2008-07-20

151.ぼくが愛したゴウスト

打海文三・中央公論新社(used)
11歳の「ぼく」がコンサートの帰りに駅のホームで事故に出くはす。それからをかしなことになつて、心を持たず、尻尾のある、イオウのにをひの体臭を持つ人間の住む世界に移動してしまつた、のか、パラレル・ワールドの話なのか、或は量子論的な幻影なのかといふ、設定が不思議でなかなか面白く読んだ。一つだけ。一枝あぐりはなぜ田之上翔太を逃がさうとしたのか、そのあたりは説明がないので、強引ではないか、といふ気もした。

2008-07-07

150.13階段

高野和明・講談社文庫(used)
江戸川乱歩賞受賞作。解説は宮部みゆきで、かなり褒めてる。けれども、どうなんだらうなあ、ミステリとして。文章は上手いと思ふ。すらすら読めるし、意味がよく解る。この題名、これでホントにいいんだらうか。寺の階段が13段。どこの寺もさうなら、なるほど。死刑囚・樹原亮の人物像がまるで見えない。南郷と三上がここまで入れ込む理由が弱い。10年前の三上の事件についても不自然な感じ、こじつけみたいに感じる。意外な犯人、アリバイ・トリックとは縁がない。いろいろケチを付けたけれども、間違ひなく面白い。蛇足、なんといふ偶然か、13113といふ数字の並び。