2008-01-17

99.スナーク狩り

宮部みゆき・光文社文庫(used)
時代物は読んでないが、この作者の作品は「火車」「レベル7」「魔術はささやく」「龍は眠る」「理由」──と挙げて来て殆ど、いや、どれもなにかの賞を取つてる!──と短篇集も読んだことがある。なにしろ「我らが隣人の犯罪」といふデビュー作を新人賞を受賞して掲載された雑誌で読んだことがあるのだ。だから、なんだと言はれればなんでもないが、縁がある、かな。なんて上手いんだらう、と読むたびに思ふ。的確なんだと思ふ、言葉の選び方が。細かい技術は知らないがイメージがはつきり伝はつて来る。……しかし、この小説ではその上手さが却つて痛々しく感じる。扱つてゐる内容が、とくに織口に関はる事件は使ひ古しのボロ雑巾だ。事件そのものは許しがたい犯罪だけど。偶然を一切排除したら小説は成り立たないが、なぜ関沼慶子は発砲しなかつたのか、織口はどうやつてクロロフォルムを手に入れたのか、神谷尚之の車が通らなかつたら、黒沢が慶子の部屋の様子を見に来なかつたら、国分が鍵を持つてなかつたら、言つたらキリがない。ただ、これは1992年の6月にカッパノベルズとして刊行されたものだが、佐倉修治は完全な酔つ払ひ運転で高速道路を走つてゐるんぢやないか。織口邦男も酔つ払ひ運転でベンツを走らせてゐるんだけど、……いいのかな。兎に角、読んでゐて緊張感はたつぷりあります。

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