2009-09-29

赤川次郎がクリスティの「そして誰もいなくなつた」の解説で名前を挙げてゐたP・D・ジェイムズ「女には向かない職業」小泉喜美子訳・ハヤカワ文庫(220)を読んだ。amazonのレビューでも評価が高いし、幾つかのミステリーのサイトでも褒めてるし、解説はもちろんだ。が、しかし、コーデリア・グレイといふ女探偵が一応は主人公だが、これは別の、例へばアダム・ダルグリッシュ警視シリーズの外伝、オマケのエピソードみたいなものではないか。描写が細かいのと言ひまはしに凝つてると言ふか、ハードボイルド的な読み易さはない。始めのはうで何箇所か意味が取れない記述があつた。例へば、P26の3行目「年配の人々というのは、どんなにひねくれた、あるいは衝撃的な意見でも受け入れるだけの能力を持っているように見えるのに、単純な真実を聞かされて気を悪くしてしまうのでは、包容力などはどうなっているのだろうとまたもや首をかしげた。」いま写しながら読んでも意味がよく解らない。尤も、この意味が解らなくても、ストーリーには関係ないのだが。それと漢字を敢へて平仮名表記にしてるのがあつて、逆に読み難い。題名は内容にぴつたりで、上手いと思ふ。話は面白いし、赤川氏の言ふやうに文学的かも知れない。でも、他の作品を読みたいとは思はなかつた。凝つた文章は意味が解り難いし、細かい描写は鬱陶しく感じるタチなのだ。さう、ケンブリッジの町並みなんか丁寧に描写されても、オレのイメージは文字を追ふ速度に着いて行けないのだ。
蛇足ながら、訳者は生島治郎のまへの奥さんで推理小説も書いてる人だ(確信がなかつたので、wikiで確認済)。

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