2012-10-27

黒川博行「文福茶釜」文春文庫(475)古美術や骨董が題材なのは難しさうだな、と思つたが一気に読み終へてしまつた。美術年報社の副編集長佐保の周辺でことが起こる。どいつもこいつも欲の皮が突つ張つてゐて、痛い目に会つても懲りない。かういふ輩が出て来ると大抵オレは拒絶反応が起きてしまふ──それで松本清張は読まなくなつた、といふ話は書いたことがあると思ふ──のだが、彼らが憎めないのは作者の目が彼らと同じ目の高さにあるからだらう。それは黒川博行の正義感ではないか。だから彼らは相応の報ひを受ける。それが自分の痛みとして書かれてゐるから読めるのではないか。

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