人間が異形の人物が見える。それをホムンクルスと呼ぶ。実はそれは自分の姿が投影されてさう見えるらしい。ホームレスになりきれない名越といふ、整形し、かつての自分から逃れた男と医者の卵、伊藤との絡みも面白いが、後半名越が自分探しをエスカレートさせる展開も面白い。もう一度読まうと思ふ。

2012-12-02

ヒラリー・ウオー/沢万里子訳「愚か者の祈り」創元推理文庫(501・used)状態はかなり良い。新刊並み。内容もこつちのはうがよく出来てゐる思ふ。1954年の作で、「失踪当時の服装は」の次に発表されたもの。ダナハー警部とマロイ刑事がコンビニなつて、被害者が誰か、誰になぜ殺されたのかを地道に調べて事件を解決する。マロイ刑事が被害者の頭蓋骨から顔を復元するのだが、これが納得できるかどうかで評価は分かれてしまふだらう。1947年起きた未解決のブラック・ダリア事件をベースにしてゐると思はれる。ダナハー警部の喋りはフロスト警部を思ひ出させる。