2016-06-28

654.無条件幸福論

藤本義一・ベスト新書。タイトルが面白さうだつたのでamazonで購入。オレたちの年代だと11PMの司会者といふ印象が先づ、ある。で、小説家で映画の脚本も書いてゐて、「幕末太陽伝」の監督川島雄三に私淑してゐる、といふくらゐの知識。実際の小説は申し訳ないが読んだことがない。だつて、本屋に藤本義一の本はないでせう。
自己紹介みたいな自伝の部分と絡めて幸福とは何かに就いて書かれたもの。定年後、働いてないといふ後ろめたさがあつて、つい、かういふ本を買つてしまふ。気がつくと、休んでゐるつもりが、遊んでゐるに掏り替はる自意識の過剰さ。これぢやあ、ちつとも自分のやりたいことをやる、なんて出来ないよ。まはりの目が気になるうちは無理だ。

2016-06-26

653.軟弱者の言い分

小谷野敦・晶文社(used)。これは作者名だけは知つてた。amazonのレビューで何度か見掛けて、wikiで調べたことがある。どこかの大学の教授だか助教授だか助手だかの肩書きだつたかなあ。違つた、現在明大の講師つて書いてある。雑な印象では反蓮實重彦みたいな発言だつたと思ふので記憶してゐる。
最近、三島賞を受賞して、これは傑作ぢやない、とかワケの解らねえことを言つてる蓮實重彦つて年寄りがゐる。候補を辞退すりやいいだろ、と思ふんだけど、サルトルだつてノーベル賞候補辞退したろ。なにもサルトルと比べなくたつていいんだけどさ。この人がどうも好きになれなくて、顔が先づダメで、何冊か館林の図書館で借りて読んだことがあるんだけど、言つてることがよく解らない。序でに言ふと柄谷行人つて人もよく解んねえんだけと。何言つてるか。
まあ、いいや。これはエッセイで、BookOffで物色してたら見つけて、パラパラめくつてたら金井美恵子に就いての一文があつたので立ち読みしようかと思つたけど、108円なんで、買つた。ほぼ斜め読み。覚えてることの中で、あれ、と思つたことを書く。
筆者は吉村昭を尊敬してるさうだ(P264)。で、吉村氏は小説家志望だつたが、敢へて新人賞に応募せず同人誌に書いて来た人だ、と(P59)。氏の「私の文学漂流」を元にさう書いてゐるやうだが、念のためこの本の一応最初から最後まで、吉村昭に関する文章を探して調べたけど、どうも本当にさう思つてゐるらしい。
と言ふのも、オレの記憶では吉村昭は確か太宰治賞を取つてデビューした人だと思つてゐたからだ。ちよつと自信がなかつたので確認したけど、やつぱり「星への旅」で1966年第2回の受賞である。佳作が加賀乙彦。第3回が金井美恵子だ。なんでこんな簡単な間違ひをするんだらう。尊敬してるなら、尚更だ。

黒猫

島木健作の短篇。筑摩書房の日本文学全集44巻「武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」収録。筑摩書房からは判型の違ふ日本文学全集が出てゐるが、これは四六版と呼ばれる普通の単行本のサイズで黒塗りの装幀。この全集が高校のとき図書館にあつて、借りては見るが読む気にならないで、いろんな人の巻を借りて来ては返却してゐた。何度も借りては読まずに(精々短篇一篇くらゐしか読まないで)返してゐたものとして記憶にあるのが幾つかあつて、これはその一つ。因みに他には29巻「宇野浩二・葛西善蔵・牧野信一集」(ここに入つてる葛西善蔵の「哀しき父」が好きなのだ)、35巻「梶井基次郎・堀辰雄・中島敦集」(堀辰雄の「美しい村」はこれで読んだので、最後の「坂の途中で倒れた女の子が花ざかりの灌木のやうに見えた」といふ場面が記憶にあつて、解説が吉田健一なのだつた)、51巻「永井龍男・田宮虎彦・梅崎春生集」(永井龍男の「黒い御飯」と「蜜柑」「一個」を読んだ覚えがある)と揃へてしまつた。装幀とか手に持つた感じが好きだつたし、仮名遣ひだけは原本通りなのが。どれも税別100円だつた。で、この巻では織田作之助の「木の都」といふ短いのだけ読んでゐた。
23日にコインランドリーで洗濯物を乾燥させてるあひだに読まう、と、なんとなく思ひ立つて本棚から出したのだ。不意にさう思つて、これもなぜか島木健作の「黒猫」を読むことにした。
30分乾燥をまはして、後で考へると20分でも充分だつたなと思つたけど、20分まはしたときに一度靴下の先が湿つてゐたことがあつて、ほぐして入れるんだけど、たまにさういふことがあると勿体ないとは思ひつつ余計にまはしてしまふのだ。
ちやうど25分くらゐで読み終はつた。樺太オホヤマネコの話から近所の野良猫の話になる。家に入り込むやうになつた黒い猫との顛末だけなんだけど、面白いなあ、と思つた。
いま島木健作なんて言つても本屋に本がないよね。尤も、上に挙げた著者名で本屋で見掛けるのは恐らく梶井基次郎くらゐだらう。堀辰雄も、ないな。島木健作はたぶん学校で国語の授業で名前が出るんぢやないだらうか。プロレタリア文学とかなんとか。「生活の探求」はベストセラーになつたさうだし。「生活の探求」も勿論収録されてる。でも読む気にはならない、いつかね、と思つてるけど。

2016-06-19

652.日本は悪くない 悪いのはアメリカだ

下村治・文春文庫。けふamazonから届いて一気読み。仕事してないと、かういふことが出来る。しかし、経済には疎い(ほかにも疎いものはたくさんあるが)ので、もう一度ゆつくり読まうと思ふ。これも失業してるからこそ。解説の中で宇沢弘文氏の名前が出て来るが、オレは館林の三の丸芸術ホールにゐた頃に、氏の講演会を聞いたことがある。嗜好品に対する課税率を下げるのはをかしいと言つてゐたことが記憶にある。当時、ノーベル賞級の経済学者で次期東大の学長だとも。で、館林の元宇沢整形外科のお兄さんでした。この本に就いてはもう一度読んでから書きます。

2016-06-06

651. 交換殺人には向かない夜

東川篤哉・光文社文庫(used)。「完全犯罪に猫は何匹必要か?」と一緒に買つたもので、続けて読んだ。「猫」のはうはいま一つだつたが、これは面白い。すつかり騙された。プロローグとエピローグがあり、人物名で章立てがしてあつたり、あれ、もしかしたら、これは中町信か、と薄々は感じてゐたのだが。劇場型と呼ぶのかね、解決部分での、謎解き早変はりは苦手だなあ。オペラとかミュージカルみたいでせう。でも、これは烏賊川市もの、鵜飼杜夫・戸村流平シリーズでは一番気に入つた。この次にもう一冊「ここに死体を捨てないでください!」といふのがあるらしい。

2016-06-04

650.完全犯罪に猫は何匹必要か?

東川篤哉・光文社文庫(used)。400頁を超える長さで、ちと疲れたね。うろ覚えで言ふのだが、このまへの「密室に向かって撃て!」に舞台設定が似てるやうな気がする。東屋で起こる殺人とビニールハウスで起こる殺人を別の建物、或は周辺から目撃する。猫がポイントになつてゐるのだが、強引な感じもした。笑ひも悪巫山戯のやうに取れるところもあつて、別に悪巫山戯は嫌ひぢやないし、ダメだとも思はないけど、気になつた。