2006-03-19

11.湯煙りの密室

中町信・講談社文庫(used)
「下北の殺人者」「津和野の殺人者」に続くもの。シリーズなのか連作なのか知らないが、他の2作のどつちかの解説にそんな風に出てゐた。なかなか面白かつた。この前に読んだ「社内殺人」よりも気合がはいつた。そのせゐか、残念なところが幾つか見付かつてしまつた。フェアぢやないよ、と思ふ所もあつた。その1.英彦は牛島に高校2年からギターを習つてゐた、と。で、三浪にならうとしてゐるわけだから、丸四年の付き合ひがある。なら、顔見知りでせう。なのに、気付かないのはをかしい。英彦は「近眼」で「風呂に入る時に眼鏡を外す習慣があつた」とは、どこにも書かれてゐない。つまり露天風呂の湯煙の中でも人違ひはしないだらう。まして脱衣室で。これがすつきりしないぞ。その2.同様に、牛島の妹だつて知つてる筈。交際してた、と書いてあるのに、まるで知らない受験生みたいに姉に言ひ、あんな悪戯するか?その3.胸が見えて女だと思ふのはいい。でもバスタオルを巻いてたら見えないし、従業員なら注意するんぢやなの?その4.最後に英彦の置手紙は、確かに後で正直に話す、と言つてるから、曖昧なのは仕方ないけど、これはフェアーぢやないよ。……などと言ひつつ、結構面白く読んだし、性懲りも無くこれからも続けて読むんだからなあ。

0 件のコメント: