2011-12-24

東川篤哉「謎解きはディナーのあとで2」小学館(424)娘の本を借りて読んだ。前作とほぼ同じ。すらすらと読める。書き下ろしの第6話のトリックは作りすぎだと思ふんだけど。

2011-12-20

四方田犬彦「「かわいい」論」ちくま新書(423・used)かはいい、は「可哀想」かはいさうの親戚、或は兄弟だと思ふ。オレはこの言葉を連発されるのが嫌ひだ。小さいもの、幼いものに向けられた「かはいい」以外は許せない。優位に立つたヤツが誰かや何かを見下してゐる現場に立ち会ひたくないからだ。かはいい、と一度も口に出したことがないテレビ・タレントがゐるだらうか。日本テレビの、曜日は忘れてしまつたが、なんとか動物園といふ番組でこれを連発する女のタレントがゐて、鬱陶しくて仕方がない。かうした動物が出て来る番組は基本的に嫌ひ(動物虐待ぢやないかとさへ思つてゐる)で、更にこの「かはいい」連呼に呆れ果てて、そのタレントも大嫌ひになつたし、番組も一切見なくなつた。

2011-12-16

貫井徳郎「迷宮遡行」新潮文庫(422・used)「慟哭」が面白かつたので、買つてみた。とつぜんの妻の失踪を追跡するうちに事件に巻き込まれて行く話。暴力団抗争と絡ませなくてもいいんぢやないのかなあ。妻の素性が二転三転して、結果は大胆だけど、動かせないストーリーの骨組みが先にあるからさうなつた、といふ気がする。P54をはりのはうで、電気のメーターボックスにある合鍵を偶然見つける件り。「腹立ち紛れに、メーターボックスを開けてみた。」止むを得ないかも知れないが、出来過ぎでせう。P98妻に似た人と妻と妻の妹と佐久間の妹が入り乱れて区別ができない。終盤(31の部分)の主人公の行動は判らなくもないが、強引な気もした。警察官の兄がゐて、一応は助けられてもゐるワケで、それでも取れる行動だらうか。「天使の屍」でも納得できないところがあつたし、しばらく貫井作品には手を出さないことにしよう。

2011-12-10

黒川博行「絵が殺した」徳間文庫(421・used)これも「暗闇」と一緒に買つた。こつちは刑事が探偵。クロマメコンビとは別の大阪府警。贋作事件を扱つたもので、事情に詳しいのは黒川博行が美大卒のせゐだらうか。警察もののはうが好きだなあ。クロマメコンビが特に。

2011-12-05

黒川博行「暗闇のセレナーデ」徳間文庫(420・used)久し振りに見つけた黒川博行。たぶん表紙は奥さんの絵でせう。美大へ通ふ二人の女子大生が探偵。美術界の裏世界。題名の意味がいま一つ。余計な疑問かもしれないが、アトリエの中に粘土槽がある。それを警察は掘り返したりしないのだらうか。ま、そこで殺人があつたわけぢやないから、と言はれたらそれまで。狭山事件では容疑者の自宅の肥溜めの中まで調べたといふので、ちよつと気になつた。P99の7行目、「刑事部長」は「刑事部屋」の誤植でせう。「刑事部長には田村と浜野がいた」はをかしいから。

2011-11-20

古谷実「シガテラ」1〜6講談社ヤンマガKC(414〜419・used)。「わにとかげぎす」「ヒミズ」と読んで来て、ぜひ読みたいと思つてゐた。それが全巻揃つて棚にあつたら当然買ふよね。デビュー作の「稲中卓球部」も1を読んだけど続きを読む気にはならなかつた。「ヒミズ」──最近映画になつた──のまへに「僕といっしょ」「グリーンヒル」などがあるが、これらもなかなか全巻揃つて並んでゐることはない。で、「シガテラ」。ごく普通の男が奇麗な女の子に好かれるといふ設定は、「わに」もさう。途中、犯罪が絡んで来るところも似てる。最後の南雲さんとの関係がどうしてさうなの?と思つたが、それもまた青春といふものさ、さういふ意味なのかな。因みにシガテラは食中毒の一種(wikipedia)。

