2017-06-19

690.バールのようなもの

清水義範・文藝春秋。吉岡町図書館は年に何度か蔵書を処分する「リサイクル」といふのがあり、希望者に自由に持ち帰つてよい日といふのを設けてゐる。これまでに2回あつた。一人2冊まで、といふ制限が始めはあるけれど在庫が少なくなると、ご自由に、となる。これはそのときに貰つ本だ。もう一冊、佐野洋の珍しいSF短篇集も持ち帰つたが、まだ最初の一篇しか読んでない。序でに言ふと、その次のときに小島信夫の「暮坂」と「うるわしき日々」を見つけて持ち帰り、「暮坂」を1/3くらゐ読んで、そのままになつてゐる。
この本には、志の輔の落語ネタになつてゐる「バールのようなもの」と「みどりの窓口」が入つてゐるが、原作者には申し訳ないけれど、落語のはうが面白い。志の輔の高座はYou Tubeで見ることが出来るので興味のある人は是非見てください。抱腹絶倒とまでは行かなくても、爆笑間違ひなし。目当ての2作を読んでしまつてから、億劫になつて、漸く半年掛かつて読了。

人間椅子

江戸川乱歩。続けてこの「人間椅子」と「毒草」を読んだ。発想は面白いけど、椅子の座面、鞣し革1枚ですぐに太腿、といふのは無理があるだらう。勿論、そのはうが猥褻だし気味が悪いけど、実際の話が体格のいい欧米人の男がどかんと乗つたら、余程鍛へてないと耐へられないだらうし、座つたはうも生暖かい感触がしてをかしいと思ふんぢやないかなあ。それから佳子の使用してゐる椅子の形状について手紙の差出人はどこからその情報を得たのだらう。「毒草」は覚えてゐた。結末は予想がつくけれど、この郵便局員の女房は怖い。

2017-06-14

お勢登場

春陽文庫の江戸川乱歩名作集の5巻「人間椅子」の中に入つてゐる。奥付を見ると昭和46年6月20日第21刷発行とあるから、その頃買つて読んだものだらう。45年も前の話だ。なかなか本が読めなくて、これまで図書館で何冊か借りてきたが、最後まで読めずに返却してゐる。添加物の話のつづきやドナルド・キーンの作家の思ひ出。ちよつと期待したキーンの本は年譜をなぞつてゐるやうで、読む気が失せた。永六輔の対談とか、ごはんをめぐるエッセイなんかも借りたが、気力が持たない。それで押入れを物色してゐて、これを見つけた。
池上遼一の漫画で読んで、いつか原作を読みたいと思つていたが、実は昔読んでゐたのだつた。漫画のはうがいいなあ。兎に角、題名がいい。屋根裏の散歩者もさうだが、かういふ題名の付け方は江戸川乱歩は上手いと思ふ。