2006-10-06

51.白夜行

東野圭吾・集英社文庫(used)
この分厚さに先づ挑みたかつた。2冊、3冊と分かれたものでもいいのだが、出来れば1冊で分厚いのがよかつた。それと「レイクサイド」が面白かつたし、裏に書かれた粗筋で読んでみたくなつた。半分くらゐまでは淡々と進むので、それぞれの章ごとに本を置くことが出来たけれども、探偵の今枝が登場する第十章からは早く先を知りたくて止まらなくなつてしまふ。最初の殺人から残されてゐる謎に、主人公2人の成長に併せて燻つてゐた疑問がちやうど飽和点に達するからか、探偵の謎解きが始まつて一気に爆発するのかも知れない。この分厚さに匹敵する読み応へがある。まるで登場人物たちの19年間に付き合つた気がして、本を置いてホッと溜息をついたほどだ。この主人公2人の人物像が生半可なものではないので、オレには最終章の中程で起こる美佳への仕打ちは行き過ぎだと感じてしまふ。それだけオレが甘いのだらう。つまりこの2人は魂を売つてゐる。優しさや弱さは死を意味する、と信じてゐるのだらう。最後の最後で、雪穂はキッパリ桐原を知らないと言ひ切つて、この暗く重たい小説は終る。──もう一度ざつと読み返したいところがあるので、そしたらまた書き加へるかも知れない。
↑ 気になつてゐたことを箇条書きにしてみると、1.質屋の主人、桐原洋介を殺した凶器はなにか。2.パソコン・ゲームのデータが流出した経路は。3.倉橋香苗への疑惑はどうなつたか。4.雪穂の鈴つきのカギについて本人が漏らしてゐた筈だが、……で、該当するところを読み返して得た答へは、1.は恐く鋏だらうと予想してゐて、亮介の胸に刺さつてゐるのを見た笹垣が「彼の人生を変えた鋏だ」と言つてゐるから間違ひないだらう。2.は推測の域を出ないが雪穂には可能だつたらう。3.はすつきりしないままだ。篠塚の個人的な経緯から気が重いから問ひ質さない、といふことらしいが、部費の一部が部長である篠塚の知らないうちに引き出されてゐるのだから、警察に届けるかどうかは別にしても、ダンス部の部長として当人と話すくらゐはしないとをかしくないか。使途不明金なんだから、聞けるはずだ。尤も、さうなればそこで物語は少し違ふ展開になるだらう。4.は探すのに一番苦労した箇所。第四章の終りに出て来る。ここでもし中道がこの事件に更に興味を抱いて調べたら、田川はその鈴の音が気になつてゐたのだから、そのことを漏らすだらう。さうなるとまた違ふ展開になつたかも知れないのは、この時点ではまだ質屋殺しの事件は時効になつてはゐないからで、……(06.10.07)

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