2011-11-14

井上夢人「あわせ鏡に飛び込んで」講談社文庫(413・used)。岡嶋二人の作品は好きなので、何冊か読んでる。一人になつてからのものは、どうだつたらう。おなしな二人は図書館で借りて読んだやうな気がする。これには10の短篇があり、現実にはありさうもないが、あつてもをかしくなくて、あつたら怖い話。

2011-11-13

野崎昭弘「詭弁論理学」中公新書(×2)。5年前に再購入したもの。知人に貸して、それきりになつてゐた。一度読んでゐるので再読扱ひ。始めのはうに出て来る3つのパズル。13人を12の部屋に入れる問題、レコードの値引きとお釣りの問題はなんなく解けた。二人の天使にどつちが天国へ行く道か聞く問題はちよつと時間が掛かつたが、ほぼ正解できた。P118〜の年間降水量を土地の広さで計算し直し、人口で割ると日本はけして水が豊富な国ではないといふ結果が出るのは面白い。それとP135でアナトール・フランスの少年少女の話が取り上げられてゐるけれど、すつかり忘れてゐたので、もう一度読み返したくなつた。
業田良家「世直し源さん」1〜3(×2)。寝る前に読んでゐた。買つたときと同じで途中でやめられなくなり、何度か夜更かししてしまつた。記憶では2巻の終りで出て来る尻崎良人がもつと源さんと絡んで邪魔をするやうな気がしてゐたんだけど。兎に角面白かつた。

2011-10-30

池波正太郎「江戸の暗黒街」角川文庫(412・used)。短篇集。題名が時代小説らしくないのは、意図的なものか。なんとも、人生の皮肉さや意地悪さを知り抜いてゐると思はせる物語ばかり。皮肉な結末がたくさんあるけれども、突き放すのではなく、それもまた人生さ、と言つてる気がする。大人の小説、読み物。池波正太郎はもしかしたら、読み物としての小説を目指してたのかなあ。

2011-10-24

ジョナサン・キャロル/浅葉莢子訳「死者の書」創元推理文庫(411)。そもそも、なぜ原書のタイトル「笑いの郷」ではないのか。理由が判らない。それと比喩が煩くて読み難い。根本的な仕掛けのところが受け入れられない。短篇集は面白かつたし、これも面白いんだけど、たぶん、もうジョナサン・キャロルを読むことはないと思ふ。

2011-10-15

茂木健一郎「ひらめき脳」新潮新書(410・used)。始めに4枚の絵が出て来る。3枚目の白黒の絵が判らなくて、ネットで同じ絵を見たら判つた。幾つかメモしたことがある。気づかないことに気づく能力、非線形、セレディビティ(思はふ幸運に偶然出会う能力)、「幸運は準備のできたものに味方する」Chance visits the prepareded mind=パスツールの言葉。なかなか面白い本でした。

2011-09-25

西村京太郎「殺しの双曲線」講談社文庫(409・used)。実に面白かつた。一気に読んでしまつた。双子のトリックと予め書いてあり、小柴といふ双子の兄弟が出てきて、逆にそれで騙された。昔読んだ西村氏の作品、その後読んだものも含めて、一番面白かつた。忘れてるものもあるけど。

2011-09-23

夢枕獏「陰陽師」文春文庫(408・used)。映画にもなつた安倍晴明の話。東海林さだおみたいに文章が短いのと改行が早いので読みやすい。呪(しゅ、と読む)についての対話が面白い。名前も呪だと言う安倍晴明。正にさうだな、と思ふ。清明の家が草が生え放題の庭、といふので、吉田健一の金沢を思ひ出した。続篇があれば読みたいし、レンタルDVDで映画も見やうか。

2011-09-18

鮎川哲也「早春に死す」光文社文庫(407・used)。黒いトランクの別ヴァージョンを続けて読み返して以来、トリックの扱ひが矢鱈と気になる。ここにあるのは、どれもトリックが目立つて余り感心しなかつた。「急行出雲」なぜ容疑者を目撃者に合はせないのだらう。声が違ふんぢやないの? 「下りはつかり」セーターのトリックは無理があるのでは? 裏返したら、肩の編目とかが拡大すればわかつてしまふのではないか。ラグランショルダーですか? 4時間の空白が出来るけど、写真を撮つた奥さんが一緒だつた筈だから、どこで釣をしてゐたか、などを聞いたらアリバイが成立しないんぢやないの?

