2018-09-19

747.最後の喫煙者

筒井康隆・新潮文庫(used)。「自選ドタバタ傑作集1」といふので、4つの短篇集からドタバタものを9篇集めた本。結構筒井氏の本は読んでる筈なのに、読んだ記憶があるのは意外にも「万延元年のラグビー」のみ。5月の始めに買つて漸く読み終へた。あんまり面白くなかつたなあ、昔はゲラゲラ大笑ひして読んでたのに。体調とか、状況とか、精神状態とか、いろいろあるんでせう。

2018-09-10

745.746.ゲレクシス1、2

古谷実・講談社。古谷実の最新作だ。最新と言つても、このコミック版の2巻が出たのが2017年3月23日だから既に1年半は経つてゐるのだけれども。勿論、連載されてゐたことも、それがコミックとして出たことも知つてゐた。いま古谷実は本が出れば無条件で読みたい漫画家だから。でも、いろいろあつて読める心境ではなく、いまだつてたいした違ひはないが、時間が取れるのと、少し前向きにならう、といふ気分になれるだけ恢復してゐると見做していいのかもしれない。
9月6日にamazonに注文してから届くまでの僅か3日が待ち遠しくて、「サルチネス」4巻、「わにとかげぎす」4巻を古谷実の予習の意味で立て続けに読んでしまつたほどだ。やつぱり待つた甲斐があつて実に面白かつたが、もう少し続けてほしい気もしたのは、これぢやあ、各自勝手な解釈、で落ち着いてしまはないか。普通に読めば、日常生活の時間の繫がりは、1巻のP17のコマから一気に2巻のP132になるわけで、この途中の非日常をどう見るか、解釈するかであり、これもまた普通に読むなら、2巻のP158から始まると覚しき世界は非日常として元に戻るかどうかは判らないけど、オレとしては倉内と大西店長との絡みをもつと読みたいなと思ふのだが、どうなんでせう。

2018-08-12

744.孤独のグルメ

久住昌之原作/谷口ジロー作画・扶桑社。吉岡町図書館。これは新装版といふもので、雑誌掲載の18話に特別編1話。この「孤独のグルメ」は単行本としては2巻だが新装版は1巻しか出てゐないやうだ。先づ作画の谷口ジロー氏は2017年の2月の亡くなつてゐるといふことを書いておかう。
始めは漫画のはうは知らなくてテレビのドラマで放送されてゐる番組のはうを知つたのだが、群馬の藤岡だつたか、富岡だつたかのラーメン屋を取り上げるといふ新聞記事を読んだからだ。しかし実際その放送は見てゐない。といふのも深夜の番組で、日付のかはる時分まで起きてゐるなんてことは、いまでは諸事情で寝付けないから見ようと思へば見られるのだが、いまでも放送してゐるのだらうか。所詮その程度の興味しかないのだが、昼間再放送された番組を偶然見たことがあつて、主役の松重豊が旨さうに食べる場面が印象的で、それで図書館で見つけて借りたのだ。

2018-06-17

743.儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇

ケント・ギルバート・講談社+α新書(吉岡町図書館)。これは面白かつた。新聞の書評欄で見たのではなく、新聞広告か電車の中吊りで見て、読んでみたいと思つてゐた本だ。
日本人は仏教と武士道だとケント氏は言ふが、儒教的な呪縛は日本人にもあると思ふ。「論語」をきちんと読んでない癖に言ふのも気が引けるが、だからどうした、何が言ひたいんだ、と突つ込みたくなる箇所もあるし、概ね詰まらない処世訓だ。それに仏教の先祖を敬ふ気持ちは、氏が儒教の悪い面(いいも悪いもないけど)だと言ふ「孝」を重んじる精神に近いし、武士道、侍精神といふのは非常に特殊で、正に「葉隠」、日本人の本質と言へるかどうか。
兎も角、充分楽しく読めた。ただ、氏は「日本は建国以来、一度も王朝交代が起きていない」と言ふけれども、大和民族である蘇我氏の天皇が、渡来人である藤原氏の天皇に代はつて現在まで続いてゐるワケだから「一度も王朝交代がない」とは言へないでせう。
※ 蘇我氏が大和民族だといふのも反論があるやうで、それはどつちでもいいんだけど、それまで勢力を持つてゐた蘇我氏を滅ぼして藤原氏が代つたワケだから王朝交代と同じでせう。大化の改新だけだと思ふけど。

2018-05-08

邪馬台国はどこですか?

