2016-12-27

9割の病気は自分で治せる

岡本裕・中経の文庫(×2)。9月以降、あまり本を読んでゐない。いまも新たに本を読み始める気になかなかならない。それで自分の病気のことに多少関係する本をペラペラとめくることが多い。これもその一つで、到頭最初から最後まで読んでしまつた。P133「西洋医学が主流の日本では、手術や抗がん剤治療などの初期治療のあとは、基本的に放置するのみです。」つまり、手詰まり。いま仮に他の抗癌剤に替へても効果がなければ、それで終りといふことだ。気が滅入る話ばかりだ。

2016-11-08

680.江戸はスゴイ

堀口茉純・PHP新書。時間潰しにTSUTAYAをウロウロしてゐて見付け、まあ1日あれば読み切つてしまふだらう、と高く括つて買つたが、仕事で時間が取れず漸くけふ凡そ10日振りに読みをへた。図版がたくさんあるし、明治以降の江戸時代はヒドイ時代だつた、といふデマから自由に書いてあるので面白かつた。著者は女優で史上最年少で江戸文化歴史検定一級を取得してゐるさうだが、まつたく知らなかつた。

2016-10-20

679.清水町先生

小沼丹・ちくま文庫。副題に「井伏鱒二氏のこと」とある。これは去年復刻された文庫である。井伏鱒二について書いたものが殆どだが、太宰治に触れたものもある。その中で太宰はこんなことを言つた、と書いてある。「芥川龍之介の自殺を、独身のとき、自分は無礼なことだと思つてゐた。妻子を残して勝手に死ぬとは無責任極まると思つてゐた。しかし、自分が結婚して子供も出来てみると、却つて安心して死ねる気がして来た。芥川の自殺を肯定出来るやうな気がして来た」と。妻子を残して勝手に死ぬとは無責任だ、までは普通。そのあとが違ふなあ。昔、NHKの番組で見てVHSに録画もした井伏氏の飄々とした雰囲気はここにもたくさん出てくる。読み返さうかなあ。VHSが見たいなあ。

2016-09-15

678.刑事長(デカチョウ)


姉小路 裕・講談社文庫(used)。僅か300頁のミステリなのに読むのに時間がかかつた。先を読みたいといふ気持ちにならない。現在の警察機構に対する批判が随所に書き込まれてゐて、それがちよつと五月蝿いといふか、くどい。作者の批判はよく解る。が、そのせゐで話がよく見えない。半分、第五章まで読むのに半月近くかかつてしまつた。読みをへてみると、なかなかの読み応へではあつたが、岩切がちよつと極端な気がして鼻白むところもある。デレビの時代劇みたいだな、と。
続篇があるやうなので、Book Offで見かけたら買つて読むかもしれない。

2016-09-03

677.あずまんが大王 2年生

あずまきよひこ・小学館(used)。「あずまんが大王」といふ一冊本かと思つてゐたら、「2年生」があつた。「榊」さんはカッコいいね。「大阪」と「とも」ちやんは笑はせてくれるし、飛び級して高校生になる「ちよ」ちやんなんてホントにゐるのかね。眼鏡をかけた「よみ」が常識線でせうかね。いづれにしても担任の「谷崎ゆかり」先生の言動には適はない。今回「黒沢」先生のクラスから「神楽」といふ、大阪、ともに近い子が加はつた。「3年生」を見つけたら、手に入れたい。いまでも寝るまへに拾ひ読みしてゐて笑つてしまふ。女子高生を主な主人公にして、健康的な青春もののギャグ漫画です。

2016-08-24

657〜676.日本一の男の魂 1〜19

喜国雅彦・小学館(used)。1巻を買つて読んだのは、七、八年まへぢやないだらうか。十年はたつてないと思ふが、ずつと手に入らなかつた18巻を漸く購入し読んだ。相変はらずの下ネタ。スパイのシリーズとか、くだらなくて笑へるものばかり。ルーズ・ソックスの女子高生といふ、時代を感じるねえ。

