2011-07-31

野澤重雄「ハイポニカの不思議」PHP文庫(404・used)。これは絶版で中古で手に入れた。読んでゐて意味がわからないところがずゐぶんあつたけれども、それは学のなさ、不勉強の致すところで止むを得ない。一株で通常20〜30個の実を実らすトマトが、13,000個の実を実らすといふ驚き。しかも多年草になるといふ。L・ワトソンのサボテンの話を思ひ出すし、百匹目の猿の話も。生命は現在の科学ではまだ説明できない。そこにデカルト以降の科学の限界がある。
はやみねかおる「都会のトム&ソーヤ①」講談社YA!ENTERTAINMENT(403)。これは二三年前、娘の誕生日プレゼントで買つたものを借りて読んだ。このシリーズが何冊か集まつて来たのでオレも読んでみようと思つたのだ。新しく(BookOffで探してまで)何か読むのが幾らか億劫になつた。先が長くないもので、未読の本が貯まるのは勿体ない、と。──で、文章は今風で、描写でもなく、心理でもない、ただの説明なんだけど、さういふことを言つたら読めない。小説と呼ぶより読み物だなあ。筋はまあ、こんなもんでせう。
手塚治虫「ショート・アラベスク」講談社(402・used)。手塚治虫漫画全集の239巻。15篇の短いものが収録されてゐる。立ち読みして面白さうだつたので。他にも物色したけど、これだけ買つた。平均点はクリアしてるんでせうね。

2011-07-22

都筑道夫「目撃者は月」光文社文庫(401・used)を読む。何度か途中で読むのをやめた。面白いんだけど、話がわからない、意図がよくわからないのがあつたりして、最後まで読めない、と諦めたこともあつたけれども、どうにか読み終へた。よく作られた、達者な職人芸です。

2011-07-20

東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」小学館(400)を読んだ。どういふ経緯か覚えてないが、娘に読んでみるかい?といふつもりで買つたのだ。読み終はつた、といふので読んだ。なにかの賞を取つてたのと、執事とお嬢様を主役にした謎解きといふことで、ちよつと興味があつた。普通なら買つて読むことはないでせう。
安楽椅子探偵もの。アームチェアディテクティブズと言ふのとどつちが言ひ易いだろ。なかなか面白い。執事影山がお嬢様刑事の宝生麗子に大して発言する大胆なコメントが売り。曰く「お嬢様の目は節穴でございますか」。この二人の日常がもつと書かれてゐると更に良い。影山の推理は見事でも、事件はそれほど複雑ではない。

2011-07-16

都筑道夫の「夜のオルフェウス」を読み返した。とつぜん、どうしても読みたくなつたのだ。これはhiko8さんから教はつた傑作短篇で、オレも読んでゐたのに、その面白さを読み落としてゐたものだ。
これはいいねえ。もしも、オレに映画を撮るチャンスがあつたら、ぜひ映像にしてみたいと思ふものの一つだ。
それからもう一つ、映像にしてみたいもの、──結城昌治の「あるフィルムの背景」。これは文句なしの傑作で、これをモノクロで撮りたいと思つてゐる。今回結城昌治の同名タイトルの短篇集を読み返して「私に触らないで」も面白かつた。これは落語好きな(特に志ん生好きな)氏らしい一種の「湯屋番」風の独り言が読める。

2011-07-11

鮎川哲也「黒いトランク」創元推理文庫。決定版と呼ばれるもの。書き加へたり削つたりしてきたけれども、これを完成品とします、といふことなのでせう。以前、hiko8さんから指摘があつた空のトランクの重量が19.8kgと19.1kgになつてゐることについて。角川版でも、この決定版でもさうなつてゐる。トランクの購入者を調査した際にトランクの製造元が重量に差があつても0.1から0.2kgだと丹那刑事が鬼貫に伝へるところがある(角川版P169、光文社初刊版P200、創元社決定版p194)。そして凡ての版でトランクの動きを表にしたところには、最初のトランクが19.8kg、次に空になつたトランクが19.1kgになつてゐる。これには一切の説明がない。光文社の初刊版では芦辺拓が丁寧な解説を付しているが、そのことには触れてゐないし、創元社の決定版でも有栖川有栖、北村薫、戸川安宣の細かい部分を比較した対談でも触れてみゐない。困りましたねえ。まあ、これは再び時間を見てゆつくり読んで確かめるしかないでせう。説明してあるのに見落とし、読み落としてるのかも知れないので。
2冊続けて読んでみて、最初の印象よりも「凄さ」が感じられなかつた。こんな面倒なトランクの移動なんかしなくても、いいんぢやないの?と。これは先にトリックがあるんだよ、作者もさう書いてるけど。人物や話そのものの面白さをトリックが幾分削いでしまつてゐるやうな気がする。
さて、オレが最初に読んだ「黒いトランク」は角川版で、今回初刊版と読み比べると、ずゐぶん削られてゐるのがわかつた。既に書いた汐留駅の蘊蓄、梅田警部補の風貌がまるで違ふだけでなく、梅田が北原白秋に傾倒してゐる部分などが削除されてゐるから、由美子が鬼貫に「詩人警官」だ、なんて言つてもチンプンカンプンだ。この決定版は概ね初刊版に近づいてゐるから、その辺りはどつちを読んでも同じ。ただ、スリの話がすつかり削られた理由が小林信彦のエッセーだといふので、その理由が知りたくなつた。

2011-07-09

鮎川哲也「黒いトランク」光文社文庫。「黒いトランク」の初刊版。作品としては同じものなので再読扱ひ。ゆつくり時間が取れるやうになつたら読み比べてみよう、と漠然と思つてゐたが、それツて一体いつ来るのか、そのまへに死んでしまふぞ、で読み始め、角川文庫版の記憶は曖昧なのに、なんとなく違ふ印象。鬼貫が登場する「古き愛の唄」に入るまへに一旦読むのを中止して、角川版を読んでみたら、ずゐぶん違ふ。ただ、汐留駅についての記述は角川版でも読んだ気がするのだが。手元にある角川版には、ない。これは再購入したものだから仮に角川版に複数の版があれば、さういふこともある。内容については、創元の決定版を読んでからにしよう。