2008-01-05

96.「萩原朔太郎」の亡霊

内田康夫・TOKUMA NOBELS(used)
これは文庫で探したけど見つからず、渋川のBook Offで新書で漸く見つけた。主人公の岡田警部は前作「死者の木霊」にも出て来た人だ。岡田警部を中心にした刑事たちの動きや推理は実に面白いし、事件が起る地域の描写も解り易く、文章も上手いと思ふのだが、物足りない。いろんな人が出て来るから、誰が誰なのか、その発言から読み取れない推理小説もあつて白けてしまふこともあるが、けしてそんな失態はしない。しかし、後半に入つて謎解きが始まるまでの盛り上がりに比べてラストがやや尻すぼみに感じてしまふのだ。先づ、ここでは三つの殺人が起るけれど、そのうちの二つに就いてどんな風に実行されたのか最後になつても一切説明されない。犯人が巧妙だつたのなら、その説明がほしいなあ。30年まへの事件に端を発したと思はせる事件そのものの真相が解明してない。再審請求までした事件で、真犯人が有耶無耶ぢやないですか?誰が真犯人だつたのか、寧ろそつちのはうが知りたい。プロローグが解決してません。兎に角、書き方が上手いので、一気に読んでしまふけど。

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