2016-08-07

656.いなか、の、じけん

夢野久作・Kindle。Kindleだけど実は青空文庫なので、もともと無料なのでせう。もしかしたら、hiko8さんは本を持つてるかもしれない。なにを読んだのか忘れたが、夢野久作は読んだことがある。あの、独特の饒舌体で書かれたものではないが、カタカナが意外なところで使はれてゐて、やつぱり夢野久作だなあ、と思つた。最後に「備考」があつて、実際に新聞記事になつてゐたものを書いたことになつてゐるが、どうなんだらう。短い奇妙な話を幾つか集めたもの。大正時代を感じるんだけど、的外れかも。推理小説が探偵小説と呼ばれてゐた時代、江戸川乱歩の時代、かな。

2016-08-06

ジガ蜂

島木健作。漸く読みをへた。3篇収録されてゐる短篇の中でも一番短いものである。ジガ蜂の細かい観察に驚く。また実にこの蜂が美しく見える。「黒猫」「赤蛙」「ジガ蜂」の3篇は後ろの年譜で見ると昭和19年、短篇集の補充のために書き下ろしたものと書いてある。ほかに「蒲団」「むかで」があるやうだ。みなさんご存知とは思ふが、島木健作はペンネームで、本名は朝倉菊雄といふ。島木健作は翌20年8月17日42歳で没してゐる。ずつと肺結核だつたやうで、農民運動に加はり投獄、転向、入退院。敗戦の報を受け、「これからやり直しだ」と語り、死んで行つたといふ。ちよつと自分を重ねてしまふ。
織田作之助の「木の都」の読み返しは後でいいや。

2016-07-15

赤蛙

島木健作。さうさう、序でに書いておくと、まへに読んだ「黒猫」の中にかういふ場面がある(P316下段)。捕まへた黒猫をどうするか、「私」と「その妻」の会話。「お母さんはどうするつもりなんだ?」「無論殺すつもりでせう。若いものは見るものではないといつて、わたしを寄せつけないやうになさるんです。」いま、かういふ話し方の出来る女の人がゐるだらうかといふ話ではない。猫を殺すところを、猫ら限らないかも知れないが、昔は殺生をするとき、若いもの、特に女の人には見せない、さういふ仕来り、風潮があつたんだなあ、と思つた。なぜか。それは知りません。
で、この「赤蛙」。志賀直哉の短篇みたいな感じがした。「城の崎にて」がこんな感じの短篇ではなかつたか。手元にないし、調べるのも億劫なので、そのままにする。
修善寺へ療養がてら出掛けるが、一人客なので悪い部屋を当てられる。不機嫌になつて散歩に出る。桂川の所で休んでゐると頻りに川を渡らうとしては失敗してゐる赤蛙を見つける。蛙は本能的に、もつと楽に渡れるコースが解るはずなのに、敢てその難しいコースに挑んでゐるのではないか。軈て力尽きて流されて行く蛙を見て、力の限り戦ひ最後に運命を受け入れた姿に「私」は打たれる。そして自然界の神秘、宇宙といふものを考へる。
なかなか面白い短篇だつた。もう一つ、やはり短いもので「ジガ蜂」といふのがあるので、それも読んでみよう。

2016-07-05

655.人生の自由時間

藤本義一・岩波書店(used)。ほぼ新品のやうな状態だつたので驚いた。定年になつて、どうするか、なんてことに関心があつたので買つたのだつた。「あとがき」の中にかうある。「時間を自分で管理して、その時間の中に自分を置く」ことができるのが「定年後だと思う」と。「時間に追いかけられる自分」から「時間を追いかける自分を確かめる」とも。前回書き忘れたが、氏が11PMの司会をしてゐた頃、広瀬隆に原発の危険性について話を聞いたときのことが書いてあつた(「無条件幸福論」P169〜)。広瀬隆が原発の危険性を縷々述べ始めるとディレクターから「広瀬の顔を映すな」とか「原発の話題を打ち切れ」といふ指示が出たさうだ。しかし、氏は断固拒否して最後まで番組を続けたといふ。電力会社はテレビにとつて有力なスポンサーであり、スポンサーに不都合な事実は避けるといふ、いまも続くテレビや新聞などのマス・メディアの体質がよく出てゐるし、それを拒否した藤本義一の姿勢に共感する。福島原発の事故は天災ではなく人災であり、想定外などといふ言葉では済まされないと憤ることにも共感する。バランスの取れた感覚の人だつたんだなあ、と改めて思ふ。

