2012-07-15

黒川博行「キャッツアイころがった」創元推理文庫(459・used)久し振りに旨い料理を食つた気がする。クリスティの後でも、さう思ふ。これで9冊目。短篇集2冊、後は長篇。一つも外れがない。三島の「禁色」が旨さうに見える高級料理で、でも食べてみたら食堂の入り口にある食品サンプルみたいに味もしない、満腹感もない料理だつた、と言つたら失礼か。いや、こつちが歯がぼろぼろで舌も味覚を失つてゐるのかもしれない。元宝石ブローカーの山本の話は重いね。P119低賃金で宝石採掘現場で働くガリガリに痩せた労働者が、様子を見に来ただけのブローカーが貧しい弁当を覗き込むと、食べるかい、といふやうに差し出す。そんなことは物語とは直接関係ないので書かなくてもいいんだけど、書く。さういふところが黒川博行だな。これまでずつとBookOffだつたので、こんだけ楽しませて貰つたからには、今度こそ定価の文庫、いや単行本を買ひますから。京都で言ふお愛想ではありません、けして。

2012-07-14

アガサ・クリスティ/深町眞理子訳「ABC殺人事件」創元推理文庫(458)。黒川博行の「キャッツアイころがった」を入手したので読み始め、いつものやうに解説をパラパラめくつたら、クリスティの「ABC殺人事件」を読んでからのはうが良いらしいのでAmazonで買つて読んだ。ま、イレギュラーな読書といふことになる。クリスティはどれも読み易い。ポワロがときどきホームズ風のお喋りをするのが鬱陶しいところもあるが、……。不明な点が幾つか。P90語り手へイスティンクズは2日ほどロンドンを離れてゐて、22日の午後に戻つたと書いてあるが、7月21日に最初の事件があつて、ポワロと二人で現場に行つてるんだから、日が違ふのでは?P104カーター警視と覚しき人物の発言「白いドレスを着た娘が、」だが、そのまへにはどこにも被害者が白いドレスだつたとは書いてない。必ず事前に被害者の服装を記述しろとは言はないが、唐突だつたので。P274これから事件が起こるかもしれない競馬場で、なんでそのタイミングでクラークは兄からの手紙をポワロに見せたのか。

2012-07-11

三島の「禁色」を中断する話。4月下旬(たぶん23日頃)から読み始め、一応は三島の代表作といふことなので、読み続けてきたけれども、もう限界。twitterだか、blogだか、その両方だかにも書いたけど、ホントに読み難い。物語の内容も作者の頭の中で作り上げた都合のいい人物ばかりが都合のいい展開をしてゐる、動いているだけにしか思へない。興味が持てないし、ただ字を追ふだけなので中止にしたことを敢て書く。苦痛でしかない読書は久し振りだ。全524頁、33章でできてゐるが、392頁、第26章の途中までで遂に挫折。放棄。要は難しい漢字、熟語ばかりで意味が解らず降参した、といふことです。

2012-07-02

唐沢なをき「カスミ伝(全)」ビームコミックス文庫(457・used)唐沢なをきはまへに買つて読んだことがある。絵は好きだし、面白いんだけど、古臭く感じる。これもさう。いろいろ手を替へ品を替へギャグを繰り出して来る。ギャグは面白いんだけど、さうねえ、文学的とでも呼べばいいのだらうか。古くさい感じ。意図的なのかもしれないけど。