2012-10-02

深沢七郎「みちのくの人形たち」中公文庫(466)一つ読みをはると続けて次のが読めない。8月のすゑに衝動買ひした。それから間もなく読み始めたのに、こんなに時間がかかつてしまつた。解説を先に読むのは悪いクセだが、これも荒川洋治の解説を先に読んでゐる。荒川洋治と言へば、ずゐぶんまへにTBSラジオで、永六輔の番組だつたかに時折出てゐた。どんな話をしたかは忘れたが詩人であること、そして名前は記憶してゐた。序でに荒川洋治をwikipediaで調べたら、下のはうに関連項目としてゲド戦記挿入歌に対する批判、といふのがあつて、これをクリックすると、萩原朔太郎の「こころ」といふ詩に似すぎてゐる云々の批判を行つた、と出てゐた。朔太郎の詩は純情小曲集にあるので調べられたが、批判の内容がもつと知りたくなつて近隣の図書館で荒川洋治の本を置いてあるところを調べた。共著や編者としてではない著作が大泉3冊、館林6冊、邑楽町11冊だつたので、邑楽町の図書館へ出かけて纏めて借りて来た。なんといふ本だつたか忘れたが、確かに出てゐて、そんなことをしてゐるうちに時間を食つてしまつたのだ。深沢七郎と言へば「楢山節考」で内容は言ふまでもなく、この題名も独特だ。吉田健一が批判的だつたと丸谷才一が書いてゐたのを読んだ気がするが気のせゐだらう。この「みちのくの人形たち」も独特だ。文章も変なところがあつて、読み難いがなんとなく解つてしまふ。見た目は古臭くて下手糞な文章で、けして読み易くはないし、在り来たりな形容や、意味の分からぬ行替へや飛躍だらけの小説だが、読みをへると新鮮な驚きがある。どんなに書き方に工夫しようが、至る所に死が顔を覗かせてゐる、これは死をめぐる本である。

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