2016-06-28

654.無条件幸福論

藤本義一・ベスト新書。タイトルが面白さうだつたのでamazonで購入。オレたちの年代だと11PMの司会者といふ印象が先づ、ある。で、小説家で映画の脚本も書いてゐて、「幕末太陽伝」の監督川島雄三に私淑してゐる、といふくらゐの知識。実際の小説は申し訳ないが読んだことがない。だつて、本屋に藤本義一の本はないでせう。
自己紹介みたいな自伝の部分と絡めて幸福とは何かに就いて書かれたもの。定年後、働いてないといふ後ろめたさがあつて、つい、かういふ本を買つてしまふ。気がつくと、休んでゐるつもりが、遊んでゐるに掏り替はる自意識の過剰さ。これぢやあ、ちつとも自分のやりたいことをやる、なんて出来ないよ。まはりの目が気になるうちは無理だ。

2016-06-26

653.軟弱者の言い分

小谷野敦・晶文社(used)。これは作者名だけは知つてた。amazonのレビューで何度か見掛けて、wikiで調べたことがある。どこかの大学の教授だか助教授だか助手だかの肩書きだつたかなあ。違つた、現在明大の講師つて書いてある。雑な印象では反蓮實重彦みたいな発言だつたと思ふので記憶してゐる。
最近、三島賞を受賞して、これは傑作ぢやない、とかワケの解らねえことを言つてる蓮實重彦つて年寄りがゐる。候補を辞退すりやいいだろ、と思ふんだけど、サルトルだつてノーベル賞候補辞退したろ。なにもサルトルと比べなくたつていいんだけどさ。この人がどうも好きになれなくて、顔が先づダメで、何冊か館林の図書館で借りて読んだことがあるんだけど、言つてることがよく解らない。序でに言ふと柄谷行人つて人もよく解んねえんだけと。何言つてるか。
まあ、いいや。これはエッセイで、BookOffで物色してたら見つけて、パラパラめくつてたら金井美恵子に就いての一文があつたので立ち読みしようかと思つたけど、108円なんで、買つた。ほぼ斜め読み。覚えてることの中で、あれ、と思つたことを書く。
筆者は吉村昭を尊敬してるさうだ(P264)。で、吉村氏は小説家志望だつたが、敢へて新人賞に応募せず同人誌に書いて来た人だ、と(P59)。氏の「私の文学漂流」を元にさう書いてゐるやうだが、念のためこの本の一応最初から最後まで、吉村昭に関する文章を探して調べたけど、どうも本当にさう思つてゐるらしい。
と言ふのも、オレの記憶では吉村昭は確か太宰治賞を取つてデビューした人だと思つてゐたからだ。ちよつと自信がなかつたので確認したけど、やつぱり「星への旅」で1966年第2回の受賞である。佳作が加賀乙彦。第3回が金井美恵子だ。なんでこんな簡単な間違ひをするんだらう。尊敬してるなら、尚更だ。

