2011-12-24
2011-12-20
四方田犬彦「「かわいい」論」ちくま新書(423・used)かはいい、は「可哀想」かはいさうの親戚、或は兄弟だと思ふ。オレはこの言葉を連発されるのが嫌ひだ。小さいもの、幼いものに向けられた「かはいい」以外は許せない。優位に立つたヤツが誰かや何かを見下してゐる現場に立ち会ひたくないからだ。かはいい、と一度も口に出したことがないテレビ・タレントがゐるだらうか。日本テレビの、曜日は忘れてしまつたが、なんとか動物園といふ番組でこれを連発する女のタレントがゐて、鬱陶しくて仕方がない。かうした動物が出て来る番組は基本的に嫌ひ(動物虐待ぢやないかとさへ思つてゐる)で、更にこの「かはいい」連呼に呆れ果てて、そのタレントも大嫌ひになつたし、番組も一切見なくなつた。
2011-12-16
貫井徳郎「迷宮遡行」新潮文庫(422・used)「慟哭」が面白かつたので、買つてみた。とつぜんの妻の失踪を追跡するうちに事件に巻き込まれて行く話。暴力団抗争と絡ませなくてもいいんぢやないのかなあ。妻の素性が二転三転して、結果は大胆だけど、動かせないストーリーの骨組みが先にあるからさうなつた、といふ気がする。P54をはりのはうで、電気のメーターボックスにある合鍵を偶然見つける件り。「腹立ち紛れに、メーターボックスを開けてみた。」止むを得ないかも知れないが、出来過ぎでせう。P98妻に似た人と妻と妻の妹と佐久間の妹が入り乱れて区別ができない。終盤(31の部分)の主人公の行動は判らなくもないが、強引な気もした。警察官の兄がゐて、一応は助けられてもゐるワケで、それでも取れる行動だらうか。「天使の屍」でも納得できないところがあつたし、しばらく貫井作品には手を出さないことにしよう。
2011-12-10
2011-12-05
2011-11-20
古谷実「シガテラ」1〜6講談社ヤンマガKC(414〜419・used)。「わにとかげぎす」「ヒミズ」と読んで来て、ぜひ読みたいと思つてゐた。それが全巻揃つて棚にあつたら当然買ふよね。デビュー作の「稲中卓球部」も1を読んだけど続きを読む気にはならなかつた。「ヒミズ」──最近映画になつた──のまへに「僕といっしょ」「グリーンヒル」などがあるが、これらもなかなか全巻揃つて並んでゐることはない。で、「シガテラ」。ごく普通の男が奇麗な女の子に好かれるといふ設定は、「わに」もさう。途中、犯罪が絡んで来るところも似てる。最後の南雲さんとの関係がどうしてさうなの?と思つたが、それもまた青春といふものさ、さういふ意味なのかな。因みにシガテラは食中毒の一種(wikipedia)。
2011-11-14
2011-11-13
2011-10-30
2011-10-24
2011-10-15
2011-09-25
2011-09-23
2011-09-18
2011-09-07
2011-08-20
2011-07-31
2011-07-22
2011-07-20
2011-07-16
2011-07-11
鮎川哲也「黒いトランク」創元推理文庫。決定版と呼ばれるもの。書き加へたり削つたりしてきたけれども、これを完成品とします、といふことなのでせう。以前、hiko8さんから指摘があつた空のトランクの重量が19.8kgと19.1kgになつてゐることについて。角川版でも、この決定版でもさうなつてゐる。トランクの購入者を調査した際にトランクの製造元が重量に差があつても0.1から0.2kgだと丹那刑事が鬼貫に伝へるところがある(角川版P169、光文社初刊版P200、創元社決定版p194)。そして凡ての版でトランクの動きを表にしたところには、最初のトランクが19.8kg、次に空になつたトランクが19.1kgになつてゐる。これには一切の説明がない。光文社の初刊版では芦辺拓が丁寧な解説を付しているが、そのことには触れてゐないし、創元社の決定版でも有栖川有栖、北村薫、戸川安宣の細かい部分を比較した対談でも触れてみゐない。困りましたねえ。まあ、これは再び時間を見てゆつくり読んで確かめるしかないでせう。説明してあるのに見落とし、読み落としてるのかも知れないので。