鯨統一郎・創元推理文庫(×2)。聖徳太子は実在しなかつた、といふ話をしてゐて、この本の話になつて、読んでみますか?貸しますよ、つていふ話になつて、探したら見つからなくて、誰かに貸してるのかな、と思つたけど思ひ浮かばない、貸すことにしたからには現物がないと話にならない、念のため娘にメールしたら借りてないといふ答、Amazonで中古を買ふ手配をしたら或る日机のうへに乗つてゐて、カミさんに貸してゐたのださうだ。それで読み返した。かういふ本なら読めるんだね、なんとか。取り上げられた歴史の謎を解く新説の真偽は兎も角、充分時間潰しにはなつた。拾ひ読みはしてたけど、通して読んだのはこれが2回目だと思ふ。

2018-03-08

742.空気の底(手塚治虫傑作選集13)

手塚治虫・秋田書店(吉岡町図書館)。1話完結の短篇集で18篇収録されてゐる。いづれも「プレイコミック」掲載なのだが、一つも記憶にないものだ。「空気の底」といふ総題の意味はわからない。この題の作品もない。最初の「処刑は3時におわった」は筒井康隆の「お助け」を思ひ出した。多種多様な作品で、星新一や小松左京、或は都筑道夫、はたまたローレンス・ブロックの短篇に似たやうなのがなかつたかなあ。

2018-03-07

741.人間昆虫記(手塚治虫傑作選集19)

手塚治虫・秋田書店(吉岡町図書館)。大人向けの漫画雑誌「プレイコミック」に昭和45年5月〜46年2月まで連載されたもの。全部ではないが、雑誌掲載時に読んだ覚えがある。全体を通して読んだのは始めてで、模倣を繰り返し脱皮して成長して行く女主人公を虫になぞらへた物語だつたのだ。

2018-03-03

740.スティーブ・ジョブズ

バム・ポラック&メグ・ベルヴィソ/伊藤菜摘子訳・ポプラ社(吉岡町図書館)。児童図書のところにあつて活字も大きく100頁程度の薄い本。なかなか文字の世界に入れないのに無性に本の中に逃げたいといふ矛盾した思ひで落ち着かない日々。もつと本式の、上下2冊のジョブズの伝記もあるんだけど、パラパラめくつてもちつとも頭に入らないから、これにした。だいたい知つてることが書いてありました。ジョブズはオレより学年が一つうへなだけなのになあ。2011年56歳歿。hiko8さんよりも若かつたんだね。