黒猫

島木健作の短篇。筑摩書房の日本文学全集44巻「武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」収録。筑摩書房からは判型の違ふ日本文学全集が出てゐるが、これは四六版と呼ばれる普通の単行本のサイズで黒塗りの装幀。この全集が高校のとき図書館にあつて、借りては見るが読む気にならないで、いろんな人の巻を借りて来ては返却してゐた。何度も借りては読まずに(精々短篇一篇くらゐしか読まないで)返してゐたものとして記憶にあるのが幾つかあつて、これはその一つ。因みに他には29巻「宇野浩二・葛西善蔵・牧野信一集」(ここに入つてる葛西善蔵の「哀しき父」が好きなのだ)、35巻「梶井基次郎・堀辰雄・中島敦集」(堀辰雄の「美しい村」はこれで読んだので、最後の「坂の途中で倒れた女の子が花ざかりの灌木のやうに見えた」といふ場面が記憶にあつて、解説が吉田健一なのだつた)、51巻「永井龍男・田宮虎彦・梅崎春生集」(永井龍男の「黒い御飯」と「蜜柑」「一個」を読んだ覚えがある)と揃へてしまつた。装幀とか手に持つた感じが好きだつたし、仮名遣ひだけは原本通りなのが。どれも税別100円だつた。で、この巻では織田作之助の「木の都」といふ短いのだけ読んでゐた。
23日にコインランドリーで洗濯物を乾燥させてるあひだに読まう、と、なんとなく思ひ立つて本棚から出したのだ。不意にさう思つて、これもなぜか島木健作の「黒猫」を読むことにした。
30分乾燥をまはして、後で考へると20分でも充分だつたなと思つたけど、20分まはしたときに一度靴下の先が湿つてゐたことがあつて、ほぐして入れるんだけど、たまにさういふことがあると勿体ないとは思ひつつ余計にまはしてしまふのだ。
ちやうど25分くらゐで読み終はつた。樺太オホヤマネコの話から近所の野良猫の話になる。家に入り込むやうになつた黒い猫との顛末だけなんだけど、面白いなあ、と思つた。
いま島木健作なんて言つても本屋に本がないよね。尤も、上に挙げた著者名で本屋で見掛けるのは恐らく梶井基次郎くらゐだらう。堀辰雄も、ないな。島木健作はたぶん学校で国語の授業で名前が出るんぢやないだらうか。プロレタリア文学とかなんとか。「生活の探求」はベストセラーになつたさうだし。「生活の探求」も勿論収録されてる。でも読む気にはならない、いつかね、と思つてるけど。

2016-06-19

652.日本は悪くない 悪いのはアメリカだ

下村治・文春文庫。けふamazonから届いて一気読み。仕事してないと、かういふことが出来る。しかし、経済には疎い(ほかにも疎いものはたくさんあるが)ので、もう一度ゆつくり読まうと思ふ。これも失業してるからこそ。解説の中で宇沢弘文氏の名前が出て来るが、オレは館林の三の丸芸術ホールにゐた頃に、氏の講演会を聞いたことがある。嗜好品に対する課税率を下げるのはをかしいと言つてゐたことが記憶にある。当時、ノーベル賞級の経済学者で次期東大の学長だとも。で、館林の元宇沢整形外科のお兄さんでした。この本に就いてはもう一度読んでから書きます。

2016-06-06

651. 交換殺人には向かない夜

東川篤哉・光文社文庫(used)。「完全犯罪に猫は何匹必要か?」と一緒に買つたもので、続けて読んだ。「猫」のはうはいま一つだつたが、これは面白い。すつかり騙された。プロローグとエピローグがあり、人物名で章立てがしてあつたり、あれ、もしかしたら、これは中町信か、と薄々は感じてゐたのだが。劇場型と呼ぶのかね、解決部分での、謎解き早変はりは苦手だなあ。オペラとかミュージカルみたいでせう。でも、これは烏賊川市もの、鵜飼杜夫・戸村流平シリーズでは一番気に入つた。この次にもう一冊「ここに死体を捨てないでください!」といふのがあるらしい。

2016-06-04

650.完全犯罪に猫は何匹必要か?

東川篤哉・光文社文庫(used)。400頁を超える長さで、ちと疲れたね。うろ覚えで言ふのだが、このまへの「密室に向かって撃て!」に舞台設定が似てるやうな気がする。東屋で起こる殺人とビニールハウスで起こる殺人を別の建物、或は周辺から目撃する。猫がポイントになつてゐるのだが、強引な感じもした。笑ひも悪巫山戯のやうに取れるところもあつて、別に悪巫山戯は嫌ひぢやないし、ダメだとも思はないけど、気になつた。

