2010-08-30

娘に「読んでみる?」と勧められて「ねずみの騎士デスペローの物語」ケイト・ディカミロ/子安亜弥訳(320)を読んだ。図書館から借りた本なので、学校が始まつたら返すといふので日がない。きのふから読み始め、どうにか読み終へた。作者がときどき顔を出して読者に語りかける形式。読み始めたときは「建具職人の千太郎」のはうが面白かつたな、と娘に言つたものだが、やや尻細りではあるものの、どうしてなかなか。デスペローとは、母親が絶望despairの意味で付けた名前。この母親、デスペローが人間と接した罪を問はれ、地下牢へ連れて行かれるとき「さやうなら」と言ふ。P68で作者はあなたがお母さんから聞きたい言葉は「さやうなら」ではなく、「かはりに私を連れて行つて」ではないか、と問ふ。このお母さんの名はアントワネット、お姫さまはピー(と、やや素つ気ない)、デスペローと対決するドブネズミがキアロスキューロ(光と闇を組み合わせて表現することの意味で絵で使ふ言葉ださうだが、スペルがわからないので調べられない)、片耳のない年寄りのドブネズミがボッティチェリ!

2010-08-29

東野圭吾「予知夢」文春文庫(319・used)を毎日昼休みに一篇づつ、5日で読み終へた。まへに読んだ「探偵ガリレオ」の続篇。この後で「容疑者Xの献身」が書かれた。オカルト風の謎があり、湯川助教授が登場する。謎を解いて行くと単純に思はれた事件の様子がかはる。自殺が殺人に、またその逆にもなる。ミステリとしての面白さもある。

2010-08-19

ゆふべ岩崎京子「建具職人の千太郎」くもん出版(318)を一気に読んでしまつた。娘が小学校の課題図書で買つてもらつたものらしく、居間の隅においてあり、ずつと気になつてゐた。残業で遅かつたので、娘は床に就いてゐたが、その隙に、といふわけではないけれども、夕飯のオカズをツマミに晩酌をしてゐるあひだに読みをへた。小学生高学年向けで、活字も大きいし、行間もあるから、200頁の本だが、それほど長い話ではない。七歳で建具職人に奉公に出された千太郎(実在のモデルがあるといふ)とその姉おこうの物語。先づ、棟梁がいい。出戻りの若棟梁もいい。千太郎を指名して寺子屋の机を作らせる名主の藤右衛門もいい人だなあ。

2010-08-13

岩明均「骨の音」講談社モーニングKC(317・used)を読んだ。まへに同じ作者で「七夕の国」といふコミック4巻本を読んだことがある。いろんなタイプの漫画が書ける人だ。好きなのは「指輪の日」と「和田山」。最後のタイトル作「骨の音」は力が入つてるのだが、今ひとつ意味がわからなかつた。

2010-08-09

続けて池波正太郎「鬼平犯科帳(三)」文春文庫(316・used)を読む。(一)8篇、(二)7篇だつたが、これには6篇。なかでも4つ目の「兇剣」が長い。この巻には解説はなく、池波正太郎の「あとがきに代えて」が付く。どうしても長谷川平蔵を書きたかつたといふ。惚れ込んだ人物を実に楽しみながら書いてゐるのが伝はつて、そこがこのシリーズの魅力だ。

2010-08-03

池波正太郎「乳房」(315・used)を読む。これは鬼平犯科帳の番外篇で、長篇である。勘蔵といふ男を殺したお松と火付盗賊改方の長官になる長谷川平蔵を軸に十三年間に亘る物語だ。なかなか読み応へがあつた。一筋縄ではいかない善と悪の描き方が上手い。池波正太郎のシリーズものは他に剣客商売、仕掛人藤枝梅安もそれぞれ第一巻を読んでゐるが、やはり鬼平が一番好きだ。