2016-06-26

黒猫

島木健作の短篇。筑摩書房の日本文学全集44巻「武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」収録。筑摩書房からは判型の違ふ日本文学全集が出てゐるが、これは四六版と呼ばれる普通の単行本のサイズで黒塗りの装幀。この全集が高校のとき図書館にあつて、借りては見るが読む気にならないで、いろんな人の巻を借りて来ては返却してゐた。何度も借りては読まずに(精々短篇一篇くらゐしか読まないで)返してゐたものとして記憶にあるのが幾つかあつて、これはその一つ。因みに他には29巻「宇野浩二・葛西善蔵・牧野信一集」(ここに入つてる葛西善蔵の「哀しき父」が好きなのだ)、35巻「梶井基次郎・堀辰雄・中島敦集」(堀辰雄の「美しい村」はこれで読んだので、最後の「坂の途中で倒れた女の子が花ざかりの灌木のやうに見えた」といふ場面が記憶にあつて、解説が吉田健一なのだつた)、51巻「永井龍男・田宮虎彦・梅崎春生集」(永井龍男の「黒い御飯」と「蜜柑」「一個」を読んだ覚えがある)と揃へてしまつた。装幀とか手に持つた感じが好きだつたし、仮名遣ひだけは原本通りなのが。どれも税別100円だつた。で、この巻では織田作之助の「木の都」といふ短いのだけ読んでゐた。
23日にコインランドリーで洗濯物を乾燥させてるあひだに読まう、と、なんとなく思ひ立つて本棚から出したのだ。不意にさう思つて、これもなぜか島木健作の「黒猫」を読むことにした。
30分乾燥をまはして、後で考へると20分でも充分だつたなと思つたけど、20分まはしたときに一度靴下の先が湿つてゐたことがあつて、ほぐして入れるんだけど、たまにさういふことがあると勿体ないとは思ひつつ余計にまはしてしまふのだ。
ちやうど25分くらゐで読み終はつた。樺太オホヤマネコの話から近所の野良猫の話になる。家に入り込むやうになつた黒い猫との顛末だけなんだけど、面白いなあ、と思つた。
いま島木健作なんて言つても本屋に本がないよね。尤も、上に挙げた著者名で本屋で見掛けるのは恐らく梶井基次郎くらゐだらう。堀辰雄も、ないな。島木健作はたぶん学校で国語の授業で名前が出るんぢやないだらうか。プロレタリア文学とかなんとか。「生活の探求」はベストセラーになつたさうだし。「生活の探求」も勿論収録されてる。でも読む気にはならない、いつかね、と思つてるけど。

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