2016-05-23

649.叶えられた祈り

トルーマン・カポーティ/川本三郎訳・新潮文庫。読み終へるのに、かなり時間が掛かつた。頁数にして270頁。普通なら三日、時間がなくて少しつづでも一週間もあれば読める長さだ。それが4月の上旬、定年になつて直ぐ読み始めて凡そ一箇月半。60歳になる直前に亡くなつたカポーティの最後の本。面白いところもあるが、概ね退屈だつた。未完成なまま中断した作品なので、どこがどう繫がつて行くのか解らないといふこともあるだらう。三つの章から出来てゐるが、「カメレオンのための音楽」の中の「モハーベ砂漠」も始めはこの「叶えられた祈り」の第二章として書かれたものだといふ。それはまだ読んだことがないので、いづれ機会があつたら読むことにしよう。
1999年の12月に刊行されたので、もしかすると大泉の図書館で単行本を借りて読んでゐるかもしれないと思ひつつ読んだけど、勘違ひかもしれない。
「遠い声遠い部屋」は内容は殆ど覚えてゐないけど、読んだ後の印象がずつと尾を引いてゐる(古い文庫は活字が小さいのと日に焼けて文字が薄くなつたので2014年の12月にこの本と一緒に買ひ足したくらゐだ)し、「ティファニーで朝食を」も「冷血」も、いつかもう一度読みたい本として残してある。作品数が少ないので、けして無理な話ではないだらう。

2016-05-20

648.光る砂

佐野洋・講談社文庫(used)。2013年に亡くなつた佐野洋の連作短篇集。新興住宅地のタウン誌編集部を舞台にしてゐる。気楽に読めてミステリとしても充分に面白い。かういふ小説を書く人はいまゐるんだらうか。ユーモア・ミステリを書く人はゐるけど、思ひ浮かばない。内容には触れないが、余計な知識なんて要らない。ただ読めばいいんです、そのはうが面白く読める。

2016-05-18

九つの殺人メルヘン

鯨統一郎・光文社文庫(×2)。失くしたと思つてゐたら、棚を整理してゐて見つけて読み始めたら最後まで読んでしまつた。2007年3月に読んでゐる。思はず吹き出したり、にやりとする会話のやり取りが面白い。第六話、P229「千賀かほるの娘が将来、宇多田ヒカルになるなんて夢みたいだね」と書いてあるんで、藤圭子だろ、と思ふと、そのあとで地の文に「夢だよ」つて書いてある。それが間違つてるよ、なのか確かにね、なのか判断できない。普通に読むと後者なんだけど。始めに枕の如きものが九話凡てにあり、酒の蘊蓄だけでなく、そこでの会話に出て来る映画やテレビ番組、テレビ・コマーシャルからCMソング、歌謡曲など世代が近いので懐かしい。最後の第九話の冒頭、「僕」と入れ替り店を出て行く天才歴史学者の美女は氏のデビュー作「邪馬台国はどこですか?」の早乙女静香なのだらう。直接内容とは関係ないので意味不明。この話での桜井さんの推理は強引なんだけど、どうもそれが当たつてゐたといふのが、ちよつと興醒め。P359の九つ目の殺人事件は「悪い僕を抹殺してくれた」といふ、この「僕」は妙に子どもつぽい、厄年なんだけど。