2018-02-28

はだか川心中、その他

少しでも現実から離れたいと思ふのに本の文字を追ふことで別の世界に入つて行くことにもためらひといふか、落ち着かない感じがあつた。手元にある本はどれも読む気になれない。頁を開いても目が泳いでしまふ。どうにか気を紛らせるものはないか探してゐたら、都筑道夫の「十七人目の死神」(角川文庫)といふ短篇集を見つけて幾つか続けて読んだ。短い小説なのに一日に一篇読むのがやつとだつた。
実家にはhiko8さんが置いたままにしてある本がたくさんあつて、例へばhiko8さんが得意だつた理系の、数学や物理の、題名を見ても何が書いてあるのか想像もできないものや、哲学書などが本棚一つ分あるのと、かつて祖父が寝起きしてゐた部屋にある本棚にも文庫が十数冊あつて、これはその一つ。
都筑道夫と言へば「夜のオルフェウス」といふ傑作があつて、その見事さ、素晴らしさを教へてくれたのはhiko8さんだつたが、そもそも都筑道夫を読み始めたのはオレのはうが先だつたのだ。ショート・ショートに興味があつた頃で、だから二十歳前かなあ、高校生だつたかもしれない。「阿蘭陀すてれん」とか「悪魔はあくまで悪魔である」とか「黒い招き猫」とか、山藤章二の独特のイラストが添へられた角川文庫を買つて読んだものだ。
でも、この「十七人目の死神」は持つてゐなかつたと思ふ。
古ぼけた丸善のカバーがついてゐるから、きつと東京で買つたのだ。奥付を見ると昭和五十二年一月三十日再版発行と書いてあるから、hiko8さんが十七、八歳の頃だらう。
今回読んだのは、全部で十一篇収録してあるうちの、中でも更に短いもので「不快指数」、「はだか川心中」、「父子像」、「風見鶏」の四篇。たぶんhiko8さんは「風見鶏」が好みだらう。次に「不快指数」かな。オレは「はだか川心中」。次が「父子像」。要はオレのはうが見た目が単純な展開で意外な結末を好む、といふことだらうな。そんな話をすることも、もはやできない。

2018-02-04

739.いい加減にしろよ(笑)

日垣隆・文芸春秋(吉岡町図書館ブックリサイクル)。名前は見たことがあるやうな、ないやうな、他の人と勘違ひしてるかもしれないが、タイトルはちよつと面白さうだから手に取つてパラパラ。第一章の細木数子はささツと読み飛ばし、次の平山郁夫のところを拾ひ読みしてたら、ここで立ち読みするなら貰つて帰らう、といふことになつた。日本の美術で「世界をマーケットに通用してきたのは浮世絵だけではないか」と第二章「画家鑑定 平山郁夫──権力獲得の裏面史」の終りのはうに出て来る。いま世界で取り上げられてゐる日本の現代美術はオタク系やアニメ系ものだが、そもそも北斎漫画などの浮世絵も似たやうな成り立ちなのだから、日本美術なんて国内では名前を知られた人だとしても、日本画にしても洋画にしても、所詮限られた作者が世界のほんの一部の熱心な人たちが興味を持つてるだけなんだよ。それにしても平山さんは奇妙な人だ。他には犯罪や警察捜査、再犯、精神障害犯罪者や心神喪失者に対する(被害者の存在を忘れた)過剰な保護姿勢などへの言及もあり、氏の他の著作も読んでみたいと思つた。

2018-01-31

酒井阿闍梨の「一日一生」がカウントされてないといふ話

いま読んでる本(最後まで読めるかどうか不安なので敢へてタイトルは記さない)を以前にも読んでるんぢやないか、と思ひ、遡つて古い記事を検索した。と、酒井阿闍梨の「一日一生」を読んだのは、No.の後に本のタイトルを入れないで、いきなり本文に入るパターンだつた頃だつたが、そのまへの記事が「176.ループ」(2008.12.28)なのに、「一日一生」の記事(2009.01.03)は後ろに(158)と記されてゐて、順番がをかしい、と気づいたワケだ。
では、158は何かと調べると「158.天童駒殺人事件」(2008.10.10)で、番号が重複してゐる。なので、「一日一生」のはうは番号を削除した。
それ以前に読んてゐて、番号を付けてないとは思へない。手元にこの本はなく、自宅に帰らないと確かめようがないが、本の後ろに書いてある日付が2008年の大晦日であれば、間違ひなく抜けてしまつたのだ。
が、十年もまへのことだし、途中で割り込ませるのも何だし、一冊くらゐいいんぢやね、といふ気もする。ただ、一応さういふことです。たぶん、上下巻ものとか、巻数の多いものを一冊づつにカウントし直したときに見逃したんだらうね。他にもあるかも知れないし、察数の多いものは計算間違ひなんかもあるんぢやないか。ま、ただの覚書だから、適当に。