2011-09-07

滝沢解・作/池上遼一・画「モッブ」HMBホーム社文庫・集英社(406・used)。最後にどんでん返しがある。結末から振り返ると、全体がやや強引な気もする。大阪府警の、親ツさんと呼ばれる刑事は過剰なデフォルメでは?銀八の実家の洗濯機に書かれた血の文字は誰がいつ書いたのか。静はいつどうやつてガスマンこと木村光男の素性を知つたのか。また静はその後どうなつたのか。終盤はちよつと文学的で読み難かつた。しかし、それでも池上遼一の絵は素晴らしい。

2011-08-20

岡嶋二人「なんでも屋大蔵でございます」新潮文庫(405・used)。この語りで井伏鱒二の「駅前旅館」を思ひ出した。柊元旅館の番頭、生野次平が思はせぶりたつぷりに喋りまくる「駅前旅館」は面白い。これももちろん面白かつたが、森繁とフランキー堺の映画のはうを先に見て原作が井伏だと知り買つて読んだのだ、たぶん。映画のはうはもう内容をよく覚えてゐないけれども、原作はいつでも読み返せるやうに手の届くところにある。──さう、岡嶋二人の小説の話だつた。第一話「浮気の合間に殺人を」は偶然雑誌掲載時に見たことがある。読んではゐない。ほかの目的で買つたのだらう。そこに載つてた記憶がある。全5編。なかなか。

2011-07-31

野澤重雄「ハイポニカの不思議」PHP文庫(404・used)。これは絶版で中古で手に入れた。読んでゐて意味がわからないところがずゐぶんあつたけれども、それは学のなさ、不勉強の致すところで止むを得ない。一株で通常20〜30個の実を実らすトマトが、13,000個の実を実らすといふ驚き。しかも多年草になるといふ。L・ワトソンのサボテンの話を思ひ出すし、百匹目の猿の話も。生命は現在の科学ではまだ説明できない。そこにデカルト以降の科学の限界がある。
はやみねかおる「都会のトム&ソーヤ①」講談社YA!ENTERTAINMENT(403)。これは二三年前、娘の誕生日プレゼントで買つたものを借りて読んだ。このシリーズが何冊か集まつて来たのでオレも読んでみようと思つたのだ。新しく(BookOffで探してまで)何か読むのが幾らか億劫になつた。先が長くないもので、未読の本が貯まるのは勿体ない、と。──で、文章は今風で、描写でもなく、心理でもない、ただの説明なんだけど、さういふことを言つたら読めない。小説と呼ぶより読み物だなあ。筋はまあ、こんなもんでせう。
手塚治虫「ショート・アラベスク」講談社(402・used)。手塚治虫漫画全集の239巻。15篇の短いものが収録されてゐる。立ち読みして面白さうだつたので。他にも物色したけど、これだけ買つた。平均点はクリアしてるんでせうね。

2011-07-22

都筑道夫「目撃者は月」光文社文庫(401・used)を読む。何度か途中で読むのをやめた。面白いんだけど、話がわからない、意図がよくわからないのがあつたりして、最後まで読めない、と諦めたこともあつたけれども、どうにか読み終へた。よく作られた、達者な職人芸です。

2011-07-20

東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」小学館(400)を読んだ。どういふ経緯か覚えてないが、娘に読んでみるかい?といふつもりで買つたのだ。読み終はつた、といふので読んだ。なにかの賞を取つてたのと、執事とお嬢様を主役にした謎解きといふことで、ちよつと興味があつた。普通なら買つて読むことはないでせう。
安楽椅子探偵もの。アームチェアディテクティブズと言ふのとどつちが言ひ易いだろ。なかなか面白い。執事影山がお嬢様刑事の宝生麗子に大して発言する大胆なコメントが売り。曰く「お嬢様の目は節穴でございますか」。この二人の日常がもつと書かれてゐると更に良い。影山の推理は見事でも、事件はそれほど複雑ではない。

