2008-03-17

113.おかしなことを聞くね

ローレンス・ブロック/田口俊樹・他訳・ハヤカワ文庫(used)
いつだつたか雑誌かなにかで宮部みゆきが薦めてゐた本で、偶然BookOffで見つけた。中町信の「三幕の殺意」の後で読み始めてゐたが、漸く読みをはつた。上手いねえ。タイトル作なんて7頁しかない。これも気に入つたが、好みから言ふと「我々は泥棒である」「動物収容所にて」「夜の泥棒のように」「無意味なことでも」「窓から外へ」かな。ローレンス・ブロックがシリーズで書いてる主人公が三人?出て来る。マット・スカダー、泥棒バーニィ、と後誰か。バーニィのシリーズは特に読んでみたいと思つた。斜に構へた感じの会話が面白い。マット・スカダーのはうはハード・ボイルドで、これもなかなかいい。兎に角上手い人だね。

2008-03-15

112.トマソンの罠

とり・みき・文藝春秋(used)
いしかはじゆんの「漫画の時間」でも取り上げられてた人だけど、名前のみ見たことがあり実際に読んだことはなかつた。四コマの人かと漠然と思つてたら、つげ義春みたいなんだね。8篇収録されてゐるが、表題の「トマソンの罠」は都筑道夫の「夜のオルフェウス」を思はせる。wikiでいま調べたらつげ義春や水木しげる、白土三平とは縁がないみたいだが、建物とかアップになつた人物の書き方から、ちよつとそんなことを想像したのだ。「エリート」も面白かつた。「コインランドリー」は似たやうな設定のものを別の人で呼んだやうに思ふ。或は小説だつたか、テレビ番組の世にも不思議な辺りか。「雪の宿」が一番つげ的展開かな。「帰郷」は上手いと思つた。ありがちな筋書きだけど書き方がいい。すごく短いところもいい。

2008-03-10

110.111.ストレンジャーズ 上・下

ディーン・R・クーンツ/宮脇孝雄訳・文春文庫(used)
面白かつたねえ。用事が入つて途中で本を置くのが惜しくて仕方がなかつた。名前だけは知つてたけど、ユッスー・ンドールみたい(名前を見たら、また聞きたくなつた)で読み難い名前だし、カタカナタイトルだし、表紙の絵がどれも好みぢやないし、ぶ厚いし、人がいつぱい出て来るし、面倒くさいので避けてゐた。しかし、初めて読んで驚いた。500頁を超える長さの2冊本を最後まで退屈させずに読ませるのだから凄い。細かい部分もよく書き込まれてゐるから、あり得ないやうな場面も抵抗がない。サスペンスのやうでSFのやうで、ファンタジーとも言へなくもないか。登場人物も魅力的だ。ジンジャー・ワイスをこの目で見たいし、ウィカジク神父、パーカー・フェイン、ジャック・ツイスト、リタ・ハナビィに会つてみたい。そしてリーランド・ファルカークの首根つこを摑んで考へられるだけの罵倒をしてやりたいくらゐだ。……が、文句を言へばキリがないところもある。ご都合主義的な展開だと言へば、それで終りだ。その辺りを捜して突ついたら成り立たない物語だ。大雑把な印象はハリウッド的SF映画のシナリオみたいなものだ。しかし、抜群に面白い。