2008-11-30

167.雨に殺せば

黒川博行・文春文庫(used)
謎解きとしても、前作「二度のお別れ」よりも力が入つてゐる。謎解き部分はちよつと急いでる気がするのだが。銀行に対する痛烈な批判があるが、作者の個人的な恨みでもあるのではと思ふほど。因みにこの文庫の表紙絵は黒川博行。

2008-11-29

166.二度のお別れ

黒川博行・創元推理文庫(used)
いまのところ安心して読める人。これがデビュー作。「てとろどときしん」で探偵役だつた大阪府警のクロマメコンビのデビュー作でもある。これも間違ひなく楽しめた。長さもちやうどいい。一気に読める。後半のテンポの速い展開は緊張感もあつて、ちよつとハードボイルド的でもあつた。が、この終りかたは物足りない。クロマメコンビに解決させてほしかつた。この2人、華がない、といふ理由でサントリーミステリー大賞で佳作になつたさうだ。変な理由。

2008-11-27

165.空飛ぶ馬

北村薫・創元推理文庫(used)
どうも苦手な文章で、ペダンチックなところはまあOKなんだけど、通ぶつてる感じがするんだなあ。学のない僻みもあるが。解説にもあるし、評判通りの日常生活の中にある謎を見事に解決するところは面白いのだが、地の文がどうにもイヤだ。母を母上と呼ぶが、父は父。女子大生言葉的だといふことか、「けれど」の連発。5篇それぞれ工夫がある。「胡桃の中の鳥」は纏まりがない印象。「赤頭巾」が一番面白かつた。これはシリーズになつてゐて、「夜の蝉」が日本推理作家協会賞を受賞してゐる。これはデビュー作品集。これだけで充分かな。

2008-11-24

164.カウント・プラン

黒川博行・文春文庫(used)
ちよつと前に「てとろどきしん」を読んで面白かつたので、買つてみた。最初の「カウント・プラン」を読みをへて思はず「すばらしい」と書き込みをしてしまつたくらゐだ。全部で5作品。どれも工夫があつて充分楽しめた。読みをはるのが惜しかつた。もつと読みたい。「カウント・プラン」が日本推理作家協会賞短篇賞を受けたさうだが、当然だらう。「オーバー・ザ・レインボー」も好きだな。解説は東野圭吾。

2008-11-17

ひぐらしのなく頃に(第一話 鬼隠し篇 上・下)

竜騎士07・講談社BOX
息子から、読んでみる?と手渡されて、半年過ぎてしまつた。借りたときにパラパラと見た限りでは、とても読めない本だつた。これは正にゲームだね。主人公や主な登場人物の年齢さへも不明だ。このラストから遡れば、物語は成り立たない。しかも第一話ではなにも解決しないのだ。この文章がどうにかならないと、次を読む気にならない、悪いけど。ここには前提になつてゐるものがある。その部分の説明が一切ない。それは想像力ではどうにも補えないものなんだよ。←第一章しか読んでないので、冊数から外した(2015.07.08)

2008-11-11

163.煙か土か食い物

舞城王太郎・講談社NOVELS(used)
題名について一言。煙が土か○○か食い物、といふ風に、もう一つ入つたはうがオレはリズムが取り易い。余計なことだが。内容について。苦手だ。かうしたハードボイルド寄りの、暴力だの、グロテスクな描写が多い読み物をノワールと称するのかどうか知らないが、主な登場人物の熱い言ひまはしの台詞が空回りして聞こえる。なにかの賞の選評で、石原慎太郎と宮本輝がクレームをつけ、池沢夏樹と山田詠美が推したといふ理由もなんとなく理解出来る。これだけでたくさんだね。世代が違ふ気がした。詰まらないとは言はないが、ほかにも読みたいとは思はない。

2008-11-03

162.無名仮名人名簿

向田邦子・文春文庫(used)
読んだことがあるかもしれないな、と思ひつつ買つた。半分をちよつと過ぎた辺りの「目をつぶる」といふ章の途中で、この話は読んだ気がする、と思つた。誰かの引用かもしれない。他にはさういふ箇所はなかつたので再読扱ひはしなかつた。端正な人だな、と感じた。「思ひ出トランプ」は読んでゐる。そして勿論「時間ですよ」、「寺内貫太郎一家」は見てゐた。直木賞を受賞した翌年、1981年に航空機事故での亡くなつたことは記憶にある。享年51歳。抜いちやつたなあ。世代はずゐぶん離れてゐるのに(向田邦子は1929年生まれ)、生活感はそれほど離れてゐる気がしないのだが、ご不浄はさすがに古く感じた。