2016-05-16

647.刑事の墓場

首藤瓜於・講談社文庫(used)。なかなか面白かつた。作者の名前は知つてゐた。珍しい名前で、苗字は兎も角、瓜於が本名かどうか知らないが、江戸川乱歩賞を受賞した「脳男」といふのを本屋で文庫を見たことがある。カバーの絵が気味が悪く、土屋隆夫の「影の告発」に迫るものがあつて、見送り。
これは刑事物で、基本的に警察小説、刑事物は好きなので購入。一気に読んだ。刑事の墓場と呼ばれる動坂署が舞台。この動坂署が始め愛宕市にあるのかと思つてゐたら、そこから電車で少し離れた吉備津市にあるのだつた。愛宕といふ地名が出て来るのだが、これは「おたぎ」と読む。どうも架空の地名らしいのでどう読んでも構はないのだらうが、ちつとも覚えられなくて、出て来る度に「あたご」と読んでしまひ、あれ、違ふんだ、なんだつけと最初にフリガナがある頁に付箋を貼る始末。人物名も風変りなのが多く、被害届を出す若い女は小須田里香といふ。「こすだりか」。コスタリカか。その相手は相磯均で「あいそひとし」と読む。鹿内と書いて「しかない」、蝶堂(ちようどう)、鶴丸、主人公は雨森。意図的にをかしな名前にしてゐるのだらう。
前半は男女の些細な痴話喧嘩のすゑの傷害事件と人物紹介やらでのんびり展開する。最初の傷害事件が後で殺人事件になつて、上辺だけなぞつてゐた刑事たちの経歴等も書き込まれ、ペースが上がる。
以前書いたことがあるが、一体いつの話なんだ、といふのが矢鱈に気になるタチで、P19の最後から2行目「外に出ると、二月の寒さが身に沁みた」で解るのだが動坂署に赴任して一箇月といふ始まり方なので、5月頃かと思つてゐたら、P13に「底冷えのする当直室で」といふで混乱したり、ほかにも幾つか気になることはあるのだが、それでも面白く読んだ。
気になることを挙げると長くなるんだけど、P21で動坂署の署長桐山がパンをたくさん買つたらしいのだが、この後で一切言及されない。P259捜査会議で鮎川(県警本部の管理官)に雨森は散々絞られた後で、夜食をとらうとするのだが、鮎川に散々絞られるのはこの後、P280〜286までだ。P458最後のところで豪華な調度や大量の書物で埋まつた書架、高価な陶磁器、剥製のある部屋(この部屋の詳しい説明はP165にある)で雨森は「なぜか同じ光景を前にも一度どこかで見たような気がした」と書いてある。ええ、読み落としたか、と何度もパラパラ捲つて探したけど、その部屋には雨森はそれまで一度も入つたことはないし、似たやうな部屋が誰かの家にもあつたかと探したけれども見つからない。動坂署の刑事課全員が集まる場面は(最後の場面を除いて)2回あるがP259は刑事部屋だし、P297も刑事部屋と書いてある。それからこれはネタばらしになるかも知れないが、地下に温泉が湧き出してゐる敷地にある建物で「底冷えのする当直室」はないんぢやないか。
この気になる箇所の確認だけで半日潰れてしまつたけれども、それでもまあ、面白い小説だつたね。

2016-05-11

646.もたない男

中崎タツヤ・新潮文庫(used)。BookOffへ「じみへん」を探しに行つたら、1冊だけあつて、でもかなり状態が悪かつたので諦め、代りにこれをamazonで検索してゐて見つけたので購入。古本だけど状態は「非常に良い」。ほぼ新品。読んでゐて最近のオレ自身の心境に近いものを感じた。持ち物を整理したい、減らしたい、といふ気持ちが、この頃強いので。まあ、中崎氏の場合は極端で、持たないのではなく、ほしいものは購入するワケだから、寧ろ捨てたい、片付けたいといふ思ひのはうが強いのでせう。幾つか感じたこともあつたけど、特に付箋も付けずに読みをへてしまつたから、捨てないで、またあとで読み返さう。

2016-04-12

645.がんを告知されたら読む本

谷川啓司・プレジデント社。amazonで見つけて注文。翌日に届いたので直ぐ読み始めた。免疫細胞療法を研究する医師の著作。終盤、免疫細胞療法についての記述が増えるのはご愛嬌。癌そのものに対する知識は得られたし、気持ちも少しは楽になつたかな。

2016-04-08

644.密室に向かって撃て

東川篤哉・光文社文庫(used)。いま一番気楽に読めるかなあ。笑へるし、謎解きもあるし、で。ちよつと物足りない気もするけど、笑へる、つてところが助かる。またBookOffで見つけたら買はうと思つてる。

2016-03-18

643.バ・イ・ク

柳家小三治・講談社文庫。読んだらどうせ乗りたくなつちやふから、と後回しにしてたんだけど、ほかに読みたいものがなく(本はある、たくさん。死ぬまでに読み切れるのか、つていふくらゐにある、ほしい本つていふのはあるんだ、いま読めなくても)、手に取つたらやめられない。前半のツーリングの部分よりも先に後半、バイクが寄席にやってきた!から読み始めた。そしたら腹が痛くなるほど可笑しい。笑つた、笑つた。バイクに乗り始めのところは大爆笑。それから前半に戻つて、けふ読了。うーん、バイク乗りたい、バイクほしい。

