2009-10-03

なんと言へばよいのか。柴田哲孝「TENGUてんぐ」祥伝社文庫(221・used)。26年前の群馬県沼田市の寒村で起きた連続殺人事件の謎を追ふ、といふ設定なのだが、読み進むと解るが主人公の道平(みちひら)慶一は殺されかけてゐるのだよ。26年間も放つて置くかな。先づ、この26年間の空白がなぜかについて納得できる説明がない。読み落してたらゴメンなさい。なので、これは70年代の国際情勢、アメリカの状況、そして2001年9.11テロといふジャーナリズムの話題性を繋ぐための年月でしかなく、物語が止むなく26年といふ空白を生んだワケではない、と受け取れる。アウトドアのグッズ名称、バーボンや日本酒の銘柄などで人物の個性のやうなものを描きたいのかもしれないが、煩く感じる。生身の人間に起つた殺人事件だといふ印象が薄い。荒唐無稽だとするには、現実に寄りかかり過ぎてゐる。瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」もさう、鈴木光司の「リング」その他もさう、これもさう、キングやクーンツ、トマス・ハリスなどの作品が翻訳され、消化不良になつてるんぢやないか。プルーストとか、ジョイスとか、アンチ・ロマンと似たやうなものかな。
ホントに些細なこと。P6、9行目「あすこしかない」。江戸弁かね。P102、8行目「杵柄慎一だった。真一は」。単純な誤植か。

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