2011-07-16

都筑道夫の「夜のオルフェウス」を読み返した。とつぜん、どうしても読みたくなつたのだ。これはhiko8さんから教はつた傑作短篇で、オレも読んでゐたのに、その面白さを読み落としてゐたものだ。
これはいいねえ。もしも、オレに映画を撮るチャンスがあつたら、ぜひ映像にしてみたいと思ふものの一つだ。
それからもう一つ、映像にしてみたいもの、──結城昌治の「あるフィルムの背景」。これは文句なしの傑作で、これをモノクロで撮りたいと思つてゐる。今回結城昌治の同名タイトルの短篇集を読み返して「私に触らないで」も面白かつた。これは落語好きな(特に志ん生好きな)氏らしい一種の「湯屋番」風の独り言が読める。

2011-07-11

鮎川哲也「黒いトランク」創元推理文庫。決定版と呼ばれるもの。書き加へたり削つたりしてきたけれども、これを完成品とします、といふことなのでせう。以前、hiko8さんから指摘があつた空のトランクの重量が19.8kgと19.1kgになつてゐることについて。角川版でも、この決定版でもさうなつてゐる。トランクの購入者を調査した際にトランクの製造元が重量に差があつても0.1から0.2kgだと丹那刑事が鬼貫に伝へるところがある(角川版P169、光文社初刊版P200、創元社決定版p194)。そして凡ての版でトランクの動きを表にしたところには、最初のトランクが19.8kg、次に空になつたトランクが19.1kgになつてゐる。これには一切の説明がない。光文社の初刊版では芦辺拓が丁寧な解説を付しているが、そのことには触れてゐないし、創元社の決定版でも有栖川有栖、北村薫、戸川安宣の細かい部分を比較した対談でも触れてみゐない。困りましたねえ。まあ、これは再び時間を見てゆつくり読んで確かめるしかないでせう。説明してあるのに見落とし、読み落としてるのかも知れないので。
2冊続けて読んでみて、最初の印象よりも「凄さ」が感じられなかつた。こんな面倒なトランクの移動なんかしなくても、いいんぢやないの?と。これは先にトリックがあるんだよ、作者もさう書いてるけど。人物や話そのものの面白さをトリックが幾分削いでしまつてゐるやうな気がする。
さて、オレが最初に読んだ「黒いトランク」は角川版で、今回初刊版と読み比べると、ずゐぶん削られてゐるのがわかつた。既に書いた汐留駅の蘊蓄、梅田警部補の風貌がまるで違ふだけでなく、梅田が北原白秋に傾倒してゐる部分などが削除されてゐるから、由美子が鬼貫に「詩人警官」だ、なんて言つてもチンプンカンプンだ。この決定版は概ね初刊版に近づいてゐるから、その辺りはどつちを読んでも同じ。ただ、スリの話がすつかり削られた理由が小林信彦のエッセーだといふので、その理由が知りたくなつた。

2011-07-09

鮎川哲也「黒いトランク」光文社文庫。「黒いトランク」の初刊版。作品としては同じものなので再読扱ひ。ゆつくり時間が取れるやうになつたら読み比べてみよう、と漠然と思つてゐたが、それツて一体いつ来るのか、そのまへに死んでしまふぞ、で読み始め、角川文庫版の記憶は曖昧なのに、なんとなく違ふ印象。鬼貫が登場する「古き愛の唄」に入るまへに一旦読むのを中止して、角川版を読んでみたら、ずゐぶん違ふ。ただ、汐留駅についての記述は角川版でも読んだ気がするのだが。手元にある角川版には、ない。これは再購入したものだから仮に角川版に複数の版があれば、さういふこともある。内容については、創元の決定版を読んでからにしよう。

