2012-07-15

黒川博行「キャッツアイころがった」創元推理文庫(459・used)久し振りに旨い料理を食つた気がする。クリスティの後でも、さう思ふ。これで9冊目。短篇集2冊、後は長篇。一つも外れがない。三島の「禁色」が旨さうに見える高級料理で、でも食べてみたら食堂の入り口にある食品サンプルみたいに味もしない、満腹感もない料理だつた、と言つたら失礼か。いや、こつちが歯がぼろぼろで舌も味覚を失つてゐるのかもしれない。元宝石ブローカーの山本の話は重いね。P119低賃金で宝石採掘現場で働くガリガリに痩せた労働者が、様子を見に来ただけのブローカーが貧しい弁当を覗き込むと、食べるかい、といふやうに差し出す。そんなことは物語とは直接関係ないので書かなくてもいいんだけど、書く。さういふところが黒川博行だな。これまでずつとBookOffだつたので、こんだけ楽しませて貰つたからには、今度こそ定価の文庫、いや単行本を買ひますから。京都で言ふお愛想ではありません、けして。

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