2006-07-03

31.新人文学賞殺人事件

中町信・徳間文庫(used)
氏の小説を読み始めるキッカケになつた「模倣の殺意」の改稿前のもの。題名の変遷を辿ると、「そして死が訪れる」で第17回江戸川乱歩賞に応募。翌年1972年に雑誌「推理」に3回に分けて掲載された時には「模倣の殺意」。それが「新人賞殺人事件」で翌年双葉社から出版され、14年後の1987年「新人文学賞殺人事件」で徳間文庫。これがそれで、オレが前に読んだのは2004年に「模倣の殺意」で創元推理文庫から出たもの。中田秋子と津久見伸助の2人の名前で交互に章が作られてゐるのは同じだが、「新人文学賞殺人事件」では章の始めに日付と曜日が書かれてゐるが創元版「模倣の殺意」には曜日はない。構成も、徳間版では〈プロローグ・第1部 事件・第2部 事件を追って・エピローグ〉といふあつさりしたものになつてゐるが、創元版は〈プロローグ・第1部 事件・第2部 追求・第3部 展開・第4部 真相(この扉に「あなたは、このあと待ち受ける意外な結末の予想がつきますか。ここで一度、本を閉じて、結末を予想してみてください」といふメッセージがある)・エピローグ〉。気付いたのは坂井のアパートが地上25m(徳間)から10m(創元)、「父の一周忌」が「父の法事」、坂井の原稿リライト料が創元では400字詰原稿用紙1枚50円と明記されてゐることくらゐかな。他にもあるかも知れないが、中田秋子が坂井の死を知り課長に出かけてくると言ひ、行つた先はやはり書かれてゐない。当然だよなあ。そのアパートについて一切書かないワケには行かないからなあ。トリックは知つてゐても充分面白く、一気に読めた。これと「天啓の殺意」(旧「散歩する死者」)がベストかもなあ。「散歩する死者」も探して読んでみるか。

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