2013-10-09

554.愚行録

貫井徳郎・創元推理文庫(used)。どうしても「慟哭」と比較してしまふ。やりきれない部分は同じやうにあるんだけど、厭な感じがある。当然、冒頭の新聞記事と、扱はれる殺人事件の被害者をめぐるインタビューはどこかで交錯するんだらう、といふ予想はある。その収まり方が不快だ。解説もなんか的外れな気がする。証言者たちの発言は確かに愚かと呼ばれても仕方あるまい。それはまだ人々が愚かといふ貴い徳を持つてゐて、は谷崎だけど。作者はこの殺人事件も含めて愚行と言つてるやうに取れる。小説の中であつても、殺人を愚行で括るのは不遜だらう。「慟哭」に感服したので、貫井作品はついつい読んでしまふが、わたしにとつては未だに超えるものに出会はへない。

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