2011-06-27

坂口安吾「信長」宝島社文庫(399)。一気に読んだ。読み始めるまでは、なんか気乗りしなくて、何度も棚から出してはペラペラめくるけど、読まうといふ気になれない、さういふ日が続いた。なんで信長か、と言ふと、娘が織田信長が好きだ、と言つた、その一言で、信長調べてみるか、とamazonで関係の本を物色するも、意外に少ないんだね。数は多い。どつちなんだと言はれるかも知れないが、歴史上の人物として書いてるものは多いけど、読み物的な、小説などは意外に少ない。なんで、さういふ探し方をしたか、と言ふと娘にも読ませたいと思つたからで、結局面白さうなのは坂口安吾かなあ、に落ち着いたといふワケだ。ほかには司馬遼太郎もなんとかいふ題の小説で斎藤道三と織田信長を書いてるけど、なるべく司馬遼太郎は読みたくないんで(まだ一冊も読んだことない!それが自慢、何に対する自慢かは本人にも不明、山本周五郎も一冊も読んだことないぞ!)。あと辻邦生の「安土往還記」つてのもあつたけど、中学生向きではないな、と思つたのでした。
で、この「信長」は桶狭間までしか扱つてないのが物足りないけれども、実に嬉しい人物として書かれてゐる。斎藤道三もいしし、濃姫もいいねえ。「マムシ敗れたり」のP231の終りから6行目からの5行は感動的。細かい城の位置だの地名だの人名、年号などは覚えてないが、面白い。安吾つて48歳で死んだんだつてねえ。知らなかつた。信長も。

2011-06-16

西村京太郎「青い国から来た殺人者」光文社文庫(398・used)。どうなんだらう、この本が出た当時、フェアーぢやない、といふ意見はなかつたのか。文庫で240頁。犯人らしい人物に繋がる手がかりが判るのが150頁を過ぎたところだ。それと犯人を特定してから、逮捕までが都合良すぎないか。

2011-06-12

東海林さだお「もっとコロッケな日本語を」文春文庫(397・used)。安心して読める、いつもの東海林さだお。くどい気がしてちよつと遠ざかつてゐた。相変はらずイラストが見事だ。

2011-06-02

立川談四楼「声に出して笑える日本語」光文社知恵の森文庫(396・used)。柳亭こみちの小咄に「ねえねえ、お嬢ちやん、お父さん、ゐる?」「いらない」といふのがあつて、始めて聞いたときに大爆笑したものだつたが、この本にも落語の枕で使へさうな話が出てくる。先立つ不孝は、先立つ不幸と書いたことがあるかも知れない。名誉挽回は間違へたことはなくても、汚名返上を汚名挽回と言つたことはあるなあ。笑へただけでなく、為にもなりました。

2011-05-10

佐野洋「動詞の考察」講談社文庫(395・used)。佐野洋の短篇集は外れがない。動詞を使つたタイトルで10篇。謎があつて、それが解決する。いかにもありさうな謎があり、その解決の仕方が意外である、さういふ短篇ばかり。

2011-05-05

三友恒平「必要とされなかった話」IKKICOMIX小学館(394・used)始めて見る絵で、しかも1巻ものだつたので買つてみた。童話といふか、絵本のやうな絵で、鉛筆画ぢやないかと思つた。或る村で村人が預けてゐる食料倉庫が焼け、食べるものが乏しくなり、村長の判断で6人の人間が村から追放になる。その村で誰からも必要だと指名されなかつた人たちだ。たつた1人の肉親である姉が婚約者を選んだため、誰からも必要とされなかつた、その中の1人の少年・織春(オリハルと読む)が主人公。なにが言ひたいのか、よく判らなかつた。始めのはうで、村長と織春とが会話する中に、織春は流行病によく効く薬を一つだけ持つゐるといふ話が出て来るが、その後、その話には触れられない。倉守の家の火事については、もつと徹底的に出火原因を調べるのではないか。兎に角不思議な絵で、ほかにどんなものを書いてゐるのか、ちよつと知りたくなつた。

