2006-09-07

47.レイクサイド

東野圭吾・文春文庫(used)
映画になつた「レイクサイド・マーダー・ケース」(監督・青山真治)のDVDを先に見てゐる。役者が揃つてゐる中に(これはいつか誰かに言ひたいと思ひつつ、なかなか機会がなかつたので、ここで敢へて言つてしまはう、この映画の中でも何度か出て来るが、台詞によつて気味の悪い口周辺の動きを見せるので嫌ひな)薬師丸ひろ子が出てゐるのが配役についての不満だが、全体にどこか食ひ足りない映画で、さうだなあ、例へば伊丹十三氏の映画を見た時に受ける感じに似てるかも知れない物足りなさ。映画に関する理屈・理論や技術、感性なども優れてゐる、秀でてゐる監督、なのだらうが、その画面から受けるものはもう一つの現実ではなくスクリーン幕みたいに薄つぺらな世界、といふ風な感じがする。かなり大胆に、生意気なことを言つてるので、そこまで言ふならお前が撮つてみろ、つて言はれるかも。──ま、映画のことは兎も角、原作を読みたいと思つたのは、まあ、そんなことからで、2軒梯子したら状態のいい古本で見付かつた。東野圭吾氏のものは一度も読んだことがない、と思ふ。別に敬遠してゐたわけでも、高村薫氏や北村薫氏(なんと2人とも「薫」ぢやあないか!)のやうに「読めない」と感じたわけでもない。幾つも書いてるみたいだから、いつでもいいや、みたいな感じだつた。──で、映画は原作とはまるで違ふ、と、これも敢へて言つてしまはう。登場人物の数や性別の変更もさうだが、この小説の中でオレが一番いいと思つた場面が映画にはないことだ。並木俊介が事件の真相を知り、車に乗り込む。p265の最後の行から描かれる場面が堪らないだらう?子どもを持つ親なら、結構ジーンと来ると思ふんだけど。最後の最後で、そのことがまた新たな意外な犯行の動機を示すことになるのは見事だけど、悲しいねえ。

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