2冊続けて読んでみて、最初の印象よりも「凄さ」が感じられなかつた。こんな面倒なトランクの移動なんかしなくても、いいんぢやないの?と。これは先にトリックがあるんだよ、作者もさう書いてるけど。人物や話そのものの面白さをトリックが幾分削いでしまつてゐるやうな気がする。
さて、オレが最初に読んだ「黒いトランク」は角川版で、今回初刊版と読み比べると、ずゐぶん削られてゐるのがわかつた。既に書いた汐留駅の蘊蓄、梅田警部補の風貌がまるで違ふだけでなく、梅田が北原白秋に傾倒してゐる部分などが削除されてゐるから、由美子が鬼貫に「詩人警官」だ、なんて言つてもチンプンカンプンだ。この決定版は概ね初刊版に近づいてゐるから、その辺りはどつちを読んでも同じ。ただ、スリの話がすつかり削られた理由が小林信彦のエッセーだといふので、その理由が知りたくなつた。
2冊続けて読んでみて、最初の印象よりも「凄さ」が感じられなかつた。こんな面倒なトランクの移動なんかしなくても、いいんぢやないの?と。これは先にトリックがあるんだよ、作者もさう書いてるけど。人物や話そのものの面白さをトリックが幾分削いでしまつてゐるやうな気がする。
さて、オレが最初に読んだ「黒いトランク」は角川版で、今回初刊版と読み比べると、ずゐぶん削られてゐるのがわかつた。既に書いた汐留駅の蘊蓄、梅田警部補の風貌がまるで違ふだけでなく、梅田が北原白秋に傾倒してゐる部分などが削除されてゐるから、由美子が鬼貫に「詩人警官」だ、なんて言つてもチンプンカンプンだ。この決定版は概ね初刊版に近づいてゐるから、その辺りはどつちを読んでも同じ。ただ、スリの話がすつかり削られた理由が小林信彦のエッセーだといふので、その理由が知りたくなつた。
2011-07-09
2011-06-27
坂口安吾「信長」宝島社文庫(399)。一気に読んだ。読み始めるまでは、なんか気乗りしなくて、何度も棚から出してはペラペラめくるけど、読まうといふ気になれない、さういふ日が続いた。なんで信長か、と言ふと、娘が織田信長が好きだ、と言つた、その一言で、信長調べてみるか、とamazonで関係の本を物色するも、意外に少ないんだね。数は多い。どつちなんだと言はれるかも知れないが、歴史上の人物として書いてるものは多いけど、読み物的な、小説などは意外に少ない。なんで、さういふ探し方をしたか、と言ふと娘にも読ませたいと思つたからで、結局面白さうなのは坂口安吾かなあ、に落ち着いたといふワケだ。ほかには司馬遼太郎もなんとかいふ題の小説で斎藤道三と織田信長を書いてるけど、なるべく司馬遼太郎は読みたくないんで(まだ一冊も読んだことない!それが自慢、何に対する自慢かは本人にも不明、山本周五郎も一冊も読んだことないぞ!)。あと辻邦生の「安土往還記」つてのもあつたけど、中学生向きではないな、と思つたのでした。
で、この「信長」は桶狭間までしか扱つてないのが物足りないけれども、実に嬉しい人物として書かれてゐる。斎藤道三もいしし、濃姫もいいねえ。「マムシ敗れたり」のP231の終りから6行目からの5行は感動的。細かい城の位置だの地名だの人名、年号などは覚えてないが、面白い。安吾つて48歳で死んだんだつてねえ。知らなかつた。信長も。
で、この「信長」は桶狭間までしか扱つてないのが物足りないけれども、実に嬉しい人物として書かれてゐる。斎藤道三もいしし、濃姫もいいねえ。「マムシ敗れたり」のP231の終りから6行目からの5行は感動的。細かい城の位置だの地名だの人名、年号などは覚えてないが、面白い。安吾つて48歳で死んだんだつてねえ。知らなかつた。信長も。
2011-06-16
2011-06-12
2011-06-02
2011-05-10
2011-05-05
