2011-02-27

鯨統一郎「タイムスリップ明治維新」講談社文庫(390・used)。呆れて口がきけない。半分も読まないうちに興味が失せた。これを小説と呼ぶのでせうか。読み物だらうね。人間がどう、といふ話ではない。答へが出てゐるものをなぞつてゐるだけ。それに付き合はされるだけ。うららは簡単に維新関係者と寝ちまふし、女と寝たくらゐで肝心なことをベラベラ漏らしてしまふはうも情けない話で、そんなことで明治維新といふ革命が実現したのなら、逆に江戸時代つて何だつたの?だよ。軽くねえ?誰が喋つてるかも不明な書き方は相変はらずだし、下級武士が上級武士との身分差の不満が明治維新にかかはつてるかのやうな記述があるけど、山本博文「学校では習わない江戸時代」によれば、恰も無礼打ちが横行してもゐたかのやうな印象がある江戸時代だけど、綱吉以降は建前になつてゐたやうなので、幕末の侍には当て嵌まらないのではないか。

2011-02-23

由良三郎「白紙の殺人予告状」双葉文庫(389・used)。エッセイ「ミステリーを科学すれば」が面白かつたので、いつか実際のミステリを読みたいと思つてゐた。解説にもあつたけど、推理小説と呼ぶよりも探偵小説でせう。白紙の手紙を見て、他人の手紙だつたらなほさら、水につけたり炙つたりしないでせう。ここが納得できない。盗み読みでは治まらない犯罪性がある。

2011-02-20

後藤明生「笑い地獄」集英社文庫(388・used)。これは初期の短篇集かな。なんでこんなに奇妙な文章が書けるんだらう。こんなに不思議な小説を書く人はゐないね。1999年8月2日没だから没後12年も経過してるのに、どうして後藤明生の全集が出ないのだらう。P257ちやうど真ん真ん中辺り「東京のど真ん中」。東京の人たちの話ですから、どうでなんせうねえ。意図的なんでせうか。

2011-02-19

佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」モーニングKC講談社全13巻(375〜387・used)。確か11巻までのセットで先づ買つた。最後の13巻がなかなか手に入らなくて結局amazon で購入。小児病棟から癌治療にかけてのところで涙腺が切れた。第8巻では涙が止まらなかつた。出版社と拗れたさうで、この続きは小学館から「新ブラックジャックによろしく」になる。続きを読むより再読かなあ。研修医の給料には愕然とするね。医は算術の現代。

2011-02-13

山本博文「学校では習わない江戸時代」新潮文庫(374・used)。これは黒本と一緒に買つた。江戸時代を中心にした読み物としては面白い。加賀百万石の参勤交代費用はざつと四億円だつた、とか。鎖国といふ法令は発せられてゐない、とか。

2011-02-12

福澤徹三「黒本 平成怪談実録」新潮文庫(373・used)。初めて聞く名前。ほんとに黒い本で、怖い話を集めて纏めたもの。文庫書き下ろしださうだ。恐いもの見たさで一気に読んでしまつた。長いものもあるし、同じ人が続けて出て来るものもある。怖いかどうかは人によるかもしれないが、不思議な話ではある。信じられない人もゐるでせう。オレは信じるけど。

2011-02-03

ジェイムズ・エルロイ/吉野美恵子訳「ブラック・ダリア」文春文庫(372・used)。去年の8月「ねずみの騎士デスペローの物語」を読んで以来の翻訳物!自分でもびつくりした。因みに解説には表紙の女性がブラック・ダリア、つまりエリザベス・ショートだと書いてあるが、オレが持つてるのはブライアン・デ・パルマの映画でベティ役をやつてた子(ミア・カーシュナーでした、wiki調べ)の写真。小説より先にこの映画をレンタルDVDで見てゐる。読みをへてからもう一度見て呆れた。すつかり内容なんて忘れてたんだねえ。ケイ・レイクがスカーレット・ヨハンソン!全然ちげーよ、イメージと。もつと引き締まつた印象の人ぢやないとダメ。更にマデリンがヒラリー・スワンク!ぢけーよ、全然。金持ちの娘で、実の父親はハンサムだつていふ設定だぜ。どうしたのデ・パルマ、つて配役。しかも、マデリンとベティ・ショートはそつくりだつた、と原作はなつてるし、映画の中でも似てるといふ設定だけどさあ、ヒラリー・スワンクとミア・カーシュナーはまつたくの別人でせう、どう見ても。似てると思ふ人ゐるのかなあ。余談だが、主人公は本ではバッキー・ブライチャートとなつてるけど、映画ではブライカートと呼んでたよ。映画の話はここまで。原作と映画が違ふのはあたりまへだけど、小説ではメキシコまで脚を伸ばして展開するところなどが省かれてゐた。そりやさうだ、570頁もある厚い本だから。かういふのをノワールだかノアールだかと呼ぶらしいが、犯罪小説と警察小説を足した感じ。犯人探しや意外な人物の事件への関与など、ミステリとしての面白さもある。1947年に実際に起つた未解決の事件を題材に真犯人を指摘するといふ離れ業をやつてる。関係者から苦情や訴へはなかつたのかね。地名やらなにやら少々頭に入らないところもあつたが、充分面白かつた。エルロイの母親は彼が10歳のときに誰かに殺され、17歳のときには父親が死んでしまふといふ境遇だつたさうだ。「LAコンフィデンシャル」つてのも書いてて、これもまた映画になつてゐて、それも見たことがある。贔屓のケビン・スペイシーが出てるけど、嫌ひなラッセル・クロウも出てる。これも面白かつた、VHSのレンタルだつたけど。原作は上下2冊。うーん、ちよと満腹だなあ。最後にホントに蛇足なんだけど、p198真ん中辺りの下のはう「どまんなか」、p339の1行目「どまんなか」。そこだけ関西弁はやめてほしいなあ。黒川博行ぢやないんだから。