2011-04-27

伊達友美「夜中にラーメンを食べても太らない技術」扶桑社新書(393・used)ここひと月あまり、一冊の本を読み通す気力がない。見繕つては拾ひ読みをしてゐたが、たまたま渋川のBookOffで見つけて一気に読んでしまつた。ミルク入のコーヒーはよくない、食品添加物が体に悪い、酸化した油は大敵、牛乳や乳製品は日本人の内蔵には向かない、1日3食に固執しない、など、とても参考になりました。

2011-04-09

岡潔「春宵十話」光文社文庫(392・used)を読了。靴は長靴しか履かない、などの伝説は聞いたことがあつた。道徳にかかはる随筆集。自伝的なところもある。仏教を信仰してゐたやうだが、具体的な宗派は不明。数学は情緒であり、種を蒔いて育てる百姓(農民)に似てゐて、物理は数学とはまつたく違ふ世界であり、指物師だといふのは面白い(P53)。

2011-03-09

鯨統一郎「タイムスリップ森鷗外」講談社文庫(391・used)。「タイムスリップ明治維新」には呆れたなどと書いておきながら、状態のいい本書をBookOffで見つけたので買つてしまつた。こつちのはうが面白い。現実との整合性なんてものは、はなから念頭にはないらしい。これを読むとホントに鷗外つて幾つまで生きてたんだらう、と調べたくなる(60歳で没)。なんてたつて鷗外は19歳で今の東大医学部卒業だから、相当優秀なエリート。現代へやつて来て、携帯、ワープロ、果てはパソコンでホームページ作成なんてことも充分こなせる気がする。一応ミステリなので犯人が登場するが、推理は面白くても真犯人が誰だらうと構はない。作者が楽しんで書いてるのは充分判ります。

2011-02-27

鯨統一郎「タイムスリップ明治維新」講談社文庫(390・used)。呆れて口がきけない。半分も読まないうちに興味が失せた。これを小説と呼ぶのでせうか。読み物だらうね。人間がどう、といふ話ではない。答へが出てゐるものをなぞつてゐるだけ。それに付き合はされるだけ。うららは簡単に維新関係者と寝ちまふし、女と寝たくらゐで肝心なことをベラベラ漏らしてしまふはうも情けない話で、そんなことで明治維新といふ革命が実現したのなら、逆に江戸時代つて何だつたの?だよ。軽くねえ?誰が喋つてるかも不明な書き方は相変はらずだし、下級武士が上級武士との身分差の不満が明治維新にかかはつてるかのやうな記述があるけど、山本博文「学校では習わない江戸時代」によれば、恰も無礼打ちが横行してもゐたかのやうな印象がある江戸時代だけど、綱吉以降は建前になつてゐたやうなので、幕末の侍には当て嵌まらないのではないか。

2011-02-23

由良三郎「白紙の殺人予告状」双葉文庫(389・used)。エッセイ「ミステリーを科学すれば」が面白かつたので、いつか実際のミステリを読みたいと思つてゐた。解説にもあつたけど、推理小説と呼ぶよりも探偵小説でせう。白紙の手紙を見て、他人の手紙だつたらなほさら、水につけたり炙つたりしないでせう。ここが納得できない。盗み読みでは治まらない犯罪性がある。

2011-02-20

後藤明生「笑い地獄」集英社文庫(388・used)。これは初期の短篇集かな。なんでこんなに奇妙な文章が書けるんだらう。こんなに不思議な小説を書く人はゐないね。1999年8月2日没だから没後12年も経過してるのに、どうして後藤明生の全集が出ないのだらう。P257ちやうど真ん真ん中辺り「東京のど真ん中」。東京の人たちの話ですから、どうでなんせうねえ。意図的なんでせうか。

2011-02-19

佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」モーニングKC講談社全13巻(375〜387・used)。確か11巻までのセットで先づ買つた。最後の13巻がなかなか手に入らなくて結局amazon で購入。小児病棟から癌治療にかけてのところで涙腺が切れた。第8巻では涙が止まらなかつた。出版社と拗れたさうで、この続きは小学館から「新ブラックジャックによろしく」になる。続きを読むより再読かなあ。研修医の給料には愕然とするね。医は算術の現代。

