2013-04-12

土屋秀宇「日本語「ぢ」と「じ」の謎」光文社知恵の森文庫(532)amazonで評判がよかつたし、興味もあつたので買つた。鼻血は「はなぢ」なのに地面は「じめん」と書くのはをかしいといふ話は面白いけれども、レビューの一人が書いてゐたやうに、おしまひのはう(第10章)は仮名遣ひとは直接関係のない話になる。著者が師と仰ぐ石井勲をめぐる漢字の学習法、教育法についての話が唐突に出てくるからだ。P196中程「あまりにかわいそうです(笑)」。講演の筆記でもないのに、一体どういふ神経か。巫山戯てるのか。国語改革の中心人物である上田萬年が主任教授を務めた東京帝大の「国語研究室」から上田とは全く逆の立場に立つことになる「広辞苑」の編纂者である新村出を始め橋本進吉(「古代国語の音韻に就いて」)、時枝誠記(「日本文法」)、山田孝雄が育つたといふ皮肉。森鴎外が歴史的仮名遣ひや漢字を減らす方向へ動かうとする当時の文部省への意見書は抜粋だが流石だと思ふ。いつそ日本語を止めてフランス語にしたらいい、などと寝言を言つた志賀直哉とは人間の出来が違ふ。国語をめぐる歴史を大まかになぞつた感じで期待外れ。

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