2006-04-10

16.死者の贈物

中町信・講談社NOVELS(used)
愈々ストックも終り、残すは「模倣の殺意」の前身「新人文学賞殺人事件」だけ。40数冊ある氏の著作の半分近くを読んだことになる。月刊彦七新聞HPでも書いたことがあるけれども、展開に綱渡りみたいなところがあつて、二転三転してゐるやうに見えるが、それは登場人物たちの思ひ込みに過ぎない、とか。集中的に読んで思ふのは、そこが魅力でもあるな、といふこと。この「死者の贈物」にも危なつかしいところがある。それはたぶん説明不足なんだらうな。氏を巡るサイトの中で見たのかも知れないが、兎に角ストーリー展開の中心は叙述や描写でなく会話だから、例へば殺人事件があつて、それが復讐であつても、かう、気持ちが入らないと言ふか、作品の人物の思ひに入り込めてないから、素通りしてしまふやうな、さういふ面がありますね。ゲーム的、RPGゲームみたいなところがある。全体に仕掛けたトリックなども、やはりゲーム的なセンスだと思ふし、叙述の中にトリックがある、といふミステリーのスタイルは、遊び心がないと出来ないでせう。それをミステリーとしてダメだ、と見る人もゐて、フェアぢやない、などの理由から氏は江戸川乱歩賞を逃して来た。でも、もつと読まれていい作家だと思ふ。勿体ない。

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