2011-02-13

山本博文「学校では習わない江戸時代」新潮文庫(374・used)。これは黒本と一緒に買つた。江戸時代を中心にした読み物としては面白い。加賀百万石の参勤交代費用はざつと四億円だつた、とか。鎖国といふ法令は発せられてゐない、とか。

2011-02-12

福澤徹三「黒本 平成怪談実録」新潮文庫(373・used)。初めて聞く名前。ほんとに黒い本で、怖い話を集めて纏めたもの。文庫書き下ろしださうだ。恐いもの見たさで一気に読んでしまつた。長いものもあるし、同じ人が続けて出て来るものもある。怖いかどうかは人によるかもしれないが、不思議な話ではある。信じられない人もゐるでせう。オレは信じるけど。

2011-02-03

ジェイムズ・エルロイ/吉野美恵子訳「ブラック・ダリア」文春文庫(372・used)。去年の8月「ねずみの騎士デスペローの物語」を読んで以来の翻訳物!自分でもびつくりした。因みに解説には表紙の女性がブラック・ダリア、つまりエリザベス・ショートだと書いてあるが、オレが持つてるのはブライアン・デ・パルマの映画でベティ役をやつてた子(ミア・カーシュナーでした、wiki調べ)の写真。小説より先にこの映画をレンタルDVDで見てゐる。読みをへてからもう一度見て呆れた。すつかり内容なんて忘れてたんだねえ。ケイ・レイクがスカーレット・ヨハンソン!全然ちげーよ、イメージと。もつと引き締まつた印象の人ぢやないとダメ。更にマデリンがヒラリー・スワンク!ぢけーよ、全然。金持ちの娘で、実の父親はハンサムだつていふ設定だぜ。どうしたのデ・パルマ、つて配役。しかも、マデリンとベティ・ショートはそつくりだつた、と原作はなつてるし、映画の中でも似てるといふ設定だけどさあ、ヒラリー・スワンクとミア・カーシュナーはまつたくの別人でせう、どう見ても。似てると思ふ人ゐるのかなあ。余談だが、主人公は本ではバッキー・ブライチャートとなつてるけど、映画ではブライカートと呼んでたよ。映画の話はここまで。原作と映画が違ふのはあたりまへだけど、小説ではメキシコまで脚を伸ばして展開するところなどが省かれてゐた。そりやさうだ、570頁もある厚い本だから。かういふのをノワールだかノアールだかと呼ぶらしいが、犯罪小説と警察小説を足した感じ。犯人探しや意外な人物の事件への関与など、ミステリとしての面白さもある。1947年に実際に起つた未解決の事件を題材に真犯人を指摘するといふ離れ業をやつてる。関係者から苦情や訴へはなかつたのかね。地名やらなにやら少々頭に入らないところもあつたが、充分面白かつた。エルロイの母親は彼が10歳のときに誰かに殺され、17歳のときには父親が死んでしまふといふ境遇だつたさうだ。「LAコンフィデンシャル」つてのも書いてて、これもまた映画になつてゐて、それも見たことがある。贔屓のケビン・スペイシーが出てるけど、嫌ひなラッセル・クロウも出てる。これも面白かつた、VHSのレンタルだつたけど。原作は上下2冊。うーん、ちよと満腹だなあ。最後にホントに蛇足なんだけど、p198真ん中辺りの下のはう「どまんなか」、p339の1行目「どまんなか」。そこだけ関西弁はやめてほしいなあ。黒川博行ぢやないんだから。

