2008-01-27

102.伊香保殺人事件

内田康夫・光文社文庫(used)
これを読んで漸くわかつたのは、内田ミステリーはいはゆる本格ミステリーではない、といふことだ。だから、犯人が見つからないやうに工作をしても、それは「鉄壁なアリバイ」とか「見事なトリック」ではないワケなんだ、とホントに漸く納得した。さう、題名の脇に書いてあるのは「長篇推理小説」であり、「本格推理小説」ではない。どうしてそんな風に勘違ひしちまつたのだらう。鮎川哲也の評かなにかを読んだのかも知れない。それで、さう思ひ込んでたのかも。……どつちにしても、失礼しました。これまでの苦言は的外れだつたかも。普通の推理小説として読めば充分楽しめる。そのまま書いてある通りに読んで行けばいいんだから、楽。売れるワケだ。で、この「伊香保殺人事件」もさう。これは浅見光彦シリーズの一つ。最初に登場する焼死体が誰で、ロープウェーの崖下で死んだ女の目撃者は誰か、なんてことに煩はされずに、ひたすら文字を追つて行けば事件は解決する。至れり尽くせりの推理小説だ。ちよつと物足りない気もするが、石川真介の「本格推理小説」よりは数段マシだ。

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