2015-06-01

598.犬は「びよ」と鳴いていた

山口仲美・光文社新書(used)。題名が面白さうだつたので購入。副題として「日本語は擬音語・擬態語が面白い」。わんわん、がたがたなどの擬音語、さらさら、べたべたなどの擬態語が日本語にはとても多くて筆者はそれに魅せられてしまつたといふ。草野心平や宮沢賢治は好きで使つてゐるけれども、逆に嫌ふ人もゐて、森鷗外や三島由紀夫は使はないやうにしてゐたのださうだ。その分類と日本語の歴史の中で、これがどう変化してきたか、そして動物の鳴き声の変化について書いてある。面白いけど、案外時間がかかつてしまつた。P105〜106にかけて「あっさり」と「さっぱり」の違ひを説明してゐるが、「あっさり」は「物や人の性質(属性)にのみ使う」のに対して、「さっぱり」は「それから受ける私たちの気持ちをも表す」と区別してゐて、なるほどと思つた。肝心の犬の鳴き声で、P120の「わんわん」の例は1642年の「古本能狂言集」所収の「犬山伏」の引用で、P124の「びよびよ」の例は1660年の「狂言集」からの引用なのだが、古いはうが「わんわん」なのはどういふことか。「びよ」が「わん」に変化した例になるのかなあ。それからこれはほんたうに些細なことだが、十返舎一九(ジッペンシャイックと読む、けしてジュッペンシャイックとは読まないやうにお願ひします、「十手」は「ジッテ」、「十戒」は「ジッカイ」です「ジュッテ」や「ジュッカイ」とは読まないこと)の「東海道中膝栗毛」の引用でP158のネズミの鳴き声のところでは「弥次さん喜多さん」と地の文では書いてゐるが、引用文では「北八」になつてゐる。それがP194の馬の鳴き声でも同じ「東海道中膝栗毛」から引用があり、そこでは地の文でも「おなじみの弥次さん北さん」と書いてある。なんでだらう。

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