2008-01-12

98.美濃路殺人悲愁

石川真介・光文社文庫(used)
だいぶ前に「不連続線」といふ、第2回鮎川哲也賞を受賞したデビュー作を読んだことがあり、この事件は解決してませんよ、とHP「月刊彦七新聞」に書いたことがある。東大法学部出身の、いまもトヨタに勤めてゐる、──から、それがどうした、なんたけど、オレが好きな鮎川哲也が絶賛してるので読んだら、どこがそんなに凄いんだい?と正直思つた。ほかにも幾つか不満を挙げたにもかかはらず、またしても同じ作者の本を読んだわけは、BookOffで立ち読みしてゐて、プロローグがちよつと面白さうだなと思つたからで、……しかし、これは設定そのものが受け入れられない。馴染めない。趣味が悪い。メインになる探偵役が添へもの。私的な恨みをはらすために関係者を呼び集め、プレゼンテーションみたいに事件を解明しようといふのはどうか。茶番だ。第一、思ひ出したくない過去がある美濃路に、その負ひ目のために大垣を離れたとまで言ふ人間が、差出人の曖昧な誘ひに乗りますかね。ラストの殺人は衝動的過ぎて受け入れられない。その恩を考へたら、先づ迷ふでせう。大事な息子の自殺の原因が、信頼してゐた教師の暴力が引き金だとてしも、継続的な暴力にずつと耐へてゐたのなら、こいつ最悪、と思へる。でも、さうではないらしい。これはどうも答へが先にあつて、それに見合ふ筋書きを作つたとしか思へない。ミステリーとして、どうでせう。誰にも薦められない。

0 件のコメント: