2013-12-16

562.暗闇の終わり

キース・ピータースン/芹澤恵訳・創元推理文庫 (used) 。作者名は「木野塚探偵事務所だ」で知つた。訳がフロストの芹澤さんなので読みたくなつた。amazonで検索したら4冊中古で見つかり、どれも「非常に良い」か「良い」だつたから、思ひきつて全部買つてしまつた。いづれも主人公が「ニューヨーク・スター」といふ新聞の記者ジョン・ウェルズのシリーズで、これが第1作目。過去に一人娘に自殺された経験を持つ彼が、ニューヨーク郊外の町で起こつたハイスクールの生徒が3人続けて自殺した事件を取材に行くといふ話。ときどき比喩が鼻につくけど、なかなか面白い。同僚のランシングといふ若い女性記者が実に魅力的だし、ウェルズの人物像も好きだなあ。この人は他にもペンネームがある。弟と二人でマーガレット・トレイシーといふ女性名義で「切り裂き魔の森」といふのを出していて、これは1983年のMWA最優秀ペイパーバック賞を貰つてゐるさうだ。このウェルズのシリーズ(4作しかない)のあと、アンドリュー・クラヴァン名義で5〜6冊翻訳が出てゐるかな。そのうちの一つはクリント・イーストウッドが監督した「トゥルー・クライム」の原作(邦題「真夜中の死線」で芹澤さんの訳)になつてゐる。因みにこの原題はThe Trapdoorで、ウェルズの夢といふか幻覚の中に現れる。

2013-12-11

561.木野塚佐平の挑戦だ

樋口有介・創元推理文庫(used)。木野塚探偵事務所の2作目で、こつちは長篇。現職の総理大臣の死に絡む怪しい人物たち。総理の死は病死か他殺か。他殺なら犯人は誰か。そこそこ面白い。最後に来て、どうやら全体の仕掛けは桃世の仕業かと思はせるのだが、そこまで作り込まなくてもいいのではないかと思つたんだけどね。木野塚氏の奥さんが実に笑はせてくれる。あとがきで、三人称的視点と一人称的視点の混在がどうした、現在進行形の文体がどうした、といふ記述があるが、よくわからん。P108、7行目「ここは東京のどまんなか」。どまんなか、ねえ。

2013-12-10

御乱心

三遊亭円丈・主婦の友社(×2)。読みをへた本を整理してゐて、もう一度読む気になつたのは、あの騒動のとき、円生、先代円楽、そして志ん朝、談志がどんな風に動いたか、おさらひをしようと思つたから。これを読む限り、先代円楽は最低なヤツで、談志も身勝手、志ん朝がやつぱりカッコイイ。円生も芸一筋とはいへ、志ん朝に比べたら、やはり身勝手な人だ。その人の落語、噺の好き嫌ひとは必ずしも一緒にはならないが。P231、2行目の下のはう、「やはり三鈴協会」は「三遊協会」の間違ひだらうなあ。それまで「三鈴協会」なんて出て来なかつたから。