2016-03-04

続・一日一生

酒井雄哉・朝日新書(×2)。続けてもう一度読みました。

2016-02-23

642.続・一日一生

酒井放哉・朝日新書。けふ買つて一気に読んだ。アピタの本屋に行つたら置いてなくて、WonderGooで見つけた。ほんとに普通のことしか言つてないんだけど、滲みる。大阿闍梨の言葉だから、といふのも勿論あるけど。まへの「一日一生」は2009年の1月から、2010年、2011年、2012年、2015年の1月に合計5回読んでゐる。これも繰り返し読むことになるだらう。

2016-02-15

641.夜の床屋

沢村浩輔・創元推理文庫(used)。これは面白い。偶然見つけたのだが、あの、東川篤哉を思ひ出した。短篇集なのに全体が一つの謎を作つてゐるといふ面白い仕掛け。仕掛けの出来上がりは兎も角、楽しめた。

2016-02-06

640.隠蔽捜査

今野敏・新潮文庫(used)。警察小説が好きで、この本の名前と作者名は知つてゐた。いつか機会があれば読みたいと思つてゐたところ、朝倉のブックオフで見つけた。確かテレビドラマになつてゐて、番組そのものは見たことがないけれども新聞のテレビ欄で見た覚えがある。警察庁のキャリアの話。主人公の竜崎はなんとも変はつた男だ。周りにゐたら、ちよつと傍迷惑だらう。読み易いのだが、なんだかスカスカな印象がある。警察官による連続殺人事件の発表をまへにして伊丹のマンションでの竜崎とのやりとりも、緊迫した場面なのは伝はるが、なにか物足りない。続篇が幾つか書かれてゐるのて、また見つけたら買ふかもしれないなあ。

2016-02-02

639.一夢庵風流記

隆慶一郎・新潮文庫(used)。こんなに読み始めるのに時間が掛かるとは思はなかつた。去年の4月に購入し、最初の50頁くらゐで頓挫。名前が読めない、覚えられない。誰が誰か判らない、人物の関はりが判然としない、年齢が判らない、など、先へ進まない。なので暫く目に付かない処に仕舞つてゐた。幾つか読みかけの本(フランドルの冬だのマルーシの巨像だの、後藤明生の雨月物語だの、グレアム・グリーンの見えない日本の紳士たちといふ短篇集だの、いしかわじゅん漫画ノート、ムーンライダーズ・ブックだの)を引つ張り出したが読み続ける気力といふか、かう気持ちが入つて行かない、気が散つてる感じで無理。そこでただ活字を追ふ、意味なんか判らなくてもいいから、といふつもりで、なるべく厚い本がいいので、これを読み始めた。そしたら、今度はどんどん、ずんずん読めた。理解しよう、とか、判らう、といふやうな助平根性があると本は読めないんだなあ、と改めて勉強しました。
漫画でも花の慶次といふ名前で知られてゐるやうで、生憎そつちは読んだことがないけれども、ずゐぶん若く書いてあるのはネット上でその絵を見たことがあるからだが、調べた限りでは前田慶次郎利益は1532年又は1533年から1541年の生まれとなつてゐて、これは没年がはつきりしないのでなんとも言へないが、慶長17(1612)年に73歳で没したといふ説を一応基準にすると、昔のことだから数へ年なのだらうから72歳だつたとして、1540年の生まれになる。それでこの小説の主な舞台となる年代はと言ふと、P18の天正15(1587)年8月の養父前田利久の死を始まりと考へれば、このとき前田慶次郎は37歳。漫画とはだいぶイメージが変る。読んでると前田利家はもつとずつと年上みたいに感じるが1538年の生まれらしいから2歳年上でしかない。前田まつは1547生まれで慶次郎より7歳下になる。
いづれにしても、下の我孫子武丸の処で書いたけど、かういふ些細なこと、何時に警察に通報したか、とか、季節はいつなのか、とか、主人公は何歳なのか、といふ単純で簡単なことを曖昧にしてゐる小説は好ましくないんだよなあ、意図的に知らせず話を進める意味がないでせう、読んでるうちにだんだんいろんなことが判つて来るといふ面白さもあるけどさあ。
それと時代小説つて、どうしてかう講談みたいに見て来たやうなことを平気で書けるのかねえ。史実として残つてゐるものもあるだらうけど、それにしたつて誰が誰とがいつどんな会話をしたかまで具体的なことは残つてないでせうに。それが時代小説の醍醐味なんでせうが。

