2013-04-27

山本直樹「フラグメンツⅠ/山本直樹著作集」小学館(536・used)。大きく二つの作品が入つてゐる。「雪子さん」に始まる、やや古風で(文学的と言ふか)幻想的なもの。「夕方のおともだち」といふマゾヒスティックな男の話。概ねエロ漫画と呼ばれるものだが、もつと助平なものを期待してゐたので、まあ、この程度のものかといふ印象。絵は好きだね。

2013-04-21

いがらしみきお「ガンジョリ」小学館(535・used)サブタイトルといふか、題名の上に「いがらしみきおモダンホラー傑作選」と書いてある。モダンホラーかどうかは解らないが、をかしな話、気味が悪い話ではある。短篇小説の編輯本などにある「奇妙な味」といふヤツに分類されるだらう。いがらしみきおは「ぼのぼの」で知り、休筆まへの4コマものを捜して読んだ、といふ経緯なのだが、ここでの絵はまたずゐぶん違つて見える。どれも面白いのだが、オレは「みんなサイボー」が一番気に入つてしまつた。

2013-04-17

中町信「浅草殺人風景」徳間文庫(534・used)どうしてかう、読んだ後の印象に違ひが出るのか。下の「悪魔のやうな女」では人物の印象が薄くて、話の筋を慌しく追つて行く骨組みだけの小説に思へた(専業作家になつて以降の作品には残念ながらかうした印象を受けるものが多い)のに、これは人物が生き生きしてゐる。浅草が舞台だから、といふわけでもないだらう。P16〜P17にかけて、浅草の三社祭の初日死んだ人物の名前がかはつてしまふので、誤植かと思つたら、さうではないことが読み進めるうちに解るのだが、これはもう少し説明を付けてもネタバレにはならないでせう。それともオレだけが、さう読んでしまつたのか。最後の真相の部分はもうちよつと書き込んでほしかつた。真犯人の心境とか、連続殺人の方法とか。この浅草のシリーズは2作しかない。まへの「浅草殺人案内」のときにも書いたけど、鮨芳は一体いつネタを仕入れに行くんだらう。河岸に行かなくても馴染みの業者があつて、届けてくれるのだらうか。

2013-04-14

中町信「悪魔のような女」ケイブンシャ文庫(533・used)久し振りの中町ミステリ。ここには生身の人間は一人もゐないと言つていい。肌のぬくもりもにほひもない。手品の人体轢断で血が噴き出したら、身も蓋もないのと同じやうに。登場人物たちは舞台の上でそれぞれ割り振られた役名の行動をし、台詞を喋る。その台詞は肝心なところで観客の目を惑はせ、読み手を誤解させるために用意されたものだ。手品のやうに。だから、手際の善し悪しが出来不出来になる。ここでは最初の事件で凶器に付いてゐた指紋の照合を、一度で済んだはずなのに容疑者がかはる度に繰り返される、といふ杜撰な捜査で辛うじて切り抜ける。アクロバットだね。これがダメな人は中町ミステリは無理。これは「殺人病棟の女」を改題したもの。プロローグとエピローグの意外性も少ないし、誤読への誘導も大きく軌道を外すことがない。日付と時間が書いてあるのだが、時間のはうの意味がよくわからなかつた。

2013-04-12

土屋秀宇「日本語「ぢ」と「じ」の謎」光文社知恵の森文庫(532)amazonで評判がよかつたし、興味もあつたので買つた。鼻血は「はなぢ」なのに地面は「じめん」と書くのはをかしいといふ話は面白いけれども、レビューの一人が書いてゐたやうに、おしまひのはう(第10章)は仮名遣ひとは直接関係のない話になる。著者が師と仰ぐ石井勲をめぐる漢字の学習法、教育法についての話が唐突に出てくるからだ。P196中程「あまりにかわいそうです(笑)」。講演の筆記でもないのに、一体どういふ神経か。巫山戯てるのか。国語改革の中心人物である上田萬年が主任教授を務めた東京帝大の「国語研究室」から上田とは全く逆の立場に立つことになる「広辞苑」の編纂者である新村出を始め橋本進吉(「古代国語の音韻に就いて」)、時枝誠記(「日本文法」)、山田孝雄が育つたといふ皮肉。森鴎外が歴史的仮名遣ひや漢字を減らす方向へ動かうとする当時の文部省への意見書は抜粋だが流石だと思ふ。いつそ日本語を止めてフランス語にしたらいい、などと寝言を言つた志賀直哉とは人間の出来が違ふ。国語をめぐる歴史を大まかになぞつた感じで期待外れ。

2013-04-05

伊達友美「飲んでも太らない秘密の習慣」青春新書(531・used)これまで読んだ伊達式ダイエット関連の本と重複するところもあるが、何度も繰り返し読めば覚えられる。痩せるためには代謝を上げるものを食べること、つまり体を冷やさないものを食べる、食べる順番に気をつける、つまり血糖値を上げ難いものから食べる、悪い油はいい油で落とす、この3つが肝心。これに飲酒が絡むけれども、ほぼ対処法は同じ。