2009-08-10

その赤川次郎が解説を書いてゐて、こんな小説を書きたいといふ目標だと言つてるアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」清水俊二訳・ハヤカワ文庫(211)を読んだ。ミステリ好きの癖にまだ読んだことがなつたのか、と言はれるかも知れないほど、有名な、題名くらゐは聞いたことがある作品──なので、敬遠してゐた面もあるが、一気に読ませる。インディアン島に集められた人々が、10人のインディアンの童謡に合せて、次々に殺されて最後には誰もゐなくなるといふ、題名通りの、説明するまでもない内容だ。謎解きとトリックの説明がエピローグのあとに付された「漁船エマ・ジェーン号の船長からロンドン警視庁に送られた告白書」の形で書かれてゐるのは、構成のうへでやむを得ないにしても、ヴェラ・クレイソーンの死に方、そして真犯人の動機が10人も殺しつづけるには無理がないか。
蛇足ながら、このハヤカワ文庫は普通の文庫より少し縦が長いので、しまふのに困る。なんでこのサイズにしたのかな。買ふとき躊躇つたんだけど、創元のはうには訳がなかつたので、仕方なくこつちにした。

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