2011-01-22

で、藤原伊織「テロリストのパラソル」講談社文庫(371・used)。史上初の江戸川乱歩賞、直木賞のダブル受賞と裏に書いてあるし、解説でも絶賛してゐるけれども、読みをはつたばかりの「雪が降る」がamazonのプレビューに倣つて★★★★だとしたら、これは★★★。主人公の設定は都合良すぎるけれども、まあハードボイルドの主人公はみんなこんなものだ。細かいところで気になることが幾つかあるが、ネタバレになるかも。主人公の島村が20年以上も逃げ続けるキッカケになる車での爆弾事件は事故で処理されるのではないか。この事件で死んだ警官の妻の弟が8歳(p125)といふのは作り過ぎではないか。終はりのはうで金田一さんみたいに読み手に知らせない場面が出て来る。p252でホームレスの元医師らしい老人に何を聞いたのか書いてないし、p292でも江口組の上部組織の構造を週刊誌の記者に聞いてゐるが、答へた内容が書いてない、など。p296飲み屋での喧嘩のくだりは、なくても物語に特に影響がない気もするし、犯人が爆弾事件はテロだと言ふけど、単なる私怨だし、ホントに人でなしにしか思へない。その辺りが気になつて、華々しい受賞ほどには面白くなかつた。「雪が降る」のはうがよつぽど面白い。

2011-01-18

藤原伊織「雪が降る」講談社文庫(370・used)。解説が黒川博行だつたので、つい買つてしまつた。ヤケもなく、状態もよかつた。「台風」「雪が降る」「銀の塩」「トマト」「紅の樹」「ダリアの夏」の6篇。「紅の樹」が一押し。堀江徹は助かるんだらうか。遠山が渋い。「雪が降る」も良い。「ランニング・オン・エンプティー」といふタイトルの映画は知らないが、これはジャクソン・ブラウンの曲名と同じだ。繋がりがあるのかないのか、今度調べてみよう。読み終へて直ぐ、江戸川乱歩賞&直木賞ダブル受賞の「テロリスのパラソル」を探して手に入れた。
佐藤秀峰「ハードタックル」小学館ヤングサンデーコミックス(369・used)。「海猿」、「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰。デビュー作「おめでとオ!」を含む作品集。ほかにタイトル作品「ハードタックル」、「キムラ!」、「エロ兄弟」(4コマ)。「おめでとオ!」と「キムラ!」はヨットを扱つてるんだけど、経歴と関係があるのか。絵がちよつと黒い印象なのは動きのカットで線が多いためか。「キムラ!」のおしまひのはうの絵のタッチが誰かに似てゐると思つたが、誰だつたか忘れた。大友克洋の昔の絵に似てるかもなあ。

2011-01-15

吉崎観音「宇宙X兵衛・完全版」カドカワコミックス・エース(368・used)。「ケロロ軍曹」の作者。くだらなさが実に面白い。いきなり隙のない構へが実は眠つてた、なんて使ひ古されたネタから始まる。絵はDrスランプ、すすめパイレーツを思はせる。良い。

2011-01-09

湊かなえ「告白」双葉文庫(367・used)を読む。第一章「聖職者」で小説推理新人賞、書き継がれたこの「告白」で「週刊文春08ミステリーベストテン」で第一位、第6回本屋大賞も受賞したベストセラーださうだ。映画にもなつたやうだ。作者の名前を見たことがあるなあ程度で手に取り、スラスラ読めるので買つた。一気に読ませる。ミステリとしても面白く読める。教室での喋りに始まり、手紙、日記、ネット上のテキスト、携帯電話の喋りなどスタイルはかはつてはゐるが、要は語り、喋りのスタイルのヴァリエーション。荻原浩の「神様の一言」もさうだつたが、コミックに近い印象。それが悪いと言つてゐるのではない。それが軽いと言つてゐるのでもない。小説の質が変はつてゐるんだな、と思つただけ。それとこれは貫井徳郎の「天使の屍」でも書いたが、中学生の虐めや自殺、殺人をかういふ形で小説にしてほしくない。問題提起なら別の形で書いてくれないか、と思ふ。現実に起つてゐるのに目を背けるのは卑怯だ、と言ふなら卑怯者で結構。現実だけでたくさんだよ。

2011-01-03

去年の大晦日から読み始めた酒井雄哉「一日一生」朝日新書(×3)を読了。いま何をしてゐるか、これから何をするか、それが大事だ、と80歳の大阿闍梨は言ふ。重いなあ。