2010-03-28

ディーン・クーンツ/松本剛史訳「ミスター・マーダー」上下・文春文庫(258.259・used)。途中でやめられなくなる。例へば、ハリウッド映画のSFホラーのやうな世界。それは「ライトニング」にも「ストレンジャーズ」にも言へる。大掛かりで、非日常的な──映画の世界ではタイム・スリップも宇宙船もクローン人間もあたりまへだが小説では未だにSF的だと一段低く見られる傾向がある──仕掛けが隠され、反体制的な立場に立たされた主人公が多くの犠牲を払ひつつも辛くも逃げ切り、ラストはハッピー・エンド。武器や情報機器、科学や医学などの新しいデータ(こつちが知らないだけ)が溢れ、家具やインテリアの知識も豊富だし、描写も細かい、呆れるほどに。スティーヴン・キングと比べられることがあるやうだが、キングとは書き方が違ふ気がする。いま「シャイニング」を読み始めてゐるのだが、細かさの質が違ふやうに思ふ。クーンツはやや理屈つぽい感じ。

2010-03-11

赤川次郎「人畜無害殺人事件」(257・used)を読んだ。4篇の連作短篇集。これに出てくる大貫警部、井上刑事、向井直子の3人は、シリーズのやうだ。大貫の強烈さは、ちよつとフロストを思はせるが、フロストほど不眠不休の警部でないのが残念。犯人の意外性、話の運びの早さ、軽いと言へば言へるけど、善人ばかりではないし、それなりに面白く読めた。

2010-03-08

岩明均「七夕の国」全4巻・小学館(253〜256・used)を読む。なんとなく手にしてパラパラとめくつたら、面白さうで、ちやうど4冊並んでゐて、4冊目の裏表紙を返して見ると全4巻となつてゐたので買ふことにした。なかなか面白かつた。後半になると謎解きの部分が呑み込みにくく、一気に読み終へることはできなかつた。簡単に言へば伝奇もの、特殊な能力を持つた人たちの話だが、七夕の話やグレゴリオ暦や太陽暦の話、更には未知との遭遇、クーンツのストレンジャーズ風の展開もある。絵が几帳面で丁寧なところが好ましい。