三友恒平「必要とされなかった話」IKKICOMIX小学館(394・used)始めて見る絵で、しかも1巻ものだつたので買つてみた。童話といふか、絵本のやうな絵で、鉛筆画ぢやないかと思つた。或る村で村人が預けてゐる食料倉庫が焼け、食べるものが乏しくなり、村長の判断で6人の人間が村から追放になる。その村で誰からも必要だと指名されなかつた人たちだ。たつた1人の肉親である姉が婚約者を選んだため、誰からも必要とされなかつた、その中の1人の少年・織春(オリハルと読む)が主人公。なにが言ひたいのか、よく判らなかつた。始めのはうで、村長と織春とが会話する中に、織春は流行病によく効く薬を一つだけ持つゐるといふ話が出て来るが、その後、その話には触れられない。倉守の家の火事については、もつと徹底的に出火原因を調べるのではないか。兎に角不思議な絵で、ほかにどんなものを書いてゐるのか、ちよつと知りたくなつた。
2011-04-27
2011-04-09
2011-03-09
鯨統一郎「タイムスリップ森鷗外」講談社文庫(391・used)。「タイムスリップ明治維新」には呆れたなどと書いておきながら、状態のいい本書をBookOffで見つけたので買つてしまつた。こつちのはうが面白い。現実との整合性なんてものは、はなから念頭にはないらしい。これを読むとホントに鷗外つて幾つまで生きてたんだらう、と調べたくなる(60歳で没)。なんてたつて鷗外は19歳で今の東大医学部卒業だから、相当優秀なエリート。現代へやつて来て、携帯、ワープロ、果てはパソコンでホームページ作成なんてことも充分こなせる気がする。一応ミステリなので犯人が登場するが、推理は面白くても真犯人が誰だらうと構はない。作者が楽しんで書いてるのは充分判ります。
2011-02-27
鯨統一郎「タイムスリップ明治維新」講談社文庫(390・used)。呆れて口がきけない。半分も読まないうちに興味が失せた。これを小説と呼ぶのでせうか。読み物だらうね。人間がどう、といふ話ではない。答へが出てゐるものをなぞつてゐるだけ。それに付き合はされるだけ。うららは簡単に維新関係者と寝ちまふし、女と寝たくらゐで肝心なことをベラベラ漏らしてしまふはうも情けない話で、そんなことで明治維新といふ革命が実現したのなら、逆に江戸時代つて何だつたの?だよ。軽くねえ?誰が喋つてるかも不明な書き方は相変はらずだし、下級武士が上級武士との身分差の不満が明治維新にかかはつてるかのやうな記述があるけど、山本博文「学校では習わない江戸時代」によれば、恰も無礼打ちが横行してもゐたかのやうな印象がある江戸時代だけど、綱吉以降は建前になつてゐたやうなので、幕末の侍には当て嵌まらないのではないか。
2011-02-23
2011-02-20
2011-02-19
2011-02-13
2011-02-12
2011-02-03
ジェイムズ・エルロイ/吉野美恵子訳「ブラック・ダリア」文春文庫(372・used)。去年の8月「ねずみの騎士デスペローの物語」を読んで以来の翻訳物!自分でもびつくりした。因みに解説には表紙の女性がブラック・ダリア、つまりエリザベス・ショートだと書いてあるが、オレが持つてるのはブライアン・デ・パルマの映画でベティ役をやつてた子(ミア・カーシュナーでした、wiki調べ)の写真。小説より先にこの映画をレンタルDVDで見てゐる。読みをへてからもう一度見て呆れた。すつかり内容なんて忘れてたんだねえ。ケイ・レイクがスカーレット・ヨハンソン!全然ちげーよ、イメージと。もつと引き締まつた印象の人ぢやないとダメ。更にマデリンがヒラリー・スワンク!ぢけーよ、全然。金持ちの娘で、実の父親はハンサムだつていふ設定だぜ。どうしたのデ・パルマ、つて配役。しかも、マデリンとベティ・ショートはそつくりだつた、と原作はなつてるし、映画の中でも似てるといふ設定だけどさあ、ヒラリー・スワンクとミア・カーシュナーはまつたくの別人でせう、どう見ても。