2006-12-31

60.太陽がいっぱい

パトリシア・ハイスミス/佐宗鈴夫訳・河出文庫
それほど厚くもないのに時間が掛かつてしまつた。探すのにも、読むのにも。「11の物語」を読み終へてから探したが、太田イオンの喜久屋で見付けた。これか「見知らぬ乗客」を読みたいと思つてゐたのだが、「見知らぬ乗客」は今のところどこにも置いてないやうだ。古本屋にもない。──ルネ・クレマンはこれを原作にして映画を撮つたワケだが、最後のシーンくらゐしか思ひ出せないから映画をもう一度見ないと比べようがない。少なくとも主人公トム・リプリーは、アラン・ドロンとは違ふ。なぜディッキーを殺すのか。フレディは殺さなければならないだらう。捕まりたくなければ。トムには金持ちの息子に対する羨望、それと友情よりも寧ろホモ・セクシュアルな気分といふか、さういふのがあるんぢやないか。友情だけで友だちのスーツを着たり靴を(!)履いたりはしない。いづれにしても氏の小説は普通の、と言ふのもをかしいが、これまで読んで来たミステリーとは違ふ。アガサ・クリスティもコナン・ドイルも読んだことがないのださうだ。短篇と初期の代表的な長篇を続けて読んだことになるが、氏の言ふやうに、短篇と長篇の違ひは時間の長さと空間の広がりだけかも知れない。オレは短篇のはうが好きだね。こつちも読み応へがあつたし、読み終へてやつぱり溜息が出たけど、「11の物語」のはうが面白かつた。──今年はこれでお終ひ。「フランドルへの道」が年越しになつてしまふが、仕方ないだらう。

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