2016-01-18

638.8の殺人

我孫子武丸・講談社文庫(used)。いしかわじゅん繫がりで読んでみるかなあ、と思つて朝倉のBookOffで探したら、ちやうどデビュー作のこの本が108円で見つかつたので買つて読んだ。一気に読めた。どこが「いしかわじゅん繫がり」かといふと、なにかの記事で我孫子氏がいしかわじゅんのファンを公言してゐるといふのを読んだからだ。名前を知つてゐたのは、確か島田荘司が数人の本格推理小説の書き手を推してゐて、綾辻行人とか歌野晶午とか法月綸太郎とか有栖川有栖とか(「とか」連発!)、その中の1人としてだつた(講談社のメフィスト賞の受賞者とごつちやになつてるかもれしない。)。全員の作品は読んでないくせに、こんなことを言ふのは不遜だけど、正直いま一つだつたのはトリックが勝ちすぎてゐて、小説としての面白さが足りない気がした。その辺はこの本の解説で島田荘司が書いてるけど同感ですね。島田荘司の話をすると長くなるやうな気がするので端折る。で、読んでみて面白かつた。かういふのは好きだね。話の始めからトリック優先な犯罪と犯人が断つてるし、クスクス笑へるとこもあつた。折原一の「七つの棺」みたいな感じかな。
一つだけ、最初の犯行(と言つても殺人事件は二つしか起こらない)でP48、弟の慎二が兄の速水恭三警部補との会話の中でかう言ふ「時間は二時間も余裕があったわけだしね」と。事件が起こつて発見され警察に通報されるまで二時間あつた、と言ふのだが、それまでの頁に事件が起こつた午前一時以降、いつ発見されて何時に警察に通報したのか記述がない。読み返したけど、見つからない。だからどう、といふ問題でもないんだけど、こつちは、え?なんで二時間つて判るんだ?と思つた。P71になつて被害者の母親、蜂須賀民子の口から「三時に起こされるまでぐっすりと眠って」いたといふ箇所を読んで漸く読者はそれを知ることになる、といふのは、オレはイヤだね。

2016-01-16

637.東京で会おう

いしかわじゅん・角川文庫(used)。漸く読むことができた本だ。漸く、つたつて、どうしても読みたいと思へば探して手に入らないほどではないだらうから(絶版になつてゐるとか、例へば後藤明生だつて、それなりのお金を使へば買へないワケではない、といふ意味で)、ちと大袈裟だつた。「ロンドンで会おう」と同じく北方謙三をモデルにしたと言はれる南畑剛三が主人公の、まあ、ハードボイルド、或はドタバタ・ナンセンス、少しばかりエログロで痛快な連作短篇集だ。題名の「〜で会おう」つてのは、なにかの洒落、パロディなのかもしれないが、いまのところ不明。

2016-01-09

吉祥寺探偵局

いしかわじゅん・角川文庫(×2)。正月早々、かういふ只管笑へる小説の再読は、これでいいのか、と思はせるけど、これでいいのだよ。ホントに笑つた。角川で手に入る「東京で会おう」も中古で見つけて注文し、けふ届いた。「ロンドンで会おう」つていふバカバカしくて笑へるハードボイルドを先に読んでるので、いまからワクワクしてる。序でに「漫画の時間」つていふ、とつてもためになる漫画の本を氏は書いてゐて、ときどき拾ひ読みしてるのだが、その続篇「漫画ノート」も注文してしまつたが、それも一緒に届いてゐた、楽しみだ。