似てると思ふ人ゐるのかなあ。余談だが、主人公は本ではバッキー・ブライチャートとなつてるけど、映画ではブライカートと呼んでたよ。映画の話はここまで。原作と映画が違ふのはあたりまへだけど、小説ではメキシコまで脚を伸ばして展開するところなどが省かれてゐた。そりやさうだ、570頁もある厚い本だから。かういふのをノワールだかノアールだかと呼ぶらしいが、犯罪小説と警察小説を足した感じ。犯人探しや意外な人物の事件への関与など、ミステリとしての面白さもある。1947年に実際に起つた未解決の事件を題材に真犯人を指摘するといふ離れ業をやつてる。関係者から苦情や訴へはなかつたのかね。地名やらなにやら少々頭に入らないところもあつたが、充分面白かつた。エルロイの母親は彼が10歳のときに誰かに殺され、17歳のときには父親が死んでしまふといふ境遇だつたさうだ。「LAコンフィデンシャル」つてのも書いてて、これもまた映画になつてゐて、それも見たことがある。贔屓のケビン・スペイシーが出てるけど、嫌ひなラッセル・クロウも出てる。これも面白かつた、VHSのレンタルだつたけど。原作は上下2冊。うーん、ちよと満腹だなあ。最後にホントに蛇足なんだけど、p198真ん中辺りの下のはう「どまんなか」、p339の1行目「どまんなか」。そこだけ関西弁はやめてほしいなあ。黒川博行ぢやないんだから。
2011-01-22
で、藤原伊織「テロリストのパラソル」講談社文庫(371・used)。史上初の江戸川乱歩賞、直木賞のダブル受賞と裏に書いてあるし、解説でも絶賛してゐるけれども、読みをはつたばかりの「雪が降る」がamazonのプレビューに倣つて★★★★だとしたら、これは★★★。主人公の設定は都合良すぎるけれども、まあハードボイルドの主人公はみんなこんなものだ。細かいところで気になることが幾つかあるが、ネタバレになるかも。主人公の島村が20年以上も逃げ続けるキッカケになる車での爆弾事件は事故で処理されるのではないか。この事件で死んだ警官の妻の弟が8歳(p125)といふのは作り過ぎではないか。終はりのはうで金田一さんみたいに読み手に知らせない場面が出て来る。p252でホームレスの元医師らしい老人に何を聞いたのか書いてないし、p292でも江口組の上部組織の構造を週刊誌の記者に聞いてゐるが、答へた内容が書いてない、など。p296飲み屋での喧嘩のくだりは、なくても物語に特に影響がない気もするし、犯人が爆弾事件はテロだと言ふけど、単なる私怨だし、ホントに人でなしにしか思へない。その辺りが気になつて、華々しい受賞ほどには面白くなかつた。「雪が降る」のはうがよつぽど面白い。
2011-01-18
2011-01-15
2011-01-09
湊かなえ「告白」双葉文庫(367・used)を読む。第一章「聖職者」で小説推理新人賞、書き継がれたこの「告白」で「週刊文春08ミステリーベストテン」で第一位、第6回本屋大賞も受賞したベストセラーださうだ。映画にもなつたやうだ。作者の名前を見たことがあるなあ程度で手に取り、スラスラ読めるので買つた。一気に読ませる。ミステリとしても面白く読める。教室での喋りに始まり、手紙、日記、ネット上のテキスト、携帯電話の喋りなどスタイルはかはつてはゐるが、要は語り、喋りのスタイルのヴァリエーション。荻原浩の「神様の一言」もさうだつたが、コミックに近い印象。それが悪いと言つてゐるのではない。それが軽いと言つてゐるのでもない。小説の質が変はつてゐるんだな、と思つただけ。それとこれは貫井徳郎の「天使の屍」でも書いたが、中学生の虐めや自殺、殺人をかういふ形で小説にしてほしくない。問題提起なら別の形で書いてくれないか、と思ふ。現実に起つてゐるのに目を背けるのは卑怯だ、と言ふなら卑怯者で結構。現実だけでたくさんだよ。
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