2018-01-30

738.私が出あった世にも不思議な出来事

鳩山幸・池田明子/Gakken(吉岡町図書館ブックリサイクル)。学研の「ムー」といふ雑誌に隔月連載された24人へのインタビュー記事を纏めたもの。聞き手の鳩山幸は鳩山由紀夫の、池田明子は梅沢富美男の夫人。相手は佐藤愛子に始まり、久司道夫(本書は2008年発行で、氏は2014年に死去。マクロビオテックといふ食事療法の提唱者で、忌野清志郎や坂本龍一がその実践者)、湯川れい子、寺山心一翁など。心霊体験、神秘体験やUFO目撃譚が殆どで、それは「ムー」つていふ雑誌がさういふ雑誌だからね。語り手が芸能人や文化人と呼ばれる人になつただけで、内容は、ほぼ予想がつく程度の「世にも不思議な出来事」だつた。途中で一度退屈の余り捨ててしまはうかとも思つたけど、偶然目に留まり、手にしたものなのだから因縁があるものだらう、と思ひ直して最後まで読んだ。

2018-01-21

737.凶刃 用心棒日月抄

藤沢周平・新潮文庫。P55、再会のとき「十六年も音信もなくほうっておかれたからと、寝首を掻くようなことはいたしませぬ」と佐知は言ふ。ほかにもある。言つてから頬を染めたりするところが堪らなく、いい。拾つてみよう。P69、「出来れば、わたくしがお食事をつくってさしあげられるといいのですけれども」P328、「今日は思いがけなく、小半日もご一緒出来てたのしゅうございました。こんなことはもう出来ないものと思っておりましたから」。嗅足組を解散したあとで尼になるといふ佐知は、数年の修行を終へたら国元の明善院の安寿になることが決まつてゐると言ふ。果報者よのう、青江又八郎は。

2018-01-19

736.刺客 用心棒日月抄

藤沢周平・新潮文庫。続きが読みたくて堪らない。中毒。半分は佐知のことを読みたい。解説の常盤新平が書いてるが、まさに佐知のことが読みたくて用心棒シリーズを読んでゐる。だから度重なる脱藩も多少は不自然だと感じても又八郎が江戸に出なければ佐知が登場しないんだからやむを得ない。P348、佐知は「私を、青江さまの江戸の妻にしてくださいまし」と言ふ。いいなあ、佐知は。続くシリーズ最終作「凶刃」は長篇で、しかも十六年後の話ださうだ。買つて読まねばならない。

2018-01-17

735.つらくないがん治療

柳澤厚生・株式会社B.G.。副題「高濃度ビタミンC点滴療法」。前橋のクリニックで高濃度ビタミンC点滴を受けることになつた。その初日の診察後、院長から渡されたもの。治療内容は事前に調べたものと余り変はりはない。いまはこの治療に掛けるしかない、いい結果が出ることを期待して。

2018-01-16

734.じみへん仕舞

中崎タツヤ・小学館。単行本でしかもサイズが大きい。そして540頁もある。904回から始まり最終は1171回。といふことは引き算して267回分。中崎タツヤは還暦を機に断筆したさうだが、氏とは学年が一緒なので、なにかと気になる人だ。「もたない男」つてのも読んだし、まあ、さういふことだ。

2018-01-08

733.弧剣 用心棒日月抄

藤沢周平・新潮文庫。まへの「用心棒日月抄」もこれも四ツ角の正林堂で買つた。店内をよく見ると結構本が揃つてゐて、TSUTAYAより多いかもしれない。そんなことはどうでもいいが、やはり佐知はいいなあ。人物にかう、思ひ入れといふか、肩入れしてしまふのは、藤沢周平の書き方が上手いからだらう。又八郎は勿論、口入れ屋の吉蔵も細谷源田夫も米坂八内もいい。一作目の「夜鷹斬り」のおさきも好かつた。しかし、佐知には適はないね。P452の場面、ここは実にいい。なので、次の「刺客」も買つてしまつた。